放射能汚染水を海に流すな 特別に危険なトリチウム 日帝・岸田と東電を許さない

週刊『前進』04頁(3228号04面01)(2022/01/24)


放射能汚染水を海に流すな
 特別に危険なトリチウム
 日帝・岸田と東電を許さない


 12月28日、日帝・岸田政権は関係閣僚会議を開き、福島第一原発の汚染水を海洋放出して投棄する行動計画を決定した。これは昨年4月13日の菅政権による海洋放出決定を具体化し、来春にも放出を強行しようとするものだ。1月13日には福島で汚染水放出反対の抗議行動が取り組まれた(記事別掲)。福島現地の闘いと固く連帯し、海洋放出を絶対に阻もう。3・11福島に総結集しよう。

漁民・県民の怒り逆なで

 今回決定した「行動計画」の核心は、〝放出するのは安全・安心な「処理水」で、放出しても健康には一切問題がない。仮に被害が生じたとしても、根拠のない「風評被害」にすぎない。魚が売れなければ、300億円の基金で魚を全部買い取るから漁民には損害は生じない。だから文句を言うな〟というものだ。
 ここには労働者・人民と漁民をなめきった三重の偽りがある。
 第一に、放出する汚染水は安全だというが、政府や御用学者が言う「放射能安全」と一体のウソ・デマであるということだ。
 第二に、政府・東電がトリチウムの影響は低いと言い張っても、トリチウム放出による被曝の事実と実害は否定できない。だから多くの漁民と福島県民は怒り、反対しているのだ。
 第三に、トリチウム放出による福島の漁業と漁民の生活破壊に対する政府の回答が〝全量買い取るから経済的被害はないだろう〟という傲慢不遜(ごうまんふそん)な態度だ。漁民をなめるのもいいかげんにしろ。漁民の誇りを踏みにじるこんな暴挙に、漁民の怒りの決起は不可避である。

「汚染水安全」はウソだ

 政府は、放出する汚染水はALPS(アルプス=多核種除去装置)で処理した「処理水」で、健康への影響が低いトリチウム水が若干混じっているだけであり、それを基準値以下に薄めて放出するから問題はないと言う。だがここにも三重のウソがある。
 第一に、福島第一原発の汚染水に含まれているのはトリチウムだけではない。福島第一原発は炉心がメルトダウンした原発だ。そのため汚染水には原発で生じた全ての放射性物質が入り込んでいる。トリチウム以外の放射性物質はALPSで取り除いたというが、実際には「処理済み」と称する汚染水の約70%にはストロンチウム90、ヨウ素129、さらには炭素14などが国の基準値さえ上回っていることが判明している。
 第二に、トリチウムは死亡事故も含め重大な被害を生じさせている。
 まず政府も認めている事実として、かつて時計の文字盤の蛍光塗料としてトリチウムが使われていたが、ヨーロッパにおいて1964年と65年にトリチウムによる被曝で2件の死亡事故が発生している。
 さらに旧ソ連、旧西ドイツ、スイス、イギリスでトリチウムによる被曝事故があり、4人が死亡し、7人が負傷している。
 それ以外にもトリチウムを大量に発生させる加圧水型原発の玄海原発(佐賀県)周辺で白血病の年間死亡率が高くなり、泊原発(北海道)周辺でがんの年間死亡率が高くなったりしている。青森県では六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場でトリチウムが大量に放出されるアクティブ試験を2006年に実施した後の2010年以降、がん死亡率が男女ともに全国でワースト1位になっている。

健康・命を奪う内部被曝

 第三に、トリチウムは他の放射性物質と比べても特別に危険な放射性物質だ。
 なぜトリチウムが特別に危険か。それはトリチウムが水素の一種であり、その大部分が自然界ではトリチウム水という名の放射能を持った危険な水として存在しているからだ。
 水は周知のように水素と酸素からなっている。その水素の一部が「三重水素」という名の放射性物質であるトリチウムに置き換わったら何が生じるか。
 水は人類を含む生命の生存にとって必須不可欠の物質である。人の体重の約60%を占めているほどだ。その水の一部がトリチウム水となって地球環境を循環しながら汚染し続け、生物に取り込まれて地球上の全生命をむしばんでいく。
 さらに生命体を構成するタンパク質や炭水化物などは主要には炭素と水素と酸素などからなる。そのため人体を構成する原子の数だと63%が水素だ。その水素が一部であれ放射能を持つトリチウムに置き換わったらどうなるのか。被曝などの影響は計り知れない。
 このようにして体の一部になったトリチウムは長期間滞留し、細胞やDNAに壊滅的な打撃を与え、遺伝的な影響まで生じさせる。この内部被曝こそが原発や再処理施設周辺で起こっている健康被害の原因ではないのか。
 だから「トリチウム水は体内に取り込まれても10日ほどで尿などとなって排出される」という政府・東電の宣伝は大ウソなのだ。
 トリチウムの影響は軽微だという大ウソで塗り固めた汚染水海洋放出攻撃の背後にあるものは何か。
 1月17日の所信表明演説で中国侵略戦争参戦に向けた軍事外交政策、改憲への踏み切りを宣言した岸田にとって、福島の怒りと闘いの圧殺が、沖縄と同時に最重要課題となっている。
 福島第一原発事故は終わっていない。県の発表だけでも約3万5千人が現在も避難を続けている。福島第一原発の廃炉作業も遅々として進んでいない。汚染水はたまる一方だ。
 このような危機的事態は改憲と戦争に突進する日帝・岸田にとって最大の障害なのだ。その突破をかけ、政府と東電は凶暴な汚染水海洋放出に踏み込んできたのだ。
 トリチウムが特別に危険な放射性物質であることを暴露し、福島とともに全国の労働者・人民、漁民の総決起で汚染水海洋放出を絶対に阻止しよう。3・11福島へ総決起しよう。

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