〈コロナ×大恐慌〉〉の激化と深化 新自由主義の破産・崩壊で凶暴化する没落米帝と日帝

週刊『前進』04頁(3213号03面01)(2021/10/04)


〈コロナ×大恐慌〉〉の激化と深化
 新自由主義の破産・崩壊で凶暴化する没落米帝と日帝

(写真 中国恒大集団の本社に押しかけて、投資した金融商品の償還を求めて抗議し詰め寄る人々【9月13日 広東州深圳市】)


 〈コロナ×大恐慌〉情勢は世界的に深化し、もはや後戻りなどできない過程に突入している。米帝は空前の恐慌対策によって、むしろ一層の危機と没落を招いている。日帝が世界の帝国主義の中で「最弱の環」であることが、いよいよ浮き彫りになっている。共通するのは新自由主義の破産・崩壊であり、革命的情勢の成熟である。米帝も日帝も階級支配の崩壊と革命の接近に恐怖し、戦争への衝動とその準備を強めている。特に日帝は、自民党総裁選で中国侵略戦争とそのための大軍拡政策を露骨に打ち出した。階級的労働運動を強め、改憲・戦争への怒りを高め、11・7労働者集会に結集しよう。

中国恒大集団危機と加速する世界大恐慌

 中国の不動産大手・恒大集団が1兆9665億元(約33兆円)、中国GDP(国内総生産)の約2%にも及ぶ負債を抱え、債務不履行の危機に陥り、大恐慌の新たな発火点となっている。不動産市場こそ、この20年間の中国経済成長の基軸であり、リーマン・ショックの際の4兆元の経済対策の柱でもあった。そこがついに崩れた。中国経済と世界経済を急収縮させる一大事態だ。また、世界的な株バブルを顕在化させる画期となっており、国際的な金融危機を誘発する可能性もある。実体経済でも金融でも、中国が世界大恐慌にのみ込まれ、それがまた世界全体に跳ね返るという過程が始まった。
 恒大危機の直接の発端は、習近平政権が不動産投機を冷ますため不動産企業に規制を強めたことにある。中国の大都市の不動産価格は東京都のそれを上回っており、労働者人民の怒りは爆発寸前だ。それを抑えようと不動産規制に乗り出したのだが、それが一層の経済問題を引き起こし、制御できない危機を招きかねない。中国スターリン主義の危機はここまで深い。

コロナ感染拡大が米帝経済に大打撃

 では、没落する基軸国である米帝はどうか。米経済はコロナパンデミックが本格化した2020年春以降、急降下してきた。20年通年の実質成長率はマイナス3・5%で、終戦直後の1946年(マイナス11・6%)以来の大幅なマイナスとなった。リーマン・ショック翌年の09年がマイナス2・5%だから、それを上回る落ち込みである。
 これに対し、リーマンの時以上のとてつもない恐慌対策が発動されてきた。20年3月には金融での量的緩和が再開され、米連邦準備制度理事会(FRB)は無制限に米国債などを買い入れ、資金をじゃぶじゃぶに供給してきた。財政面では、トランプ政権下で20年3〜12月に累計約3・8兆㌦の危機対策が打ち出された。バイデン政権は約2・3兆㌦の「米国雇用計画」、約1・8兆㌦の「米国家族計画」を打ち出してきた。前者は議会との合意で1・2兆㌦に半減されたが、それにしても巨額の恐慌対策を続けようとしている。
 この恐慌対策で、21年春に米経済は最悪期を脱する気配を見せた。しかし、デルタ型の拡大などから新型コロナウイルスの新規感染者は8月中旬には1日で20万人を超える日もあり、8月の消費者態度指数は約10年ぶりの低水準になった。コロナパンデミックの新たな波が来るたびに、経済が下降し停滞する、ということを繰り返している。7月の就業者は危機前より約570万人少なく、就業率も6割を下回っており、大失業も続いている。
 このようにコロナの影響の大きさが露呈しているが、08年リーマン・ショックによる大恐慌から回復できないまま、その素地の上にコロナパンデミックに直撃されたという歴史的経緯がある。リーマン大恐慌は、住宅バブルの崩壊、米金融機関の破綻と金融市場での信用収縮、GMなど巨大企業の倒産など、1929年恐慌を上回る大恐慌であった。
 それは、9・12革共同政治集会の基調報告で明らかにしたように、資本主義・帝国主義の最末期の延命形態である新自由主義の崩壊の始まりだった。新自由主義は74〜75年恐慌と戦後発展の終焉(しゅうえん)を一契機としているが、それ以来約30年間の新自由主義による経済・社会の延命は、もっと深刻な大恐慌に行きついてしまったのだ。大恐慌とは過剰資本・過剰生産力がどうやっても処理不能になることであり、資本主義の存亡の危機にほかならない。リーマン大恐慌は、新自由主義のもとで延命に延命を重ねてきた資本主義の最後的な崩壊への道を開いたのだ。

