医療・介護・福祉を奪い返そう 医療を破壊したのは新自由主義 現場に闘う労働組合を

週刊『前進』04頁(3200号03面01)(2021/06/28)


医療・介護・福祉を奪い返そう
 医療を破壊したのは新自由主義
 現場に闘う労働組合を


 コロナ禍が暴き出した医療の崩壊的現実は、決して自然に生み出されたものではない。新自由主義下の数十年間で支配階級が意図的につくりだしてきたものだ。怒りのあふれる医療現場に今こそ労働組合をよみがえらせ、闘いに立ち上がろう。医療・介護・福祉を奪い返し、労働者民衆の命を守ろう。

コロナ下で矛盾が極限化

 新自由主義による社会の崩壊は医療において最も鋭く突き出された。コロナ感染爆発が始まって1年半経った現在も大阪や北海道、沖縄などで病床や医師が不足し、多くの人が入院できずに亡くなっている。通常医療にも支障が出るなか、あらゆる矛盾が現場の労働者に押し付けられている。
 にもかかわらず、菅政権はこの間、病床の大幅削減と高齢者の医療費窓口負担を2倍化するための法改悪を進め、全国の公立・公的436病院を依然として「再編・統合」の対象としている。東京都知事・小池は、コロナ感染者を率先して受け入れてきた都立・公社14病院の独立行政法人化方針を撤回していない。
 その上、労働者民衆の命と生活よりも資本の金もうけと国威発揚のためのオリンピックが優先され、医師・看護師の動員が強行されようとしている。同時にデジタル化を通じた医療の国家統制や戦時医療への転換も狙われている。
 新自由主義の継続と労働者民衆の命を守る医療とが決して相いれないことは、今や完全に明らかだ。

労働運動破壊狙った行革

 医療・福祉解体攻撃は、日本における新自由主義攻撃の突破口となった1980年代の国鉄分割・民営化と一体で開始された。
 高度経済成長が完全に終わりを迎えた80年代初頭、政府は国家財政の危機を叫び、一方では78年の「日米防衛協力指針」制定に象徴されるように戦争国家化への転換を開始していた。
 当時開始された「行政改革」の狙いは「21世紀に日本が生き残るための国家の大改造」(82年自民党運動方針)であり、大資本の延命のために労働者の団結や権利を徹底的に粉砕することだった。支配階級は「行革ができなければ、あとは革命しかない」という激しい危機感を吐露していた。
 81年に結成された「第二次臨時行政調査会」の会長には経団連名誉会長・土光敏夫が就き、「日本経済の足を引っ張る3K」として「米(米価)」「国鉄」「健康保険」をやり玉に挙げた。
 82年に首相となった中曽根康弘は「戦後政治の総決算」を掲げ、国鉄分割・民営化攻撃に打って出た。その最大の狙いは、改憲・戦争国家化のために国家暴力で国鉄労働運動を破壊することだった。

「医療費亡国論」のペテン

 医療にも同様の新自由主義攻撃がかけられた。83年に当時の厚生省保険局長・吉村仁が雑誌に掲載した論文「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方」の中で「医療費亡国論」を展開。吉村は「医療費は……国鉄、米価、公務員給与、年金、防衛費等と肩を並べる国政の最重要課題といって過言ではない」とし、「このまま医療費が増えつづければ国家がつぶれる」との考えを「医療費亡国論」と称した。さらに、より「効率的に」医療費を使うための「医療費効率逓減論」、医師の供給過剰と患者の通院しすぎが問題だとする「医療費需給過剰論」の二つを展開した。
 この「医療費亡国論」をもって公的医療と社会保障の破壊が進められていった。吉村は「経済成長率は大きく期待できない」なかで、「租税・社会保障負担率が高まれば……社会の活力を失ってしまうのではないか」と述べる。しかし、命とカネとを天秤(てんびん)にかけるのは帝国主義の論理だ。そのイデオロギーの行きついた先にあるのが、コロナ下で現に始まっているトリアージ=命の選別にほかならない。
 そもそも、「医療費亡国論」「政府にとって医療費負担が過重」との主張自体が大うそだ。国が負担する医療費の割合は他国と比較して決して高くはなく、一方で患者の負担は増やされ続けてきた。医療の民営化は社会保障としての医療を破壊し、大資本のえじきとするためのものだ。

医療費抑制を掲げ医師数を大幅削減

 政府がどれほどすさまじく公的医療を破壊し、崩壊させてきたのか。そのことを典型的に表すものが医師不足だ。80年代以降、医療費抑制を掲げて医師数を大幅に削減してきた。82年と97年の閣議決定を受けて全国の大学で医学部の定員が減らされ、医師の国家試験も年2回から1回に。2018年時点で日本の医師総数は、経済協力開発機構(OECD)加盟各国の平均を13万人も下回る。
 国策によって生み出された医師不足は、患者のみならず医師の命をも奪っている。厚生労働省の調査でも、19年時点で勤務医20万人のうち過労死ラインを超えて時間外労働をしている医師は約4割に上り、うち1割は過労死ラインの2倍以上も働いていた。にもかかわらず同省はコロナ下でまたもや23年度からの医学部定員削減を決定した。暴挙としか言いようがない。
 さらに安倍政権は14年、全国の病院を再編して病床を20万床減らす「地域医療構想」を発表。その結果、病床は約165万床(1999年)から153万床弱(2019年)となった。
 これと並行して、保健所も30年で約半分に減らされた。2000年の介護保険制度導入、06年施行の障害者自立支援法による福祉切り捨ても巨大な攻撃だ。

労働組合の復権が命守る

 しかし日本の労働者階級は、こうした激しい民営化・労組破壊攻撃と対決して闘いぬいてきた歴史をもっている。国鉄分割・民営化に反対してストライキで立ち向かって団結を守りぬいた動労千葉、全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部、全国金属機械労組港合同の3労組陣形は、「労組なき社会」化攻撃に立ち向かう日本労働運動の結集軸として発展している。
 コロナ下の今、限界に達した労働者の怒りが医療現場にあふれ、解き放たれようとしている。闘う労働組合が待ち望まれている。昨年以来、コロナ下で次々と闘われている医療労組のストライキが示しているように、命を守る現場で働き闘う医療・介護・福祉労働者の姿は産別をこえて労働者階級の心を揺さぶり、新たな闘いを生み出す力となる。改憲・戦争を阻み社会を変える力もここにある。
 7・3―4国鉄集会に大結集し、医療・介護・福祉の現場から新自由主義を打倒する階級的労働運動を再生させよう!
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