焦点 米英豪「オーカス」 中国侵略戦争狙う核軍事同盟

週刊『前進』04頁(3216号03面03)(2021/10/25)


焦点
 米英豪「オーカス」
 中国侵略戦争狙う核軍事同盟


 アメリカ帝国主義・バイデン政権は「インド太平洋地域における新たな安全保障協力の枠組み」として、米英豪3カ国による「AUKUS(オーカス)」の発足を9月15日に公式に発表した。米日豪印4カ国による「QUAD(クアッド)」が表向きには軍事同盟ではないと称しているのに対し、オーカスは軍事的性格を公然と表明し、米英による豪州への原子力潜水艦技術の供与を発表した。

NPT体制を自ら破壊

 米国が原潜技術を英以外の国に提供するのは史上初となる。他方で、2016年以来豪海軍と次世代潜水艦の共同開発計画を進めていたフランスは、これにより契約を一方的に破棄されたため、米豪に激しく抗議している。
 何より重大なことは、米帝が今回の原潜技術の供与をもって、これまでの核不拡散条約(NPT)体制の一部を自ら破壊し、中国と対立する国への核技術転移に踏み込んだことである。米バイデン政権は、もはや従来のNPTの枠組みにとらわれず、中国侵略戦争に向けた新たな「核軍事同盟」の構築に乗り出したのだ。中国スターリン主義・習近平政権はこれに危機感を募らせ、自らも核戦力の強化を急いでいる。
 そして日本帝国主義もまた、原潜保有国そして核武装国へのし上がろうと必死になっている。自民党幹事長・甘利明は老朽原発の建て替えに向けて、開発中の「小型モジュール炉」の実用化を急げと主張するが、その狙いは原発政策の維持と同時に小型原子炉を搭載した原潜の開発・保有にある。
 このようにオーカスの発足は、インド太平洋地域にかつてない核軍拡競争をもたらしつつある。

「経済安保戦略」の展開

 オーカスを見る上で、核軍事同盟としての性格に加えて今一つ重要なのが「経済安全保障戦略」としての側面である。オーカス発足に伴い米英豪の3首脳が行ったオンライン会見では、中国への対抗を念頭に「サイバー、人工知能、量子技術など最先端の技術の分野でも協力する」と発表された。今後、米英豪で軍事転用可能な先端技術の開発・実用化を進めつつ、半導体などのサプライチェーンの構築も進めるものとみられる。
 米バイデン政権による同盟国間での経済安保戦略が本格化したのは4月の日米首脳会談からだ。共同声明では「半導体を含むサプライチェーンの連携」や、高速通信規格5Gのインフラ整備について「信頼に足る事業者に依拠すること」などが明記された。これらの分野で中国企業を排除すること、あるいは中国との戦争に備えて企業間での経済協力関係を断ち切ることなどが念頭にある。
 もともと先端技術分野で欧米や中国に大きく遅れた日帝は、これを巻き返そうと経済安保戦略の確立を急いできた。17年に結成された「ルール形成戦略議員連盟」は19年3月、「国家経済会議(日本版NEC)」の創設を求める提言書を発表したが、この議員連盟の発起人であり現在も会長を務めるのが甘利だ。「『経済安全保障戦略策定』に向けて」と題する提言書を昨年12月に出した「新国際秩序創造戦略本部」の本部長と座長もそれぞれ岸田と甘利である。
 岸田政権の成立の背後にあるのは、中国侵略戦争とそのための改憲・大軍拡そして経済安保戦略の確立という、日帝支配階級の延命をかけた必死の策動にほかならない。岸田を打倒し、切迫する中国侵略戦争を絶対に阻止しよう。
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