未曽有の恐慌対策で体制危機深める米帝

 そうした新自由主義の崩壊が今日、〈コロナ×大恐慌〉によっていよいよ決定的に激化し、本格化しつつある。それを端的に示すのは、米帝の恐慌対策がむしろ米経済の危機と没落を加速していることである。
 何よりも、無制限とも言うべき金融の量的緩和は株バブルを引き起こしており、いつ崩壊してもおかしくない。7月にはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の株式時価総額が、日本株全体の時価総額を上回った。CAPEレシオという株価の指標が30倍を超えると割高と言われるが、昨年から30倍を超え、今年5月末には37倍に達した。リーマン・ショック前の27倍台、29年大恐慌前の32倍台をも上回る。FRBが金融緩和の縮小に言及し始めているのは、株価の過熱を抑えて暴落を防ぐ狙いがある。
 このGAFAの株高に示されるデジタル化は、〝技術革新による新たな市場の創出〟というより、従来からの市場の再分割に近い。たとえばフェイスブックの売上高(2020年1〜3月期)177・4億㌦のうち、広告による売上高が174・4億㌦、98%を占める。テレビ・新聞・雑誌など、従来のメディア企業の広告売り上げを奪っただけにすぎない。アマゾンの20年の売上高3860・6億㌦のうち、オンラインストア売上が1973・5億㌦と51%を占めており、これも実店舗から奪ってきたものだ。GDPや雇用で全体の規模を広げる効果は小さい。
 デジタル化はむしろ、合理化、失業促進、貧富の格差拡大、監視国家化を促進する。米経済の根幹をなしていた自動車産業と金融業がリーマン大恐慌下で崩れ、GAFAのような部門にしがみつくしかなくなった。このようなGAFAに依存せざるを得ない点に、新自由主義の破産と腐朽が示されている。
 さらに、財政面での恐慌対策によって、国家財政は急激に破綻してしまった。米政府債務残高の対GDP比は、18年4月から20年4月まで105〜108%だったが、20年末には一気に132・5%となり、第2次大戦直後の119%を上回った。8月1日には連邦債務の上限適用が復活しており、もし国債を増発できなくなれば、10月にも連邦政府の資金が枯渇してしまう。
 これは「財政規律の喪失」どころではない。新自由主義は「小さな政府」を標榜(ひょうぼう)し、「民営化」を最大手法として強行されてきた。それが今や、無制限の財政支出を命綱にするしかない。これを新自由主義の破産・崩壊と言わずしてなんと言うのか。
 バイデン政権が恐慌対策に必死になっているのは、トランプを引きずり降ろした米労働者人民の怒りがプロレタリア革命に向かうことを恐れているからだ。6月のアンケート調査によると、18〜34歳の回答者のうち、資本主義という言葉を肯定的に捉えると答えた割合は49%と、19年の58%から急減した。一方、社会主義に肯定的な反応を示した比率は5割に達した(9月15日付日経新聞)。米日による中国侵略戦争の動きは、こうした米帝の体制的危機と革命的情勢の成熟という中で生じている。

