都立病院条例廃止をとめよう 独法化の狙いは労組破壊 戦時医療への転換許すな

週刊『前進』04頁(3229号02面02)(2022/01/31)


都立病院条例廃止をとめよう
 独法化の狙いは労組破壊
 戦時医療への転換許すな

(写真 昨年11月30日に行われた都議会行動)


 今年7月に都立・公社病院の地方独立行政法人化を狙う小池都知事は、2月16日開会の都議会第1回定例会において、現行の「都立病院条例」を廃止し、独法化を進める次年度予算案を提出しようとしている。昨年10月、コロナ感染爆発下で「東京都立病院機構」の定款を議決したことに続く暴挙だ。戦争政治と資本主義が生み出したコロナ危機を真っ向から否定し、病院民営化をテコに戦争を視野に入れた動員と自己責任・棄民政策である選別医療を労働者に強制しようというのだ。2・16都議会開会日闘争に駆けつけ、都立病院独法化を止めよう。

国鉄決戦引き継ぐ民営化阻止決戦を

 都立病院決戦は、1987年の国鉄分割・民営化と今日まで闘いぬかれる国鉄決戦を引き継ぎ、民営化絶対反対・解雇撤回を職場・地域で貫く闘いだ。
 小池の都立病院独法化は、全国の公立・公的436病院統廃合や「地域医療構想」の名による病床削減攻撃の最先端だ。
 何より、独法化とはあくまで新法人設立であり、都立病院の公務員7千人、公社病院の常勤3千人、加えて双方の非常勤5千人を含め計1・5万人にも及ぶ公務員の解雇、公社解散や雇い止めでの解雇問題を抱えている。しかも、より安価な労働力を求めて絶えず人員の入れ替えを続けなければならない。まさに国鉄・郵政・社会保険庁で引き起こされてきた大量解雇と組合破壊の現実が労働者に襲いかかるのだ。ここに都労連・都庁職労組を破壊する意図が貫かれていることは明らかである。
 20年初頭からのコロナ危機では、医療破壊の現実が真っ先に医療労働者に矛盾を集中させる形で露呈した。この中で、千葉県の船橋二和病院での「医療を社会保障として取り戻す」ストライキが号砲となり、都立病院独法化阻止の大攻防へと発展した。
 東京労組交流センターを中心として各地で署名運動が取り組まれ、独法化反対闘争は職場・地域・患者会へと広がった。昨年末には東京・練馬区の一陽会労組がストライキを決行し、試用期間中の介護労働者への解雇通知を撤回させる画期的勝利を切り開いた。
 闘えば勝てると確信する団結が病院や保健所・自治体の労働者、患者の決起を促し、「労働組合の刷新」に向けた闘いが前進する中で都立病院独法化反対闘争が発展している。

医療・福祉・社会 保障はぎとる暴挙

 都は昨年末から「新たな都立病院」のキャンペーンを始めた。新聞などに独法化を賛美する意見広告を掲載し、同様のパンフレットを各所でばらまいている。「都立病院を廃止するな」という患者の切実な声の広がりに追いつめられながら、あくまで独法化を強行しようとしている。それが都立病院条例の廃止だ。
 都立病院条例は第1条で「都民に対し医療を提供し、医療の向上に寄与する」としている。これは地方自治法が定める「住民の福祉の増進」「公の施設を設ける」という自治体の責任を保障するためのものだ。これを廃止するということは自治体から医療・福祉・社会保障をはぎとるということだ。独法化は地方自治法の枠外であり、二度と「戻す」必要も想定もなくなる。病院条例の廃止は自治体の自滅行為だ。
 実際に、2014年に独法化により設立された大阪市民病院機構では、その一角であった住吉市民病院が4年後の18年に閉鎖された。独法化とは総務省がたきつける自治体の民営化競争であり、病院を守る義務を失わせ、議会で承認されさえすれば売却も可能となる。社会保障と地方自治の解体そのものだ。

