「業務融合化」叫ぶJR 労組破壊と大合理化粉砕を

週刊『前進』04頁(3222号02面01)(2021/12/06)


「業務融合化」叫ぶJR
 労組破壊と大合理化粉砕を


 JRは国鉄分割・民営化で労組破壊を強行し新自由主義の攻撃に道を開いた。そのJRが今また「労組なき社会」づくりの最先頭に立っている。労組をつぶした上でJRが狙っているのは、全労働者を非正規職にし、職種の区分さえなくして労働者を好きなように使い回すことだ。

職名も職種も廃止する極限的な攻撃

 今年5月、JR東日本は「現業機関における柔軟な働き方の実現について」と題する提案を出した。現業機関では職名をなくし、職種の区分もなくして、一人の労働者にあらゆる業務を掛け持ちで行わせるという内容だ。運転士が車掌や駅員の仕事も兼ね、エキナカ店舗の商品の出し入れや管理職としてのデスクワークもすることが「業務融合化」として打ち出された。携わる業務は日ごとに変わることも、1日のうち時間単位で変わることもある。
 運転士や車掌の業務は、他の仕事の片手間に行えるものでは断じてない。こんなことをしたら安全は必ず崩壊する。
 どの産業でも基本的には同じだが、鉄道の場合、それぞれに専門性を持つ各職種が有機的に連携することで、列車の安全運行は保たれてきた。労働者は各業務に精通し、その職責を果たすことを誇りにする。その誇りは、労働者が団結を形成する土台でもある。
 これを打ち砕こうとして、JRは「職種の否定」という極限的な合理化攻撃に踏み込んできた。
 その具体化として、10月末からJR東日本は各支社ごとに「統括センター」「営業統括センター」を新設するという提案を次々と出している(表)。

ワンマン化拡大のダイヤ改悪と一体

 これまでは運転士や車掌は運輸区などに所属し、駅員は駅に所属していた。その業務を融合するために、こうした職場の区分もなくす。運輸区と駅を統合して「統括センター」などを新たに設置し、労働者をそこに所属させる。JRは来年3月のダイヤ改定で、これを実施に移す方針だ。
 「統括センター」の管理エリアはかなり広い。千葉支社が設置を予定する「木更津統括センター」の場合、内房線の長浦〜浜金谷(はまかなや)間と久留里線の全区間が管理エリアに含まれる。ローカル線は大半の駅が無人化され、無人駅は形式上、「拠点駅」の管理下に置かれている。だから「統括センター」の管理エリアも無人駅を含む。「統括センター」所属とされた労働者が実際に勤務する場所は、そのすべての箇所に広がりうる。
 「木更津統括センター」に統合される木更津運輸区は、2013年3月、千葉支社管内で真っ先にワンマン化された久留里線の運転を担当している。その木更津が「業務融合化」の最初の対象にされたのだ。
 今年3月には内房線・外房線・鹿島線がワンマン化された。来年3月のダイヤ改定で、成田線の酒々井(しすい)〜香取(かとり)間にもワンマン運転を導入しようとしている。この攻撃を阻止しよう。

外注化の総破綻が無謀な施策を促進

 「業務融合化」の先にあるのは鉄道業務を全面的に分社化し、分社への転籍を労働者に強いることだ。
 今年6月、JR東日本はグループ会社での副業を認めるという方針を出した。その目的は「社外での多様な業務経験を通じ......新たなサービス・付加価値の創出につなげる」とされている。事実上、労働者に副業が強制されかねない。東労組が業務融合化を認めて妥結した際に出した資料には、休憩時間や仮眠時間中に副業する予想図が描かれている。JRと東労組との間で、こうした議論が行われたということだ。睡眠時間を削って副業しろと、資本は労働者に迫っている。
 この攻撃の背後には、JRが強行してきた業務外注化の全面的な破綻がある。外注先のグループ会社・関連会社は、あまりに賃金が低く労働条件が劣悪で、人員が確保できなくなった。それに加え、エルダー(定年退職後の再雇用)社員として外注先に出向させられていた国鉄採用者が65歳に達し、大量に退職する時期が始まった。JRはもはや鉄道業務を維持できない。
 徹底した駅の外注化は〈駅員→車掌→運転士〉という養成ルートを切断した。その矛盾から「駅員と乗務員の融合」という無謀な施策がひねり出された。これは、外注化されていない唯一の現業であり、労働者の約3割を占める乗務員をターゲットにして、労働者支配のあり方の大転換を狙うものでもある。JRはコロナによる経営危機も逆手にとり、破滅的な攻撃にのめりこんでいる。
 これは新自由主義攻撃の破産をさらに凶暴な新自由主義的手法で突破しようとする典型的なやり方だ。だから必ず矛盾がある。これと闘ってこそ、11・7労働者集会が宣言した「新自由主義を終わらせる労働運動」はつくり出せる。
 国鉄分割・民営化と全面対決してきた1047名解雇撤回闘争も、JRに不当労働行為の責任を取らせる歴史的な決戦に入った。12月17日の解雇撤回訴訟(午後3時45分東京地裁前集合)とその後の裁判報告集会に集まろう。来年3月のダイヤ改定を見据え、国鉄決戦を闘いぬこう。

駅と乗務員区は統合され一つの職場に

名称統合される職場
弘前営業統括センター 弘前駅、五所川原駅
東能代統括センター 東能代駅、東能代運輸区
秋田営業統括センター 秋田駅、土崎駅
横手統括センター 横手駅、横手運輸区
山形統括センター 山形駅、米沢駅、山形運輸区
庄内統括センター 酒田駅、鶴岡駅、酒田運輸区
小海線統括センター 小海線営業所
甲府営業統括センター 甲府駅、竜王駅、日野春駅、小淵沢駅
大月営業統括センター 大月駅、塩山駅
拝島営業統括センター 拝島駅、青梅駅、高麗川駅
八王子営業統括センター 八王子駅、豊田駅、高尾駅
立川営業統括センター 立川駅、西国分寺駅、府中本町駅、東所沢駅
三鷹営業統括センター 三鷹駅、武蔵小金井駅、国分寺駅
木更津統括センター 木更津駅、君津駅、久留里駅、木更津運輸区
根岸営業統括センター 桜木町駅、関内駅、根岸駅、磯子駅
湘南・相模統括センター 藤沢駅、茅ヶ崎駅、平塚駅、橋本駅、海老名駅、茅ヶ崎運輸区、橋本コントロールセンター
小田原・伊豆統括センター 国府津駅、小田原駅、真鶴駅、湯河原駅、熱海駅、伊東駅、熱海運輸区
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