財政も金融も崩壊の破局へと向かう日帝

 日本経済は、コロナショックで20年4〜6月期に急降下し、20年度の実質成長率はマイナス4・6%と、戦後では最大の落ち込み幅となった。20年夏〜秋は少し戻したが、21年1〜3月に再びマイナス成長となり、その後も停滞したままである。
 日本では、コロナ前に非正規職が4割まで増え、そのほとんどの年収が200万円に満たない。そこにコロナパンデミックとコロナ大恐慌が襲いかかり、本当に生きていけなくなっている。総務省・労働力調査によると、20年度の非正規の平均従業員数は2066万人で、前年度から97万人減った。今年4〜6月期の失業者は233万人だが、就業希望者(就業を希望しているが求職活動をしていない人)が261万人、不本意非正規(正規の仕事がないので非正規になっている雇用者)が215万人もおり、総計で約700万人の大失業である。一方、今年3月期の上場約2400社で、報酬1億円超の役員は544人と、前年より11人増えた。
 日本は、帝国主義国の中で最も深刻な恐慌に陥っているだけではない。コロナ大恐慌下で、日帝こそが最大の危機と矛盾を抱えた国際帝国主義の「最弱の環」であることがますます浮き彫りになっている。
 何よりも、日本の財政と金融は、日銀による国債・株式の購入で成り立ってきたが、財政も金融も必ず崩壊していく。3月末時点で、日銀の持つ上場投資信託の時価は約51・5兆円となり、国内株式の最大保有者となった。9月に日経平均株価は31年ぶりの高値を付けたが、官製相場でしかない。同じく3月末に国債残高に占める日銀保有の割合は48・4%になった。
 日本での新自由主義は「財政再建」や「官から民へ」を掲げて行われてきたが、結局は財政も金融も中央銀行頼みという破滅的結果に至った。日帝こそ、最も新自由主義が破産してのたうち回っている帝国主義であり、いち早く打倒すべき帝国主義だ。
 日本企業は、デジタル化とか脱炭素とかで新しい発展があるかのような幻想を振りまいているが、検査の不正・偽装こそが真の姿である。6月には鉄道車両用の空調設備で国内首位の三菱電機が、架空データを自動で作成する専用プログラムを使って不正検査をしていたことが発覚。検査したかのようなデータを作るもので、まさに偽装である。それも1985年ごろから30年以上もやっていた。
 2017年には日産自動車、神戸製鋼所などの不正が発覚し、経団連が加盟の約1300社に総点検を求めたが、何も変わらなかった(7月29日付日経社説)。新自由主義とその破綻こそがこういう企業のあり方を招いたのだ。

中国侵略戦争を阻みプロレタリア革命へ

 このような新自由主義の崩壊の中で、帝国主義間、大国間の争闘戦は、明らかに新次元に突入しており、それが日帝の危機を決定的に加速している。現在、米中対決の激化と自国製品優先主義の強まり、コロナ危機による世界的なサプライチェーンの縮小、産業・社会の「脱炭素」シフトをめぐる大国間争闘戦の激化、デジタル化や電気自動車(EV)での先陣争い、オーストラリアの潜水艦建造―武器輸出競争をめぐる米仏対立、などから争闘戦が強まっている。
 特に、米中ともに、半導体の自国および近隣からの調達を最大課題として動き始めている。米帝は死活をかけた争闘戦に勝ち抜くために、世界経済をブロック化させている。米帝はGAFAについても、反トラスト法まで使って米帝国家の利害で動くように再編しようとしている。
 米日帝の中国侵略戦争の動きは、こうした争闘戦の新段階の中で起きている。没落する米帝は、生き延びるためならどこまでも凶暴化し、何よりも帝国主義である限り必ず戦争に踏み込む。帝国主義の破滅的な危機が戦争に行きついた歴史を見据えなければならない。
 日本経済は戦後、商品・資本を一方的に輸出して成り立ってきた。日帝にとって、そこが崩れるかどうかの瀬戸際にある。世界のGDPに占める日本の割合は、1994年には17・9%に及んだが、2020年には6・0%にまで落ちた。しかし、日本の海外投資直接残高は20年末で1兆9933億㌦、GDP比は38・2%に上る。国内生産の4割弱ほどの巨額の海外投資だ。トヨタ自動車の4〜6月期決算では、米国での販売台数は68万8813台で、GMを抜いて首位になった。日帝がこれをむざむざと放り出すことなどありえない。帝国主義として凶暴化し戦争に踏み込んでいく。日米同盟を強めつつ、自民党総裁選で噴出した大軍拡政策に踏み込むしか、生きる道がないのである。
 日帝が改憲と中国侵略戦争にのめりこみつつあるのは、こうした多面的・全面的な危機をかかえ、必死に延命しようとしているからだ。死の苦悶(くもん)にあえぐ日帝を打倒する現実性はますます強まっていく。プロレタリア革命の勝利へ、意気軒高と11月労働者集会をかちとろう。
(島崎光晴)

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▼消費者態度指数 消費者マインドを示す指標。米国ではミシガン大学の調査研究センターがアンケート調査し、毎月300人を対象とした速報値、500人対象の確報値を発表する。

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