JR北海道の現実―民営化の破産示す 冬季運行体制は大崩壊 生存権奪う廃線相次ぐ

週刊『前進』04頁(3236号02面03)(2022/03/21)


JR北海道の現実―民営化の破産示す
 冬季運行体制は大崩壊
 生存権奪う廃線相次ぐ


 2021年10月〜今年2月のJR北海道の運休本数は1万2795本(JR貨物は含まない)で、この10年間で最大になった。国鉄時代にはなかった規模だ。
 1月2〜5日に374本が運休して帰省Uターンを直撃、11日からの1週間で2598本が運休し、通勤通学はもとより大学入学共通テストにも影響した。さらに1月22日から2月1日に542本、2月4〜12日に3727本が運休、札幌駅発着が3日間不可能になった。2月20〜24日にも2805本が運休、2月23日深夜から翌日未明にかけて新千歳空港に4千人が足止めされ、再び大学受験に影響した。
 日本鉄道史上最大の雪害は1963年(「昭和38年」)1月の「三八豪雪」で、北陸を中心に運休した国鉄の列車は旅客と貨物の計約1万9500本、立ち往生7400両、減収は約30億円に達したという。それ以来、除雪体制の強化が営々と続けられてきた。
 北海道では、1970年3月の「二つ玉低気圧」の影響で、同年3月17日夜から翌朝にかけて列車内で一夜を明かした乗客は全道で約1万人に達したが、それでも同月16〜19日の国鉄の運休は2193本だった。JRになってからは、1996年1月に暴風雪のため2日間で約800本が運休したが、現在の運休本数はこれより格段に多い。
 国鉄とJRでは雪害への構えも運行体制も根本的に違う。国鉄時代は人海戦術が当然で、「三八豪雪」の際は職員はもちろん地方建設局、県職員や消防団などの動員に加え自衛隊員5200人や他地方からの職員の応援などで、国鉄や主要道路の除雪に全力を注ぎ、北海道からはラッセル車が派遣された。国鉄を中心に地域社会全体でインフラを守るのは当たり前だった。
 JRはコスト削減で人力を減らしてきた。しかも運行見通しが甘く、1月中旬は大雪前に線路上に大量の車両を留置して復旧を困難にした。2月下旬は航空会社や空港連絡バスとの連携を考えずに新千歳空港での大量滞留を招いた上、除雪車が故障して運行再開が遅延する見通しも発表せず、利用者の怒りを買った。
 故障した除雪車は導入から27年も経ち老朽化していたことはマスコミでも報じられたが、実は札幌圏に配置されていたのはDE15形ではなく、力が数段劣る排雪モーターカーだった。
 何よりも除雪作業員を季節雇用で済ますという構えなので、今は募集しても人が集まらない。札幌駅のように列車の進路を切り替えるポイントが多いと多数の人手が必要で、大雪が降ると真っ先に機能が止まる。
 JRは沿線利用者の生活の足であることをやめ、路線をどんどん切り捨てている。JR北海道は2016年、10路線13線区を「単独維持困難」とし、うち石勝線の新夕張―夕張間(16・1㌔)、札沼線の北海道医療大学―新十津川間(47・6㌔)、日高線の鵡川(むかわ)―様似(さまに)間(116㌔)をすでに廃止した。被災した日高線は高波対策の護岸工事もせず廃線、台風で被災した根室線の富良野―新得間(81・7㌔)の廃止も今年1月に決まった。2路線とも復旧・維持費を自治体に押し付けようとしたが無理だった。
 今問題になっているのは函館線の長万部(おしゃまんべ)―小樽間。2030年予定の北海道新幹線の札幌延伸でJRから切り離されるが、自治体では経営できない。うち長万部―余市間(120㌔)の新幹線延伸時の廃止が昨年末に決定された。最大の不採算路線は新幹線の新青森―新函館北斗間で、赤字は年100億円近い。札幌延伸で赤字はさらに増大する。廃止されるべきは新幹線だ。
 鉄道の存続は生存権に直結する。国鉄分割・民営化の誤りはマスコミも指摘する。誤りは正さなければならないが、それは鉄道労働者をはじめとした階級的労働運動が、地域住民と団結して成し遂げる課題だ。
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