危機深める中国スターリン主義 米日帝の中国侵略戦争阻止し、国境越えた団結で世界革命へ

週刊『前進』04頁(3197号03面01)(2021/06/07)


危機深める中国スターリン主義
 米日帝の中国侵略戦争阻止し、国境越えた団結で世界革命へ

(写真 「無許可集会」を口実とした弾圧事件裁判の判決を前に香港の裁判所前に集まった民主人士と労働組合などの支援者【4月16日】)

 本紙3193号春季アピールで明らかにした通り、4月の日米首脳会談をもって、米日帝国主義は中国に対する本格的な侵略戦争の準備を開始した。これに対する中国・習近平政権の反人民的な対抗は、東アジアの軍事的緊張を一層激化させ、世界戦争の危機を促進している。同時にアジア各国では、労働者階級人民の大規模なデモやストライキが始まり、香港、タイ、インド、ミャンマーへと広がっている。これらの闘いは日本階級闘争を鼓舞すると同時に、中国の14億人民の決起をも呼び起こさずにはおかない。こうした革命的情勢の背景にある、米中激突の現段階と残存スターリン主義国家・中国の危機について明らかにしたい。

米の対中国政策の大転換

 米中の対立と争闘戦は果てしなく激化し、破滅的な核戦争・世界戦争の危機が急切迫している。まずもってはっきりと確認しておくべきことは、すでに帝国主義とスターリン主義のいずれも歴史的命脈が尽き果て、戦争をやる以外に延命できないところまで体制的危機と破産を深めているということである。
 周知の通りアメリカ帝国主義は、1960年代を通じて進行したドル危機とベトナム戦争の泥沼的敗勢によって没落を深め、米帝を中心とした帝国主義世界経済は1974〜75年恐慌をもってその戦後発展の行き詰まりを露呈した。それでも米帝が基軸国としての地位を保ってこれたのは、そもそも米帝に代わって世界支配を確立できる存在が皆無であったことに加え、他の帝国主義諸国に対して圧倒的優位に立つ軍事力と基軸通貨ドルの強みを発揮して激しい争闘戦を展開し、とりわけアジアにおける政治的・経済的・軍事的支配をとにもかくにも維持してきたからである。
 そこにおいて米帝が決定的に依拠したのは、日本帝国主義との同盟(日米安保の維持・強化)と並んで、70年代初頭に開始した「関与政策」と称する中国スターリン主義との新たな関係だった。当時、ベトナム戦争の敗北とそれに伴う民族解放闘争の拡大、そして日本における70年安保・沖縄闘争の大爆発(その一つの頂点としての71年沖縄全島ゼネスト)は、米帝に対して文字通り「アジア失陥」の現実性を突きつけていた。こうした中で、71年7月のニクソン米大統領の突然の訪中発表、それに続く72年2月の訪中と米中共同宣言(上海コミュニケ)の発表は、中国スターリン主義との結託を通じて米帝の「アジア失陥」の危機を乗り切ろうとするものであり、まさに「米帝が窮余の一策として強行した大ばくち」(前進社刊『清水丈夫選集』第3巻)だった。こうして79年に米帝は台湾と断交し、中国と正式に国交を回復した。
 他方、それ以前からソ連スターリン主義と対立を深め、「一国社会主義」建設の無残な破産による深刻な経済危機にあえいでいた中国スターリン主義は、米帝との「関係改善」を背景に78年から「改革・開放」政策を開始。帝国主義諸国との協商、外資導入、民族資本育成、市場経済の導入による経済大国化路線へと転換した。帝国主義の側は74〜75年恐慌で露呈した過剰資本・過剰生産力のはけ口を求め、新たに「開放」された巨大な中国市場へと先を競って殺到した。
 こうして中国は90年代から2010年代までの20年以上にわたり毎年8〜14%ものGDP(国内総生産)成長率を実現、01年にはWTO(世界貿易機関)に加盟し、ソ連崩壊後も残存スターリン主義として延命を図ってきた。このような中国の「改革・開放」とそのもとでの経済大国化は、米帝を始めとした帝国主義諸国の資本に巨大な利益をもたらし、過剰資本・過剰生産力の重圧にあえぐ帝国主義の延命を支えてきたのである。
 やがて中国は、凋落(ちょうらく)した日帝に代わって世界第2の経済大国へとのし上がり、08年リーマン・ショックに際しては4兆元(約57兆円)の財政出動で世界経済の底割れを防いだ。だがこの巨額の財政出動は、中国国内に形成されていた過剰生産能力の問題をさらに深刻なものにした。それは中国経済のバブル化をもたらし、中国スターリン主義の経済的・体制的危機を激化させた。
 この打開をかけて、習近平政権は13年に「一帯一路」戦略を打ち出した。中国から東南アジア、中央アジア、ヨーロッパ、アフリカに至る巨大な経済圏構想であり、同時に習近平はこれを「安全保障政策」と位置づけた。15年には「中国製造2025」を発表し、軍事にも直結するハイテク部門を含めて中国の製造業の水準を飛躍的に高めることを宣言した。これらはいずれも没落・衰退を深める米帝にとって、その世界支配を決定的に揺るがすものであり、絶対に容認できない。こうして米帝はトランプ前政権下で中国への敵対政策を一気にエスカレートさせ、バイデン政権下で本格的な中国侵略戦争を準備するに至るのである。

