焦点 最低賃金引き上げ 生きていけるだけの賃金よこせ

週刊『前進』04頁(3208号03面02)(2021/08/30)


焦点
 最低賃金引き上げ
 生きていけるだけの賃金よこせ


 厚生労働省は8月13日、最低賃金法に基づく47都道府県の地域別最低賃金(最賃)の改定額を公表した。10月から適用され、全国平均は28円増の時給930円。最高は東京の1041円で最低は820円。昨年度は引き上げ額がゼロだったが、今年度は中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)による引き上げの目安制度発足以来の「最大の引き上げ幅」となる。

まだまだ低すぎる!

 しかし全国の格差は最大221円のままであり、かつ労働者と家族の生計費としては成り立たないレベルだ。時給930円では月収は15〜16万円前後。ダブル・トリプルジョブ、副業・兼業による長時間労働・過重労働を余儀なくされる状態が続くことになる。
 コロナ下で労働者の命と健康の危機に加え、大量解雇と休業、非正規職化と最賃水準への賃下げが横行している。だからこそ多くの労働組合団体は必死の思いで「コロナ禍だからこそ最低賃金大幅アップを」「全国一律1500円に」と求めてきた。「最低の最低これだけはよこせ」という切実な要求額だ。平均28円増という引き上げ幅はそうした闘いの中で勝ち取られた。しかしこれで闘いは終わらない。全職場での最賃保障と賃上げを求める闘いが続く。

総非正規職化と一体だ

 菅政権は6月、骨太方針で「早期の時給1千円の実現」と明記。最賃アップと一体で、労働規制の撤廃と総非正規職化=最賃水準への引き下げを一気に進める方針を打ち出した。
 中央最賃審議会が最賃改定の目安を示した7月、日経新聞は「生産性を上げねば最低賃金上げも続かぬ」と題する15日付社説を掲載。「企業の負担が増え続ければ雇用減など地域経済への悪影響が広がりかねない」と脅して「生産性の改善」「成長分野への企業の参入を阻んでいる規制の撤廃」を求め、「ハローワークに民間のノウハウを取り入れて求人開拓力をテコ入れし、職を失っても迅速に別の仕事に就けるようにする」ことまで主張した。
 最賃アップは解雇をもたらすというのは、ためにする宣伝だ。賃上げも解雇阻止も、労働者と資本家の力関係で決まる。だからこそ資本は、最賃アップを口実に規制撤廃・解雇自由化・非正規職化を進め、すでに非正規職が大半のハローワークの完全民営化を狙う。さらに個人請負(フリーランス)の拡大で最賃を含む労働者としての権利を根こそぎ奪おうとしている。

雇用も賃金も保障しろ

 しかしこうした攻撃に対して雇用と賃金の保障を求める闘いが急速に広がっている。それは労働運動全体を変える闘いだ。
 自治体の最賃並みの会計年度任用職員が労組に結集し雇い止めを許さず賃上げと手当の支給を求めて闘いを繰り広げている。個人請負とされるウーバーイーツやシルバー人材センターの労働者が団結し、最賃保障と賃上げ、労災・コロナ休業補償を求め闘っている。
 人事院による公務員一時金の2年連続減額勧告を支持した連合は国や資本と同じ立場から「生産性向上」「賃上げは経済回復の力」などと主張する。だがそれは労働者の階級利害とは相いれない。最賃をめぐる闘いは全労働者の生存をかけ、新自由主義への怒りと資本主義の賃金制度そのものを問う闘いへ発展していく。階級的労働運動の飛躍をかけて闘おう。
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