新やぐら裁判 「やぐらは私の農地と一体」 市東さんと専門家3人が証言

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週刊『前進』04頁(3229号04面01)(2022/01/31)


新やぐら裁判
 「やぐらは私の農地と一体」
 市東さんと専門家3人が証言

(写真 新やぐら控訴審閉廷後、弁護士会館ロビーで報告集会【1月19日 東京・霞が関】)

(写真 市東さんの農地の一角に建つ三里塚反対同盟の監視やぐら)


 1月19日、東京高裁第2民事部(渡部勇次裁判長)で、新やぐら裁判控訴審の第2回が開かれた。
 この裁判は、市東孝雄さんの天神峰農地に建つ監視やぐらや看板など四つの物件(所有者はいずれも三里塚芝山連合空港反対同盟)について、成田空港会社(NAA)が「収去と土地の明け渡し」を求めて提訴したもの。一昨年8月に一審千葉地裁が不当判決、反対同盟が控訴した。
 この日は午前から夕方までかけて市東さんと3人の専門家の証人調べが行われ、NAAの主張を認めた一審判決が、法手続き的にも法の理念に照らしてもまったく誤りであり覆されるべきものであることを全面的に明らかにした。
 午前10時30分に開廷。最初に市東さんが証言台に立ち、反対同盟顧問弁護団が質問を行った。
 市東さんは、祖父の市太郎さんが1921年頃に成田市天神峰の地で農業を始めた経緯を語り、父・東市さん、自分と100年にわたって耕してきて、「耕作する土は、自分の身体の一部になっている。どこにでもある土とはわけが違う」と自信をもって断言。さらに「空港反対」を掲げた反対同盟の監視やぐら・看板を農地に建てるにあたり、旧地主とは何の問題も生じなかったことを述べた。
 そして市東家に無断・秘密で、空港公団(NAAの前身)が旧地主から農地の底地を「買収した」こと、2003年に新聞に出てそれを初めて知ったことを怒りを込めて語った。「旧地主は平気な顔をして15年も地代を受け取っていました。公団に売ったのが事実なら地代を返すべきです。公団と組んで小作人をペテンにかけたのです」「父は遺言書で農地を絶対に売り渡すなと書いたほどだから、この事実を知っているわけがありません」

NAAの営農破壊許すな

 耕作者に無断で地主が農地を売り渡すことについて、市東さんは「絶対に無効。小作権者の権利を侵害しています。公団でもそのようなことをやったのは後にも先にもないはずです」と語気を強めた。また、転用の見込みもなく農地を15年間もそのままにしていた買収について、「農地法3条に違反し無効」と断言。そして空港公団が「あらゆる意味で強制的手段を用いず話し合いで解決する」と社会的に公言したにもかかわらず、それをNAAが踏みにじっていることを弾劾した。
 最後に市東さんは、「反対同盟が建てた看板ややぐらは、私の有機完全無農薬農業と三里塚産直の会の産直運動と不可分一体のものです。これを強制的に撤去することは自分の農地を取り上げることと同じです。裁判長は撤去を認めない判決を出すよう要請します」と述べた。このゆるぎなく鮮明な訴えに傍聴席から感動と共感の拍手が起きた。
 次に、専修大学教授(憲法学)の内藤光博さんが証言した。内藤さんは、「生存権的財産権」「営農権」が市東さんにはあると解き明かし、さらに抵抗権の行使として「農地を守ることとやぐら・看板による意思表明は一体だ」と論じた。
 3番手として北海道大学教授(民法学)の吉田邦彦さんが証言した。吉田さんは「居住福祉法学」の考えを示し、「住まいは単なる商品ではない」「金銭や金目だけで解決をはかる日本のあり方は諸外国からも立ち後れている」と述べ、「(空港会社は)市東さんの身体の一部をもぎとるようなことでしか将来を語れないのか」と迫った。
 最後に埼玉大学名誉教授(経済学)の鎌倉孝夫さんが証言した。鎌倉さんは、コロナ禍で航空需要が激減し破綻が明白な成田空港の経営実態や将来について分析し、「生存・生活基盤である農業は必要不可欠。農民の耕作破壊は法の名に値しない。一審判決は是正されるべき」と強調した。
 NAA代理人は反対尋問を一切放棄し、卑劣な沈黙を貫いた。
 夕刻、弁護士会館のロビーで簡単な報告集会が行われ、反対同盟、弁護団、証言者、労働者・学生が健闘をたたえあった。最後に反対同盟事務局の伊藤信晴さんが、芝山町の会場貸し出し拒否との闘いの前進を報告した。
 次回期日は3月14日(月)午後2時開廷。最終弁論が行われる。

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