アフガン敗戦と米階級闘争 支配体制覆す闘いが始まった

週刊『前進』04頁(3216号04面01)(2021/10/25)


アフガン敗戦と米階級闘争
 支配体制覆す闘いが始まった

(写真 ストライキに立ち上がったセント・ヴィンセント病院の看護師たち【9月7日 マサチューセッツ州】)

 アメリカ帝国主義はアフガニスタン戦争で大敗北を喫した。約40カ国を巻き込み、20年にわたって行われた侵略戦争での敗北は米帝の軍事的威信を失墜させ、全世界の労働者人民の価値観を一変させた。米帝による世界支配体制の崩壊がさらに加速していくことは明らかだ。特にアメリカ労働者人民は今、この支配階級の破綻をつき「ストライキの10月」といわれる闘いの高揚をつくり出している。

「対テロ」掲げ戦争に突入

 米軍のアフガニスタン侵攻は2001年10月7日に開始された。これは、同年9月11日にニューヨークのワールドトレードセンターへの航空機突入・ビル崩壊で多くの犠牲者が出たことへの衝撃を利用し、「テロに対する自衛」と銘打って行われた。しかし、9・11から開戦まではわずか1カ月足らずである。ブッシュ政権は、はるか前から戦争を求めていたのだ。

大統領が全権掌握

 9・11後、ブッシュは非常事態宣言を発し、全米の航空機離着陸禁止など広範な禁止措置を実施した。そして連邦議会を包囲する形で軍を配備し、その圧力の下で次々に非常立法を強行していった。特に重大なのは、9月18日成立の軍事力行使権限法(AUMF)と10月26日成立の愛国者法だ。AUMFは連邦議会の承認なしに大統領に開戦権限を与えるもので、その後のオバマ政権によるシリア爆撃、リビア爆撃など全てで適用された。
 こうした中で、あらゆる既成の「良心的勢力」が戦争推進に加担していった。連邦議会でAUMFに反対したのはILWU(国際港湾倉庫労組)の拠点・カリフォルニア州オークランドを選挙区とするバーバラ・リーただ一人だった。後に16年の大統領選挙の時に登場し「社会主義」「政治革命」を掲げて一部の「左翼」にもてはやされたバーニー・サンダースも他のリベラルも皆、賛成した。

大弾圧法=愛国者法

 さらに愛国者法は、移民、外国人に対する排外主義をあおり、それをテコにして権利章典(憲法修正第1〜10条)で定められた基本的権利を公然と破壊するものだ。罪刑法定主義、無罪推定原則、適正な手続きで裁判を受ける権利をはじめとする近代刑法の原則を全て破壊したのだ。
 これはいわゆる「アメリカ民主主義」の建前すら否定し、米社会全体を軍事体制に転換する役割を果たした。02年のILWUの労働協約闘争に対しても、政権自ら「国益に反するテロ行為」として攻撃した。BLM運動を通じて暴かれた警察の軍事化や入管弾圧の激化も進められた。

国内労働運動の圧殺狙う

 なぜ、米帝国主義はアフガニスタン戦争に突入する必要があったのか。大きな理由は、中東石油支配の崩壊的危機への巻き返しであり、いま一つは対中国戦略だ。特に1990年代以来、国防総省の戦略文書は、中国が米国の競争相手として台頭することをいかに抑えるかを軸に論じている。90年代は「地域的に米国と同等な競争相手」を抑えるということだったが、2000年代には「世界的に米国と同等な競争相手としての台頭」という見方へと変えていっている。
 イランと中国の間に位置するアフガニスタンは、この米軍戦略の要なのだ。

