九州 経費削り込み黒字化 無謀きわまる自動運転も

週刊『前進』04頁(3214号02面05)(2021/10/11)


九州
 経費削り込み黒字化
 無謀きわまる自動運転も


 JR九州はコロナ禍の中で、JR上場4社の中で唯一、今年度の第1四半期決算で黒字を達成したと8月3日に発表した。だが、連結経常利益3億8500万円という数字は、全面的な合理化と地方切り捨ての結果だ。20年度全体で193億2300万円もの連結経常損失を出したことから「回復」するため、JR九州は本来必要な修繕などを先送りする「緊急抑制」で180億円のコスト削減を実施した。今期はさらに140億円のコスト削減を計画している。
 鉄道運輸収入はコロナ以前の19年度と比較して近距離が63%、中距離が33%に落ち込んでいる。
 許しがたいのは、大赤字になった前期決算でも、株主への配当はコロナ以前と同水準を維持したことだ。矛盾の一切を労働者と住民に押し付けて経営と株主はぼろもうけしているのだ。

災害に便乗し廃線

 JR九州はコロナ禍も奇貨として徹底的な要員削減に突き進もうとしている。
 3月のダイヤ改定では、乗客が増加している筑肥(ちくひ)線にすらワンマン運転を導入した。香椎(かしい)線には「自動運転」を導入し、将来的には免許を持たない「係員」を運転台に乗せることにより運転士の削減に踏み切ろうとしている。
 また、毎年のように続く豪雨などの自然災害に「これ幸い」と便乗し、復旧を放棄して、「不採算路線だから」と地元自治体に廃線を迫っている。日田彦山(ひたひこさん)線はBRT(バス高速輸送システム)化のための工事が始まり、長崎新幹線の並行在来線となる長崎本線の肥前山口―諫早(いさはや)間は、上下分離の申請が国土交通相に出された。上下分離とは、鉄道の施設を自治体が保有し、列車の運行をJRが請け負うものだ。施設の修繕費などは自治体に押し付けられる。
 さらにJR九州は、日南線廃止に向けた動きを強めている。特急列車「ひゅうが」「にちりん」で車掌廃止の「完全ワンマン化」がすでに導入され、運行本数削減が続いてきた。こうした要員削減の中、9月21日には日南線の青島駅で快速列車が1時間も早く出発して乗客を置き去りにした。9月の台風14号による大規模な土砂崩れも、1カ月近く放置したままだ。
 乗客が半減している新幹線は、佐賀県内の走行ルートも決まらないまま長崎新幹線が着工されるなど、ますます破綻を深めている。
 JR九州の「黒字化」とは、破綻を塗り隠すために破綻を重ね、奈落の底へと突き進む過程だ。行きつく先は徹底的な要員削減と大合理化、改憲と戦争だ。

戦時動員が全面化

 9月15日から11月末まで続く陸自大演習では、民間フェリーや陸自車両の一般道走行と並び、JR貨物が自衛隊輸送を担っている。昨年4月にJR貨物は鳥栖(とす)貨物ターミナル駅などで演習時に装備を輸送する契約を自衛隊と結んだが、いよいよ全面的な戦時動員が発動されつつある。
 今こそ闘う労働組合の旗をJR職場に打ち立てる時だ。改憲と労組破壊に絶対反対を貫いてきた国鉄決戦の地平は今こそ生きる。動労総連合・九州の組織拡大を実現し、JR資本を打倒しよう。
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