全面分社化狙うJR東の新提案 7・4国鉄集会で総反撃に立とう

週刊『前進』04頁(3199号02面01)(2021/06/21)


全面分社化狙うJR東の新提案
 7・4国鉄集会で総反撃に立とう


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 JR東日本は5月26日、「現業機関における柔軟な働き方の実現について」と題する提案を出した。鉄道業務の全面的な外注化・分社化に踏み込んできたのだ。同時にそれは、労働者の総非正規職化に向けて、新たな労働者支配のモデルをJRでつくり、全社会に広げようとする攻撃だ。

「融合」の名で破滅的労働

 コロナは国鉄分割・民営化の破産をはっきりと突き出した。JR北海道や四国だけでなく本州のJR各社も大赤字に陥った。鉄道を民営化したら公共交通は維持できない。この事実はもはや誰も否定できない。
 だが、JRは資本としての延命策を「鉄道事業からの脱却」に求めている。JR東日本は2018年に策定した「グループ経営ビジョン『変革2027』」以来、「鉄道起点からヒト起点へ」を押し出してきた。コロナに直撃されて深沢祐二社長は「鉄道ありきでものを考えるな」と公言し、今回の提案では「時計の針は10年早く回っている」として攻撃を急加速させた。
 提案の中身の一つは、医療関係を除き全職種で職名を統合することだ。検修部門なら車両係、保線部門なら施設係などの職名があったが、それを「係員」に統一する(表参照)。JR東日本は昨年4月、運転士と車掌の職名を廃止して乗務係にしたばかりだが、その職名も廃止される。職名として残るのは係員、指導係、主任、主務など上下関係を表すものだけで、職種や職務はまったく表現しない。昇進しなければ労働者は定年まで「係員」のままだ。
 「労組なき社会」を狙うJR東日本だから、どの企業でも行われたことのない攻撃に踏み込んできたのだ。鉄道事業は専門性を有する多数の職種が有機的に結合して成り立っている。それぞれの職務に精通した技能を持つ労働者の養成が鉄道経営の根幹だった。にもかかわらずJRは、職名廃止で各職種を価値のないものとして扱い、労働者が培ってきた技能をおとしめ、鉄道労働者としての価値観の放棄を迫ってきた。
 提案は、「統括センター」「営業統括センター」という名の新たな現業機関を設け、駅や乗務員区、生活サービス事業、支社の機能の一部を融合し、フレキシブルな働き方に変えるという。その例として、担当する仕事が日ごとに駅業務、企画業務、乗務に変わったり、時間単位で駅業務、除草・除雪、店舗業務、乗務をかけもちしたりすることが示されている。
 だが、こんな働き方は人間の肉体的・精神的限界をはるかに超える。安全を確保するための集中力が求められる鉄道で、これが行われたら事故が続発することは避けられない。
 6月1日には、全社員を対象にグループ会社での副業を解禁する提案もなされた。副業は月60時間まで、労働時間管理は自己責任で行う。副業の目的は「社外での多様な業務経験を通じ......新たなサービス・付加価値の創出につなげること」とされている。副業するかどうかも評価の対象になり、事実上強制される。副業しなければ生活できない低賃金にした上で、過労死レベルの長時間労働を強いるのだ。実際、JR東日本はJR各社で唯一、定期昇給カットを強行し、低賃金化の先頭を走っている。

運転業務も子会社に外注

 この攻撃の目的は、業務の全面的な分社化と労働者への転籍強要・総非正規職化だ。鉄道業務は融合などできない。子会社の非正規職労働者が実際の業務を担うことは、この提案の大前提にされている。
 提案の核心は駅業務と乗務の融合にある。駅は子会社のJR東日本ステーションサービスへの業務委託が大幅に進んでいる。その駅業務と乗務を融合するのは運転士の業務も子会社に外注化することが狙いだ。
 運転士は駅員、車掌を経て養成されていた。駅の外注化はこの養成ルートを断つもので、JRの外注化施策の大きな矛盾点だった。車掌もワンマン化で「なくなる職種」に位置づけられて矛盾はさらに深まった。JRはこれを逆手にとり、運転士の外注化に踏み込もうとしているのだ。
 今回の提案は肥大化した管理部門の大リストラも意図している。支社機能の一部を「統括センター」などに移すと共に、管理職を現場に下ろし、駅や運転の業務、除雪や草刈りまでやらせ、副業にも従事させる。
 安倍政権以来の「働き方改革」の総仕上げに、JRは乗り出してきた。それは、労働者をどこまでも摩耗させて使い捨てる破滅的な攻撃だ。
 動労千葉は「外注化阻止闘争の再構築」を掲げて今春闘を闘い、外注先のCTS(千葉鉄道サービス)で労組の多数派を目指す挑戦を本格的に開始した。職場代表選挙もそのために位置づけて、全力で闘った。
 改憲・戦争攻撃の一線を越えた激化と一体で、労働者支配の大転換がJRを先頭に始まった。7月3、4日の国鉄闘争全国運動の集会は、産別をこえて労働者の力を結集し、これと全面対決する決戦の場だ。

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