裁判員制度廃止!6・7集会へ 裁判員制度はいらない! 大運動 呼びかけ人 高山俊吉弁護士

週刊『前進』04頁(3245号04面01)(2022/05/23)


裁判員制度廃止!6・7集会へ
 裁判員制度はいらない! 大運動 呼びかけ人 高山俊吉弁護士

(写真 裁判員制度廃止を求め高山弁護士を先頭に最高裁へデモ【昨年11月19日】)


 沖縄返還協定批准阻止を求めて青年労働者たちが立ち上がった渋谷暴動事件(1971年)。警察機動隊員に対する殺人等の責任を問われ、無罪が争われている大坂正明さんの事件で、今年3月、東京地裁は、この事件を裁判員裁判によって審理することをしないと決めました。
 弁護人は、当初から裁判員裁判で審理することに強く反対していました。その理由は、事件発生から半世紀近くが経ち、関係者は連絡がとれなかったり、記憶がなくなったりしていて真相への肉薄などもともと期待しようもなく、そこに素人を巻き込むのは誤りを幾重にも重ねるものだということでした。裁判所と同じ国家機関である検察官も裁判員裁判で審理することに反対していましたが、その言い分は、被告人などに脅かされるなどして裁判員の裁判所への出頭が危ぶまれたりするので、裁判員裁判は避けるべきだというものでした。対決する両当事者から反対されているのにだんまりを決め込んでいた東京地裁でしたが、起訴から5年経ってようやくこの結論を出したのでした。
 裁判員裁判は、刑事責任を問う裁判手続きに国民を動員し国の秩序を守らせる仕組みです。そして渋谷暴動は、沖縄返還協定の国会承認(批准)阻止への決起を抑えようと厳戒態勢を敷いた機動隊員との対決の中で起きた事件でした。地裁は何としてもこの事件を裁判員裁判で進めたかった。裁判の独立に明確に反することですが、最高裁と時間をかけ綿密に協議したことが容易に想像されます。
 しかし、半世紀前という、職業裁判官も経験したことのない古い事件の審理に裁判員を巻き込もうというもくろみは結局破綻しました。裁判員制度の政治的な目標にかけた期待が突き崩されたことを最高裁は悔しがっていると思います。
 制度実施13年。裁判員裁判の内実は今どのような状況にあるのか。国民の司法に対する理解と支持を強めるために導入したのなら、折々に成果と課題の報告があってよいはずです。しかし、最高裁も法務省も日弁連もそのような姿勢をまったく示さず、お茶を濁す程度のことしか言わない。実際に正確な報告をすれば、裁判員裁判の惨憺(さんたん)たる実情や刑事裁判の崩壊の問題点が満天下にさらされることがわかっているからです。
 漏れてくるのは深刻の極みとも言うべき現場の悲鳴です。導入検討時に最高裁事務総局の要職にあった元裁判官は、自身のその後の裁判員裁判の経験を通して、「率直に言ってこれを獲得したと言えるものはなかった」と言い切りました。東京地裁の現職裁判官たちは、「公判審理を終えて評議に入る段階で、多くの裁判員たちは判断すべき事項に関し意見を言える状態にない」とか「評議の冒頭に裁判官が判断事項や証拠の構造、証拠の内容まで細かく説明しなければ、実質的な意見交換ができない」などと報告しています。これが裁判員裁判の現場の姿です。
 大坂事件が裁判員裁判から除外されたのは、ロシアのウクライナ侵攻開始の直後でした。日本の国会はウクライナ大統領にロシア制裁を求める演説をさせ、参院議長が「命を顧みず祖国のために闘うウクライナ国民に感動する」と述べました。再びの侵略戦争に国民を巻き込もうと狙った政府の野望は、この「除外決定」で足元から打ち砕かれた形です。
 米国はNATOを引き回してロシアとの戦争を拡大させようと執念を燃やし、日本の政府財界はこの動きを利用して対中国侵略戦争に突き進もうと、沖縄の最前線基地化と憲法改悪に全力を集中しています。
 6月7日の集会は、南西諸島の最前線基地化に着目してこれを追い続けているルポライターでフォトグラファーの西村仁美さんをお迎えして、最新の東アジア情勢と裁判員制度の結びつきをみんなで考える大集会にしたいと考えています。世界戦争・核戦争への道を突き進む国策を根本から正したい。このメッセージに関心を寄せる皆さんのご参加を心から呼びかけます。

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阻もう!戦争、変えるな9条、現代の『赤紙』裁判員制度廃止
6・7集会
 6月7日(火)午後6時開場・6時30分開会
 東京・弁護士会館2階講堂クレオ(東京メトロ丸ノ内線霞ケ関駅B1出口すぐ)
 主催 憲法と人権の日弁連をめざす会、裁判員制度はいらない!大運動

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