医療現場での安全崩壊はさらに加速

 医療内容も大きく変貌する。情報通信技術(ICT)やロボット導入、遠隔医療化とともに、「特定行為」と称する「医師の指示の下」での看護師への医師行為の代替、あるいは「タスクシフト」と呼ぶ事務やコメディカル(各種技師、栄養士など)への「医療行為の分担」が指示され、そのためのリーダー養成、研修が日常化される。
 また「副業解禁」により「地域医療構想」推進のために独法職員と民間会社との恒常的な「双方向人材交流」が始まる。「病院看護師は外でも働け」とばかりに、地域の介護・福祉現場での労働を含めた多業務が強いられる。まさにJRで狙われる「業務融合化」と同じすさまじい合理化・医療破壊攻撃だ。これにより安全崩壊・医療崩壊がいっそう進むことは明らかだ。
 また1月14日付読売新聞は、小池都知事のコロナ対策での定例記者会見を捉えて、「都職員の欠勤が相次いでも住民サービスに影響が出ないよう......3000人規模のバックアップ態勢を構築した」「(交通局や都立病院などで)勤務経験のある都庁本庁舎の職員らを派遣して補充する」と報じた。杉並区も区立図書館3館などを3週間閉館して保健所に職員を派遣すると発表した。いずれも事業継続計画(BCP)という災害時計画の発動だという。
 小池は「社会は止めない!」という標語を掲げ、トップダウン動員を常態化させている。しかし、忙しい現場からは当然にも「できるわけないだろう!」という怒りの声が殺到している。BCP発動自体がコロナ危機に乗じた労組解体攻撃だ。都立病院独法化も、こうしたコロナ危機・資本主義の危機に乗じて都内全域を戦争を想定した有事体制に組み敷く策謀だ。
 中国侵略戦争情勢下で小池は岸田政権と一体で地方自治破壊と労組解体、戦争動員のための有事体制構築攻撃を強め、都立病院独法化=民営化強行にますますのめりこんでいる。

2・16都議会から7月独法化阻止へ

 しかし昨年来、東京労組交流センター医療福祉部会が先頭に立って都内全域で都議会への抗議行動をはじめとする闘いに取り組み、「都立病院をつぶすな!」署名は1万3千筆を超えて集まった。「都立病院条例の廃止に反対!」を明記した第2弾の署名もスタートし、こうした闘いの前進は、小池が簡単には独法化を強行できない力関係をつくり出している。
 首都東京で都立病院独法化を阻止したときに、全国で進む民営化攻撃をはね返す巨大な力が生み出される。戦争絶対反対、民営化絶対反対を貫き、階級的労働運動の力で7月独法化阻止へ攻め上ろう。2・16都議会開会日闘争に駆けつけよう。
(岩崎泰章)

------------------------------------------------------------
地独法と非公務員化
 都立病院独法化は2004年施行の地方独立行政法人法(地独法)に基づくものだ。大学や国立病院系の独法化とは異なり、地独法は水道、軌道、自動車運送、鉄道、電気、ガス、病院、社会福祉事業の経営などを対象に「地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のない」事業(第2条)と分断する。その上で、民間の主体に任せるのではなく地方公共団体が法人を設立して行うと定義。都はこの「関与」を理由に「民営化ではない」と言いくるめるが、実態は逆で、設立法人を含め都が全責任を背負う仕組みであり民営化そのものだ。
 地独法第59条は職員について、特に辞令がない限り法人成立日にその職員となるとし、解雇さえ告げず自動的に非公務員への身分替えを強いる。当該職員労組には「独法化は交渉事項ではない」と意見をはさませず、「任用替え」のように扱う。労働組合については民間と同じ労組法適用だが、地独法第64条では「法人登録の場合は60日以内に登録しないと解散とみなす」とある。これは地方公務員法が定める労働組合が職員団体でなくなったことを想定したものだが、労組にはこうした非連続性が強いられる。地独法の最大の狙いは労働組合破壊だ。

このエントリーをはてなブックマークに追加