コロナ下で全米覆うストの波 「全労働者のために闘う」

週刊『前進』04頁(3221号03面01)(2021/11/29)


コロナ下で全米覆うストの波
 「全労働者のために闘う」

(写真 4月1日以来、7カ月に及ぶストライキを継続しているアラバマ州の炭鉱労働者たち。家族をはじめとする支援者が闘いを支えている)

(写真 トラが「俺は欲張りだ」。ケロッグ工場前でピケ【10月4日 ミシガン州】)


 アメリカでは現在、歴史的なストライキ闘争が全土を覆っている。医療、教育、金属、鉱山、食品加工などの現場で労働者が自己解放的に立ち上がり、新自由主義の大崩壊の中で労働組合の団結を復権させつつある。この基盤には何よりも、闘う労働組合をよみがえらせてストを実現してきた教育労働者の存在がある。米労働者の闘いに学び、日本でもこれに続こう。

産別や地域を問わず激発

 アメリカの各地で様々な産業の労働者が、賃金や働く環境の改善を求めてストライキを続けている。今年に入ってから少なくとも200を超える組合がストに立ち、うち15件は千人以上が参加する大規模ストだ。スト権投票で高い得票率を獲得し、準備に入っている労組も多くある。
 世界最大の農業機械メーカー、ジョン・ディア社の組合員1万人は、上部団体の全米自動車労働組合(UAW)が会社側との交渉で暫定合意した協定を2回も否決し、5週間に及ぶストを闘いぬいた。
 菓子メーカーのナビスコでも労働者千人が40日間のスト、フリトレーの労働者600人は19日間のストを貫徹し、会社側から大きな譲歩をかちとって職場に復帰した。ケロッグの工場労働者1400人は、2層の賃金・福利厚生制度の廃止を求め、スト突入から1カ月半を過ぎた現在もストを続行中だ。
 全米鉱山労組(UMWA)の千人を超える炭鉱労働者は、公平な賃金と休暇手当、医療保険と年金の復活を求めて、今年4月から今世紀最長のストを展開している。
 ハリウッドで働く製作スタッフや技術者らが所属する労働組合でも、6万人を超える労働者がストを構えた。しかし、スト突入の前夜に暫定合意の賛否投票でわずか50・3%の賛成票によって回避され、米国内最大の民間企業のストは実現しなかった。
 カリフォルニア州とオレゴン州の巨大病院カイザー・パーマネンテの看護師と医療労働者3万人が、新入社員の賃金を既存の社員よりも低くする2層の賃金・福利厚生制度に反対してスト権投票を行い、圧倒的多数でスト権を確立した。11月15日にスト突入を決めていたが、暫定合意が承認され回避された。

分断を狙う2層制に怒り

 コロナのパンデミックで格差や貧困などの不平等はさらに深刻になり、労働者の置かれている状況はますます悪化している。労働者が自身の労働のあり方を再評価し、雇用主に対する見方も変わってきた。この間のストは単に賃上げや労働条件の改善を要求するだけでなく、労働者として尊厳を取り戻し、人間らしく生きるために必要な労働環境を獲得する闘いとして開始されている。
 多くの労組の要求項目には、同じ職場で働く労働者の平等性・公平性、そして賃金や福利厚生を2段階に分ける2層制反対が盛り込まれた。半年以上もストを継続している炭鉱労働者は、組合から支給される毎月のスト基金が通常の賃金の半分にも満たず、苦しい生活をやり繰りしながらも闘いを放棄せずに、「私たちはアメリカのすべての労働者のために闘っている」と、誇らしげに語った。
 あの悪名高いアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL―CIO)でさえ、「アメリカ人の74%がストライキ中の労働者を支持! あなたはその一人ですか」とウェブサイトで訴えた。実際に、コミュニティーの人々や地域の他労組は、ストに立つ労働者を支持し、食料や暖をとるための手段を提供している。今も妥協せずにストに立ち続けるケロッグの労働者は、「コミュニティーは本当に協力的で、地元の組合もみんな私たちの闘いを助けてくれる」と語った。

教育労働者の勝利の足跡

 アメリカでは今、労働運動がこれまでになく盛り上がっている。その先鞭(せんべん)をつけたのが教育労働者たちだ。2012年9月、シカゴ教員組合(CTU)の2万6千人の組合員が、学校大量閉鎖と民営化に反対し、保護者や生徒、コミュニティーの人々を巻き込んだ7日間のストを貫徹した。闘う労働組合をよみがえらせたCTUのストに、全米の教育労働者は大きな衝撃を受けた。
 その後18年にウェストバージニア州で始まった教育労働者のストは、燎原(りょうげん)の火のように近隣の州へと広がった。これらの州では、組合組織化を阻むために「労組加入をしない権利」を労働者に認める「働く権利法」が導入されていたが、「スト=違法=解雇」という恫喝にもひるまず、次々とランク&ファイル(現場)の組合員たちが立ち上がった。
 カリフォルニア州のロサンゼルス統一教組(UTLA)では14年、ストのできる組合づくりをめざして闘う潮流「ユニオンパワー」が執行部を丸ごと獲得した。「団結」を最大の目標に掲げ、「一人ではできないことも、みんなで固く団結すれば成し遂げられる」と、個々の組合員との信頼関係を築く努力に全力を傾けた。
 7人の執行委員が先頭に立って、学区の900以上ある公立学校を頻繁に訪れ、組合員との直接対話を重ねた。地道で王道の組織化に5年の年月をかけ、組合員100%の力でコミュニティーを巻き込み、19年1月、クラスの人数削減やすべての学校への職員増員などを掲げ、7万人を街頭に結集してストライキに大勝利した。

労働者階級が輝く時代がやってきた

 「団結を固めしっかりとした組織のもとで、明確な戦略を立てれば必ず勝てる。労働者階級にとって、『もう我慢の限界』という瞬間が必ず訪れる。私たちが決起して反撃できたのだから、誰でも同じことができる」と、闘いを終えたアリゾナ州の教師たちは語った。ストの先頭で闘った女性教師たちは、「働く権利法」を破ってでもストライキをやって闘うべきだと示し、「資本主義は教師を必要とするが、教師は資本主義を必要としない」と実感したという。
 「私たちのストライキは、アメリカの労働組合全般に、現状維持ではだめだという教訓を残しました。勇気を奮い立たせて、ストライキに立つ時がきました。そうしなければ、現状の経済的不平等や格差の中で、労働者階級はもう生きてはいけないからです。今がその時です」と、UTLA書記長のアーリーン・イノウエさんは語っている。「私たちには力がある、だから勝利できると、人々は気づいたはずです。私たちが輝く時代がやってきました」
(高村涼子)

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