米英・ウクライナが対ロ戦争挑発 黒海でNATO海軍演習、過去最大規模

週刊『前進』04頁(3204号03面04)(2021/07/26)


米英・ウクライナが対ロ戦争挑発
 黒海でNATO海軍演習、過去最大規模


 〈コロナ×大恐慌〉のもとで米中対立が激化し、アジアでは日米帝国主義による中国侵略戦争の策動が強まっている。欧州でも米ロ関係が悪化し、米帝・北大西洋条約機構(NATO)・ウクライナとロシアとの戦争の危機が迫っている。さらに中東やアフガニスタン、アフリカの戦火も絶えない。一切の元凶は帝国主義とそれに対抗する(残存あるいは旧)スターリン主義だ。これらを打倒しない限り核も戦争もなくせない。8月反戦反核闘争に立ち、革命の大道を切り開こう。

ロシア軍が大演習でウクライナ威嚇

 今年初めからウクライナ東部ではウクライナ政府軍と親ロシア武装勢力との武力衝突が再燃し、死者が急増していた。この緊張のなか、ロシアは3月下旬から4月にかけて黒海、クリミア半島、ロシア・ウクライナ国境付近に10万人以上といわれるロシア軍部隊を展開・配置した。ウクライナに対する脅しと戦争挑発であり、米帝バイデン新政権の出方を探る行動だった。
 ロシアとの全面戦争を恐れたウクライナ大統領ゼレンスキーは、米大統領バイデンら欧米帝国主義に軍事・財政支援を要請した。バイデンはウクライナ支持と財政援助を約束した。
 そのうえでバイデンは、「殺し屋」呼ばわりしたはずのロシア大統領プーチンに電話をかけ、G7サミット後の米ロ首脳会談開催を提案した。中ロを分断し対中対決に集中するためだ。
 プーチンはバイデンの提案に乗り、国防相に「ロシア軍の演習の終了」を発表させた。戦争勃発の危機はいったん回避された。ウクライナはますます米欧にすり寄っている。

「シーブリーズ」に32カ国、日本は初

 現に米帝とウクライナは軍事的な結びつきを強めている。6月28日から7月10日まで米海軍第6艦隊とウクライナ海軍の共催でNATOの常設「海兵団2」を中心にNATO諸国とウクライナ、日本、韓国、オーストラリアなど32カ国が「シーブリーズ2021」海軍演習を黒海とウクライナ南部で実施した。
 NATO海軍演習シーブリーズは1997年以来、毎年行われてきたが、昨年は中止。今年はこれまでで最大の規模だ。2019年は19カ国、30隻が参加。今年は5千人の兵士、32隻の艦船、40機の航空機、18の特殊作戦・潜水チームが参加した。水陸両用作戦、機動戦、潜水艦作戦、海上阻止作戦、防空作戦、統合特殊作戦、捜索救助作戦など様々な訓練を行った。
 この海軍演習の直接の目的は①NATO・ウクライナ両海軍諸部隊の「相互運用性」を高める②ロシア国境付近での演習で実際にロシアに軍事圧力をかける③黒海がロシアの「池」になることを阻止する(黒海を国際的な公海とみなし「航行の自由」を確保する)④ウクライナ東部の親ロシア勢力との戦争を展開しているウクライナを支援する、ことだ。総体としてみればシーブリーズ2021は米欧帝国主義(とウクライナ)の対ロシア戦争挑発そのものだ。

英駆逐艦にロシアが警告射撃・爆弾

 シーブリーズ演習を前にした6月23日、英海軍の駆逐艦「ディフェンダー」がウクライナのオデッサ港を出てジョージアのバトゥミ港に向かう途中、クリミア半島沖を通過した。ここは14年にロシアがクリミア半島を併合して以来、ロシアが領海とする海域だ。ロシアは領海侵犯とみなして地上から警告射撃を行い、戦闘機から警告の爆弾を同駆逐艦の付近に投下した。
 ロシアは4月下旬、ロシア軍の演習部隊の撤収を発表した直後にクリミア半島周辺海域を10月末まで閉鎖すると宣言していた。このなかで英海軍はクリミア半島沖を通過したのだ。
 英海軍は、駆逐艦はウクライナ領海を通過し、警告の射撃も爆弾投下も受けなかったと公式に声明した。英ジョンソン政権も「航行の自由」、国際法の遵守を強調する。
 だが英BBCはロシアの警告射撃・爆弾投下場面を駆逐艦上から撮影し、その映像を放映した。BBCはさらに、英海軍が事前にクリミア沖と迂回(うかい)路の2案を検討していた証拠文書を入手し公表した。イギリスは明らかにロシアを挑発したのだ。ロシアも戦争発生に備えている。
 6月18日の米ロ首脳会談は軍備管理をめぐり新たに協議を開始することで一致したが、バイデンの対ロ圧力はトランプを上回る。東西で米帝が主導し日帝などが協調する形で戦争の危機が急迫している。8月反戦反核闘争で反撃しよう。
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