戦闘的闘いの発展

 もう一つは、戦争動員=挙国一致体制によって国内階級闘争を圧殺するということだった。
 1980年代のレーガン反革命の下で苦闘を強いられてきたアメリカ労働運動は、90年代後半に既成労組幹部の支配を突き破った。
 最大級の巨大労組、チームスターズ(トラック運転手などを組織)では90年代初めに左派が執行部を奪取。97年には世界最大の小荷物輸送会社UPSでストを組織し、非正規職の正規職化をかちとる勝利をおさめた。労働条件を守るためにも正規・非正規の差別分断を廃止すべきだとして正規職労働者が先頭に立ち、非正規職撤廃を最優先課題にしたのだ。また、全米最大の医療労組であるCNA(カリフォルニア看護師労組)でも左派が勝利した。
 ILWUは、99年のシアトルでの世界貿易機関(WTO)会議反対闘争の時、全港湾を封鎖して闘った。この時、USW(鉄鋼労組)は警察機動隊との激突に備えて実戦的な訓練を行った。そして5〜10万人規模の大動員と暴力的激突でWTO会議は粉砕された。
 こうした戦闘的な動きの中で、帝国主義労働運動であるAFL―CIO(米労働総同盟・産別会議)本部の幹部さえデモに参加せざるを得なくなった。新自由主義のグローバル化に対する次の世界的な闘いは首都ワシントンで2001年9月に設定され、シアトル以上の規模と激しさになることが確実視されていた。
 だが公式指導部は、9・11を受けてワシントンでの闘争を中止してしまった。これこそ、ブッシュ政権の狙いだった。
 また、00〜01年にはカリフォルニア州で電力価格の暴騰や大規模停電が相次いだ。同州では電力自由化が実施された結果として電力市場への投機、不法操作、買い占めによる電力価格暴騰や大停電が起こった。そして「先進的な電子取引」によって電力市場をリードしていたエンロン社が破産した。これは当時、米史上最大の破産となった。
 80年代以来、労働者人民の生活と権利を破壊してきた新自由主義の破綻が深刻な政治危機をもたらしていた。この電力危機への怒りなど、中間諸階層も含んだ広範な人民の闘いを抑え込むためにも支配者層は戦争を必要としていたのだ。

反戦闘争で弾圧打ち破る

 しかし、多くの勢力が弾圧を恐れず反戦闘争に決起した。反戦闘争を通じて、労働組合も愛国者法体制を打ち破っていった。
 アメリカ・全世界の反戦デモへの参加者はベトナム戦争時を超え、2千万人に達した。国内でも沖縄・横須賀など海外の基地でも、デモコールやビラまきに包まれ、反戦の立場に獲得される兵士も増えた。
 ILWUの現場労働者は、地域の支援団体と協力して軍需物資輸送を拒否する闘いを粘り強く進め、08年には西海岸の全港湾を封鎖する闘いにまで上り詰めた。03年には、USLAW(米反戦労組連合)が、多くの大労組も巻き込んで結成された。
 UTLA(ロサンゼルス統一教組)の現書記長アーリーン・イノウエさんは、高校での募兵活動に反対する活動を行い、全米に広げていった。「貧しくても米軍に入れば奨学金がもらえて大学に行ける」などのウソや、女性兵士への戦場での暴行の実態が暴かれ、ただでさえ少なくなっていた米軍の募兵に応じる若者がますます減少した。
 そしてILWUの現場労組活動家は03年、軍需物資輸送拒否のストライキを闘った動労千葉と知り合い、同年から11月集会に参加するようになった。UTLAのアーリーン・イノウエさんらは動労千葉の闘いと日本の教育労働者の「日の丸・君が代」不起立の闘いを知り、07年から11月集会への参加を始めた。日米韓3カ国の労働者の連帯こそ、戦争を止める力だ。

歴史的なストの波

 そして今、1970年代以来最大のストの波が生まれている。
 マサチューセッツ州ウースターの病院では、看護師労組が職場の安全を求めて3月8日以来ストを続けている。数十年来、最長の病院ストだ。CNAは10月9日、巨大病院チェーンであるカイザーの21病院で要員確保・職場の安全を求めて2万人のストに突入した。CNAとその全米組織NNUは、「皆保険制度」「軍事費を医療に回せ!」を掲げて闘っている。
 映画・テレビ制作者の労働者の組合IATSEが6万人のストを構えたことも大きな社会的影響を与えた。また、農業機械メーカー、ジョン・ディア社の労働者は、UAW(全米自動車労組)本部が進めた労働協約妥結案を否決しストを続けている。これまでストの経験がほとんどないBCTGM(製パン・製菓・タバコ・製粉労組)も、ナビスコの製菓工場やケロッグのシリアル工場などで相次いでストに入っている。
 闘うアメリカ労働者と団結し、中国侵略戦争=核戦争を絶対に止めよう。
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