新自由主義と女性の貧困 「生きさせろ!」の決起と階級的労働運動の結合を

発行日:

週刊『前進』04頁(3224号03面02)(2021/12/20)


新自由主義と女性の貧困
 「生きさせろ!」の決起と階級的労働運動の結合を


 〈コロナ×大恐慌〉と戦争の危機が深まる中で、一切の矛盾が集中する女性労働者と労働者家族、女性大衆の中から「生きさせろ」の叫びと女性の根底的解放を求める決起が始まっている。この全世界的な女性の歴史的決起と階級的労働運動との結合を本格的につくりだし、新自由主義を終わらせる闘いに立とう。

コロナで差別分断が激化

 大恐慌下のコロナ感染拡大が2年近くになる。この中で新自由主義の大崩壊の姿が露わになってきた。資本家階級と政府権力者たちは自らが引き起こしている矛盾と破綻がむきだしの階級激突・革命に向かうことに恐れをなし、改憲・戦争に突進するしかない。岸田政権は今や中国への侵略戦争に突進し、防衛費の2倍化、「敵基地攻撃能力」保持などを叫んでいる。そのために労働組合への弾圧、排外主義・差別主義と労働者階級への分断攻撃を画歴史的に強めている。
 新自由主義のもとでは労働者階級人民は生きることができない。コロナ下では女性に社会の矛盾が集中的にあらわれた。非正規職労働者の中でも圧倒的に女性の割合の多い宿泊・飲食業や小売業をはじめとして、あらゆる職場で女性の雇い止めや解雇、離職が50万人も増加した。男性(26万人増)の2倍もの増加だ。特にシングルマザーの完全失業率が3%も増大した。
 非正規職のシングルマザーの家庭では働きたくても働けず、子どもに食べさせるために親の食事を減らした家庭が続出している。無料の食糧配布もこれまでとまったく異なり、子連れの女性が列をなすことが増えた。若い女性の間には、生活が苦しく生理用品を買えない「生理の貧困」が広がっている。
 さらにコロナ下での女性や子ども(女子高生)の自殺者が急増した。それまでも新自由主義による非正規職化と労組解体・団結破壊のもとで、自殺者の数はすでに10年間で30万人を超えるという、戦争での死者にも匹敵する規模に達していた。それがコロナ下で一気に、とりわけ女性に圧倒的に拡大した。女性への性暴力やDV(家庭内暴力)も激増し、暴力の度合いも一層エスカレートし深刻化の一途をたどっている。
 労働者階級の女性を襲うこの恐るべき現実は、昔から続く女性差別・抑圧の単なる延長線上にあるのではない。資本主義の最末期の姿である新自由主義とその破綻のもとで階級的団結が破壊され、今や人と人との最低限の横のつながりさえも奪われて社会全体が崩壊し始めている結果なのだ。この新自由主義を、もはや一刻も早く打倒しなければならない。

労組つぶしと一体の攻撃

 新自由主義は1980年代の中曽根政権による国鉄分割・民営化の大攻撃から始まった。中曽根はこれによって「国労をつぶし、総評をつぶし、社会党をつぶして新しい憲法を制定する」ことが目的だと後に語った。それは、74〜75年恐慌を転機に重大な危機を迎えた資本主義・帝国主義の延命のために、戦後の労働者階級が闘いでかちとってきたものを一掃し、資本に無制限の搾取の自由を与える攻撃だった。同時に日本を再び「戦争のできる国」にするために、最大の戦争反対勢力である労働組合と労働運動の破壊・解体を狙ったのだ。
 この国鉄分割・民営化と表裏一体でしかけられた攻撃が、1985年に制定され86年に施行された男女雇用機会均等法と労働者派遣法だった。均等法は「女性の社会進出」をペテン的に掲げながらその実、資本と政府の最大の狙いは、口先だけの「男女平等」と引き換えに労働基準法の母性保護規定を撤廃し、それを突破口に労基法の大改悪に突き進むところにあった。
 この均等法と、「自由な働き方」を可能にすると美化して導入された派遣法こそ、大量の女性労働者を極度の低賃金、社会保障もない劣悪な非正規職に今日に至るまで縛りつけてきた元凶だ。それは男性の賃金・労働条件をも低く抑え、強労働・強搾取が労働者全体に襲いかかったのだ。
 新自由主義はまた公共の福祉、社会保障も全て資本の金もうけの対象にしていった。行き着く先が「自助・共助・公助」の名で全ては自己責任にされた。
 今日、岸田政権は新自由主義の破綻を開き直り「新しい資本主義」と称して労働者階級人民をさらに犠牲にしようとしている。断じて許すことは出来ない。
 日帝・岸田政権は改憲・戦争に突き進むからこそ、労働組合・労働運動への弾圧と一体で、労働者階級への差別分断支配を一層強化しようとしている。内閣と自民党の中枢にいるのは、戦争推進の極右勢力であると同時に女性への暴言を繰り返してきた連中だ。少子化の原因を「子どもを産まない女性が問題」と言い放った自民党副総裁の麻生太郎。伊藤詩織さんへの性暴力犯罪の加害者の擁護に走った警察庁長官の中村格。シングルマザーに「自己責任」の暴言を浴びせてきた衆院議員の杉田水脈や自民党政調会長の高市早苗などなど。女性の怒りの総決起で岸田政権を打倒しよう。

資本主義倒し女性解放へ

 女性の怒りは今や全社会に渦まいている。2021年コロナ下の職場・地域で闘い、学生を先頭に東京五輪をズタズタにして闘った。そして11・7労働者集会に各地から闘う女性が登場し、社会を根底から変える労働者階級の力を決定的に示した。
 コロナ下の医療崩壊に対する医療福祉労働者、とりわけ女性の決起は全労働者階級に自信と力を与えた。都立病院の独法化・民営化阻止の闘いでも非正規職撤廃の闘いでも、女性労働者が先頭に立ち、地域住民の決起をも生み出した。セクハラ・パワハラ解雇をぶっ飛ばす闘いに決起している仲間たちは、職場や地域で激化する性暴力問題の核心が資本による労働者への分断支配にあることを闘いの中でつかみ、労働運動こそがこの闘いに取り組むことを訴えている。
 さらに、入管闘争をはじめ差別・抑圧・排外主義に対して多くの若い女性・学生が立ち上がっている。基地の島・沖縄でも若いお母さん世代が決起を始めている。福島でも広島でも、反戦・反核・反原発闘争の先頭に女性が決起している。そしてこれは世界同時だ。今や全世界で大量の女性がストライキやデモの中心に躍り出て闘っている。
 そこにあるのは、「生きさせろ!」の切実な叫びとともに、女性を抑圧し続けてきた資本主義社会、階級社会の廃止を求める根源的な叫びだ。この女性の決起と階級的労働運動が結びつくことが、資本の分断支配を打ち破る決定的な力だ。性暴力や家父長制イデオロギーとの闘いもその中でこそ真にかちとられる。2021年の闘いはその一端を示した。2022年、階級的労働運動と女性解放闘争の大前進をともにかちとり、改憲・戦争阻止、新自由主義打倒へ突き進もう。
〔深沢史子〕
このエントリーをはてなブックマークに追加