「経済安全保障」叫ぶ財界 産学官軍の秘密研究推進を要求

週刊『前進』04頁(3200号03面03)(2021/06/28)


「経済安全保障」叫ぶ財界
 産学官軍の秘密研究推進を要求


 労働者民衆の怒りに追い詰められた日本帝国主義・菅政権は、本格的に中国侵略戦争へとかじを切った。国会ではデジタル独裁法や土地調査規制法などの悪法を成立させ、自らの延命をかけて改憲と戦争体制構築にのめり込んでいる。半導体やレアアースなどのサプライチェーン強化などによる「経済安全保障」の推進は政府が6月18日に決定した経済財政運営指針「骨太の方針」にも明記された。

中国への侵略戦争体制づくりの攻撃

 こうした中、財界は中国侵略戦争体制づくりに積極的に応えようとしている。4月16日の日米首脳会談の直後である4月21日、日本の主要な経営者団体の一つである経済同友会は「強靱(きょうじん)な経済安全保障の確立に向けて」なる提言を公表した。今は非常時であり、企業経営者も学術界も国家に協力し、激化する国家間の激しい争闘戦に勝ちぬく体制を確立せよ、というものである。
 戦前の国家総力戦体制がもたらした悲惨で残虐な戦争への一片の反省もなく、支配階級は労働者人民を再び戦争に引きずり込む総力戦体制を主張し始めたのである。
 「時代は変わった!」という叫びで始まるこの「提言」は、第1章「世界の潮流と日本の立ち位置」で世界が激しい競争の時代に入ったことを語り、第2章「日本の経済安全保障」で経済の繁栄と国家の安全保障が一体であることを強調し、第3章で具体的な提言を行っている。
 抜粋して紹介すると次のようなものである。
 「中国の経済成長と国際秩序への挑戦、米国による対抗が激化」「国家の安全保障が政治力や軍事力だけでは達成できない時代」「単純に経済合理性や経済的利益を追求するという経営では、この『非常時』を乗り切れない」「安全保障問題をタブー視せず……これらの要素を経営戦略に反映させる必要がある」

科学者団体と大学を軍事研究に動員

 そして、第3章で「地経学の時代に日本のとるべき針路」として具体的な提言を行っている。そこでは▽政府の「国家安全保障局」が司令塔となり、防衛省、経産省、文科省、総務省等が協力して機微技術の研究を進める体制をつくること、▽「秘密研究、秘密特許制度」を導入し、「資源配分の戦略的意図や、企業が有する機微技術を秘匿」すること——などを提案している。機微技術とは軍事転用可能な技術のことだ。
 さらに学術界に対しては「防衛技術の研究開発に対するタブー視を改め、『建設的関与』へと転換することが必要だ」と言う。ここで、日本学術会議が軍事研究に否定的な声明を出していることを批判し、「政府と協力し(機微技術研究の)ネットワークの整備に努めよ」と迫っている。これは、日本学術会議への菅政権の不当な介入・攻撃を全面的に支持し後押しするものだ。菅政権と支配階級は、日本の科学者団体・大学総体を戦争体制に組み入れようと狙っている。
 「産学官(軍)の協力」と「秘密研究の推進」の先にあるものは何か。戦前、物理学者は軍部の要請で原子爆弾の秘密研究に取り組んだ。「秘密」とは、人民に対して隠し続けるということだ。こんなことを二度と許してはならない。
 こうした財界の提言は、今日の全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への労組破壊攻撃、JRにおける「労組なき社会」化の攻撃と完全に一体であり、労働者階級を戦争体制に屈服させ動員しようとする攻撃である。
 だが、支配階級の狙い通りにことが進むと思ったら大間違いだ。今や、菅政権に対する労働者人民の怒りは大きく爆発しつつある。階級的労働運動を軸にして改憲・戦争を絶対に許さず、体を張って阻止するという固い決意あふれる闘いを実現しよう。大学の軍事協力阻止の闘いも正念場だ。全力で闘おう。
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