焦点 核保有5大国声明 軍拡競争で核戦争の危機は深まる

週刊『前進』04頁(3227号03面03)(2022/01/17)


焦点
 核保有5大国声明
 軍拡競争で核戦争の危機は深まる


 1月3日、核兵器を保有する米ロ中英仏の5大国が共同声明を発した。声明は、核保有国間の戦争回避と戦略的リスクの軽減を「最大の責務」とし、「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」と述べている。声明に対し、広島・長崎から「核保有国が自らを正当化するアピールにすぎない」という批判の声が上がっている。被爆者の核廃絶への強い思い、その粘り強い運動の地平をまずしっかりと確認したい。
 核保有5大国声明とは何か?

なぜいま声明が出されたのか? 

 軍縮などが問題になる時は、帝国主義諸国の軍拡競争が激化し、戦争が近づいている時である。彼らは新たな世界戦争に向けて一時的な「息継ぎ」「準備」として「軍縮」を語っているのである。
 1930年に開かれたロンドン海軍軍縮会議は、帝国主義諸国の軍艦保有比率を定め、軍拡競争を規制するとの触れ込みだったが、逆に帝国主義間の軍拡競争と(特に日帝の)中国・アジア侵略戦争への道を開き、太平洋戦争に至った。
 今回の声明も、核戦争の危機が迫り、核保有5大国間の核軍拡競争が激化しているからこそ、出されたのである。

米中ロが核の近代化競争

 実際に今進んでいる事実を見てもこれは明らかだ。米帝・バイデン政権は、オバマ政権が始め、トランプ政権が強化した核の近代化政策を推進している。30年間で1兆㌦(約115兆円)以上を投入し、▽戦略核の3本柱(大陸間弾道ミサイル、戦略爆撃機、潜水艦発射弾道ミサイル)の最新型への更新▽「使いやすい」低出力の小型核弾頭の開発▽極超音速ミサイルの開発▽海洋発射型核巡航ミサイルの開発・配備を進めている。そして、台湾危機を口実にした対中包囲網を日英豪印仏の「同盟諸国」と共に形成し、中国侵略戦争に踏み出そうとしている。
 日帝・岸田政権も、南西諸島へのミサイル配備を米帝と共に進め、「敵基地攻撃」という先制攻撃の「合法化」と核ミサイル保有を画策している。
 中国スターリン主義も、米帝に対抗して▽大陸間弾道ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイルを増強する▽2030年までに核弾頭保有数を少なくとも1千発にする(現在推定350発)▽極超音速中距離ミサイルの開発・配備などの核軍拡・近代化を進めている。これを背景に香港に続き台湾の「統一」を掲げ、台湾への軍事的圧力を強めている。
 核弾頭保有数では最大のロシアも、極超音速ミサイルの開発・配備など核の近代化を進めている。
 イギリスは、核弾頭保有数(現在推定225発)を増やす方針だ。フランスは原発大増設を宣言した。

「自衛」「抑止」とは何か

 またこの声明は、「(核兵器の用途は)自衛目的と侵略の抑止、戦争の回避(に限られるべきである)」として、「自衛のため」の核兵器の使用は禁じていない。だが、戦争も核の使用も常に「自衛」を口実にして行われる。広島、長崎への原爆投下も「日本の侵略戦争を早く終わらせるため」「戦争の犠牲者をこれ以上増やさないため」と正当化された。
 米日帝による中国侵略戦争を阻止しよう。沖縄―日本への中距離核ミサイル配備を絶対に阻止しよう。核廃絶の国際連帯闘争を強めよう。3・11反原発福島行動を成功させよう。
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