延命へあがく習近平政権

 今や米帝は、台頭する中国スターリン主義との争闘戦を全面的に激化させながらも、すでに多くの巨大資本が製造拠点を置く「世界の工場」=中国から手を引くことはできず、14億もの人口を抱える巨大な市場と豊富な天然資源を手放すわけにもいかない。没落する米帝が基軸国としての地位と中国における巨大権益を維持するためには、中国の分裂・解体と現体制の転覆を狙う本格的な中国侵略戦争に突き進む以外になくなっているのだ。中国スターリン主義もまたこれに対抗し、「一帯一路」戦略の推進と一体で軍事力の強化を急いでいる。
 ここで重要なことは、中国の現体制はあくまでもスターリン主義(残存スターリン主義)であって、帝国主義ではないということである。
 確かに習近平政権は、一見すると帝国主義と見まごうばかりのことをやっている。中国が引き受けたインフラ工事などで事実上の中国の租界地のような地域がつくられていたり、中国からの融資で港湾を建設しようとした国が債務の返済に行き詰った結果、完成した港湾が中国の管理下に置かれたり(いわゆる「債務の罠」)、中国企業の過酷な搾取や労務管理に対して現地の労働者がストライキに立ち上がったりといったことが、「一帯一路」戦略の対象地域の国々で頻発している。
 だが、中国企業の海外進出で中心となるのはあくまでも国有企業であり、それに付随する形で民間企業も進出するケースが一般的だ。重要な海外でのインフラ工事は、政府レベルの合意の上に進められる。これは帝国主義資本の海外進出が民間企業によって担われるのとは異質である。
 また帝国主義国がFTA(自由貿易協定)などを締結する際には、「企業の公正な競争を阻害する」などと言って相手国の国有企業の解体・民営化や規制緩和を要求する場合が多いが、中国は必ずしもそうした新自由主義的改革を求めるわけではない。もちろん海外進出した中国系企業による利潤追求、市場獲得、労働者に対する過酷な搾取が行われることは言うまでもないが、中国にとって新自由主義はあくまでもスターリン主義体制延命のための手段であり、その本質から出たものではない。「改革・開放」政策のもとで民間企業が巨大化しても、中国の国家戦略を規定する第一の動機は新自由主義の推進ではなく、あくまでも党と国家を牛耳るスターリン主義官僚の権益の維持にほかならないのである。

世界革命を放棄し労働者階級に敵対

 そして何より、プロレタリア世界革命を完遂する労働者階級の実践的立場から、中国の現体制を「スターリン主義反革命」と規定することが重要である。
 中国共産党は、1930〜40年代の抗日闘争(民族解放・革命戦争)と45〜49年の国民党との内戦を指導し、この過程で組織された農民軍を主力に49年中国革命を成功させ、権力を掌握した。そして毛沢東時代の「一国社会主義」建設の大破産から「改革・開放」への転換を経て今日に至るまで、その反人民的政策の一切を「社会主義」の名で正当化し、権威づけてきた。それはまさに、ロシア革命をもって始まった資本主義から社会主義への世界史的過渡期を反動的に固定化し、「革命」や「社会主義・共産主義」を掲げてプロレタリア世界革命に敵対する〈国際共産主義運動の疎外態〉としてのスターリン主義、それもソ連崩壊後にあっても絶望的に延命のあがきを続ける残存スターリン主義にほかならない。
 だが「改革・開放」=経済大国化路線で延命してきた残存スターリン主義・中国は、今や〈コロナ×大恐慌〉と米中対立の激化のもとで絶体絶命の危機に追い込まれているのである。

