政府決定はひっくり返せる 漁民の深い怒りと連帯し闘おう

週刊『前進』04頁(3191号01面02)(2021/04/19)


政府決定はひっくり返せる
 漁民の深い怒りと連帯し闘おう


 菅政権は13日朝、福島第一原発のタンクにたまり続ける放射能汚染水の海洋放出決定を強行した。絶対に許すことはできない。

放射性トリチウムの危険性は明白だ

 福島の漁民は、2011年3・11福島第一原発事故で大量の放射能が海洋に流出し漁が不可能となるなかこの10年必死で生き抜いてきた。今、漁民たちは生き死にをかけて「汚染水の海洋放出絶対反対!」を叫んでいる。放出決定はこの漁民の思いと怒り、そして福島県民の強い反対の声を無慈悲に踏みにじるものだ。
 そもそも、福島第一原発で増え続ける汚染水は3・11の大事故がもたらしたものだ。その責任はすべて政府と東京電力にある。にもかかわらず、3・11で被曝させられ、避難や生活破壊を強いられ、健康と命までも奪われ、その状況が今も続く福島の漁民・労働者民衆に再び犠牲を甘受しろと迫っているのだ。断じて許せない。
 政府や東電は、汚染水に含まれているトリチウムは無害であり「風評」が問題だとしている。これ自体、御用学者をも使った卑劣なうそだ。トリチウムはきわめて危険な放射性物資だ。
 多くの研究者によって、原発などの核施設から放出されるトリチウムによる白血病発症などが報告されている。全国の原発の中で最も多くのトリチウムを放出している玄海原発(佐賀県)について佐賀県内の20自治体ごとに調査したところ、1975年の稼働後は白血病の死亡率が稼働前の4倍以上になっていることが突き止められた。さらに、トリチウムを大量に放出するフランスのラ・アーグ再処理工場周辺とイギリスのセラフィールド再処理工場周辺でも白血病が多発し、子どもを含め多くの犠牲者が出ているのだ。

2年後の放出計画を阻止できる情勢

 放出決定に憤激が一層高まっている。福島の漁民は「政府も東電も信用できない!」と怒りを激しくしている。13日昼、福島を訪れた梶山弘志・経済産業相に対し野崎哲・福島県漁連会長は「改めて処理水の海洋放出に反対する」「地元で漁業を続けることが唯一の抵抗」と語り、岸宏・全漁連会長も当日「到底容認できるものではない」と声明を発した。
 福島県庁前と首相官邸前には決定直後に多くの人が駆けつけて抗議行動が行われ、弾劾の声がとどろいた(記事4面)。海外でも怒りが高まり、韓国では抗議行動が取り組まれた。
 NAZENふくしまがJR福島駅東口で11日に行った「放出反対」の宣伝行動では、200枚用意したチラシがほとんど無くなった。「東京湾に流せばいいんだ。除染の土も国会に持っていけばいいんだ。ほんとふざけてる」と怒り心頭の年配の女性二人組。「そもそも原発自体が駄目。いつまた事故が起きるか」と語る女性など、至る所で討論の輪ができた。これまで胸に秘めさせられてきた「怒りのマグマ」が噴き出し始めているのだ。
 福島原発事故を「終わったこと」にしようとする菅政権の思惑は、3・11反原発福島行動の大成功など、福島と全国の労働者・漁民・民衆の怒りで打ち砕かれた。「復興五輪」も今や破綻的な状況だ。再稼働と原発への怒りがより大きく福島と全国を覆っている。
 追い詰められているのは菅政権の側だ。昨秋、菅政権は海洋放出決定を策動したが、漁民などの怒りの高まりで断念せざるを得なかった。今回の決定には昨秋をはるかに超える規模で怒りが沸騰している。政府や東電は民衆の「信頼」を完全に失った。「放出までに2年かかる。放出を阻止しよう!」と、福島県庁前でも首相官邸前でも多くの発言者が呼びかけた。それが実際に可能な情勢だ。
 福島の漁民の怒りから学び連帯し、福島と全国で怒りの声をさらに集め、行動を組織し、労働組合が先頭に立って闘おう。汚染水の海洋放出を絶対に阻もう。
このエントリーをはてなブックマークに追加