戦争の危機高まるアジア

 米帝のトランプ前政権以来の激しい経済制裁に追いつめられた習近平政権は、この間、「一帯一路」戦略の成否をかけて「デジタル人民元」の実用化を急いでいる。
 中国ではすでに電子マネーの実用化が進み、貨幣を用いないキャッシュレス決済が爆発的に広がっている。中国のネット通販大手アリババが開発したスマートフォンの決済アプリ「アリペイ」は、その利便性の高さですでに10億人以上の利用者を獲得している。海外送金を一瞬で済ませることができ、高い手数料もいらないため、特に出稼ぎ労働者によって利用されているという。
 だが、こうした民間企業による一般的な電子マネーと比較して、中国政府が実用化を急ぐデジタル人民元が根本的に異なるのは、それ自体が国家(中央銀行)の発行するれっきとした法定通貨だという点だ。それは中国政府の掲げる「人民元の国際化」の決定的な手段と位置づけられている。デジタル人民元が外国企業との貿易の決済や海外送金、あるいは中国を訪れた外国人の買い物などに使われ、さらに「一帯一路」圏内の諸国で流通するようになれば、基軸通貨ドルの覇権を決定的に揺るがすことになるからだ。実際、IMF(国際通貨基金)は昨年10月、明らかにデジタル人民元の実用化が迫っていることを念頭に「デジタル化の加速で国際金融市場の流動性が高まり、将来的には複数のデジタル通貨圏が出現し、ドル基軸体制が崩れる可能性がある」と警告する報告書を発表した。
 だが、言うまでもなく米帝はドルの覇権を揺るがす「人民元の国際化」を絶対に容認できない。米帝の対中対決・包囲と侵略戦争策動に追い詰められた中国スターリン主義が、その重圧から逃れるために対抗措置をとれば、それに対して米帝はさらに激甚に反応し、中国に対する敵意と戦争衝動をますます強めることになるのである。

各国で実力デモやストライキが激発

 残存スターリン主義・中国の延命をかけた習近平政権の「一帯一路」戦略に対し、米日帝は「自由で開かれたインド太平洋」戦略を推進し、特に日米豪印4カ国(クアッド)の軍事も含めた協力関係の強化を急いでいる。イギリス、フランス、ドイツといった欧州帝国主義諸国もそれぞれ独自の対中政策を展開し、南中国海や太平洋に空母を派遣するなど、中国に対する軍事的重圧を強めている。また米帝始め帝国主義諸国にとって、対中政策は朝鮮半島政策と一体であり、中国侵略戦争の切迫を背景に朝鮮半島情勢も新たな段階に入りつつある。
 だが同時に、アジア全体での労働者民衆の未来と生存をかけた歴史的な決起が始まっている。習近平政権は国内支配の危機に駆られ、労働者人民への監視・弾圧、さらにはウイグルなど少数民族への抑圧を著しく強めているが、これに対して国内外で怒りの声が拡大している。また「一帯一路」戦略の重要拠点として香港を暴力的に再編しようとしたが、香港の民衆は19年以来激しい闘いを展開してきた。香港の闘いは国家安全維持法の大弾圧のもとでも、労働組合の闘いを軸に不屈に続いている。
 これに続いて、国軍のクーデターと闘うミャンマーの闘いが世界中の労働者民衆を鼓舞し、国軍を背後で支える日帝・菅政権と中国スターリン主義を揺るがしている。タイでは2000年代にタクシン政権下で強行された新自由主義政策による激しい格差、そして14年にクーデターを起こした軍事政権(これを支援しているのが中国スターリン主義)と王室の独裁政治への怒りが爆発している。爆発的なコロナ感染拡大と深刻な経済危機に見舞われているインドは、米日帝にとって対中戦略の要に位置する国だが、ここでも数億人規模での労働者や農民のストライキ、デモが激しく闘われている。
 アジア全域で労働者民衆が大きく動き出し、1930年代のような国際階級闘争の革命的大高揚が始まっているのだ。こうした階級闘争の内乱的・革命的大発展が、命脈の尽きた帝国主義とスターリン主義の双方を追いつめている。今こそ国境を越えて団結した労働者階級の力で、反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命の勝利へ進もう!
このエントリーをはてなブックマークに追加