戦時財政へ歴史的転換 骨太方針で画然とかじ切る 人民の生活破壊し戦争を最優先

週刊『前進』04頁(3249号02面01)(2022/06/20)


戦時財政へ歴史的転換
 骨太方針で画然とかじ切る
 人民の生活破壊し戦争を最優先


 6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2022」が閣議決定された。骨太方針は、ウクライナ戦争と「権威主義的国家」(=中国)によって世界は一変したと叫び、中国侵略戦争のための軍事力の抜本的強化へ全てを注ぎ込む戦時財政へ画然とかじを切った。日本帝国主義の最後的破局への突進だ。

参戦へ国の根本を変える

 経済・財政政策の最重点を示す骨太方針2022は例年と様変わりした。
 冒頭から「我々はこれまでの延長線上にない世界を生きている」と書き始め、全編にわたって何度も「国際秩序の根幹を揺るがすロシアのウクライナ侵略、権威主義的国家による民主主義・自由主義への挑戦」に言及。インド太平洋地域を焦点に「戦略的な外交・安全保障や同志国との連携強化、経済安全保障」の重大性を強調した。
 脚注では5月23日の日米首脳会談での「台湾海峡の平和と安定の重要性の強調」に露骨に触れた。本文で「内外の難局が同時に複合的に押し寄せている」と繰り返すほどの危機にある日帝の存続にとって、中国侵略戦争参戦が最大の重点だと言い放ったに等しい。
 さらにそのための「政策遂行の基盤となる強固で持続可能な経済・財政・社会保障制度の構築」を掲げた。それは「これまでの延長線上にない」戦争遂行のための国家制度、経済・財政・社会の根本的な転換に他ならない。新たな社会保障制度の構築とは戦後制度の解体であり、労働者人民の生活の一切合切が奪われ破壊されて戦争に注ぎ込まれることになる。

5年以内の防衛力抜本的強化を明記

 骨太方針は北大西洋条約機構(NATO)諸国が国防予算を対国内総生産(GDP)比2%以上にしようとしていると強調。ドイツ帝がそのため憲法に相当する基本法を改定し1千億ユーロの特別基金を設立することを脚注で示した。日帝も軍事費の歯止めを外して倍増させるということだ。
 続けて「新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し......防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記。その中身として中国内陸部まで長距離攻撃ができるスタンド・オフ防衛能力をはじめ、宇宙・サイバー・電磁波、無人機、弾薬の確保や防衛生産、装備移転(=兵器輸出)、在日米軍再編に至るまで事細かに列挙した。経済安保とともに、実際に戦争をするための軍事力の抜本的強化だ。

財源は福祉解体・大増税

 骨太方針は政策遂行の財源問題について「危機に対する必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく行い、万全を期す」「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」と断言した。日帝の存続と戦争のためには「財政規律」など制約を全て取り払ってでも突進すると叫んだのだ。
 5月31日、岸田は国会で大軍拡などの財源として「相当な規模の社会保障費削減、増税、国債発行」の三つの選択肢を問われたことに対し、「三つは一体として進めるべき議論だ」と答弁。社会保障費の大削減と大増税、国債増発を否定すらしなかった。
 第2次大戦に際し、日帝は戦費調達のための戦時国債の日銀引き受けを強行し、労働者人民も国債の購入を強いられたが、敗戦と戦後のインフレ(1945年10月から49年4月までに消費者物価指数は約100倍に)で紙くずと化した。国債の日銀引き受けは財政破綻と戦争の歯止めを外すものであるがゆえにこれまで禁じ手とされてきた。その歯止めが取り払われれば、軍事費は10兆円どころか際限なく拡大していく。
 日帝は新自由主義の大崩壊と絶望的危機の中で、同じ過ちを繰り返そうとしている。元首相・安倍晋三は5月9日、「(政府の)1千兆円の借金の半分は日銀に(国債を)買ってもらっている。日銀は政府の子会社なので60年で(返済の)満期が来たら、返さないで借り換えて構わない」と無責任に言い放った。まさに破局への突進だ。
 「戦争だから文句を言うな」というのか。国債増発と福祉解体、大増税、年金減額と医療・介護・社会保険料アップで生活を破壊して戦争に総動員する国家体制への転換を前に、労働者の憤激と階級的覚醒(かくせい)が一気に進む時だ。

新しい資本主義で社会は最後的崩壊

 骨太方針は「難局を単に乗り越えるだけではない成長戦略」として「新しい資本主義の起動」を据えた。危機に乗じた「規制・制度改革」(=規制撤廃)「官民連携投資」「民間の力を活用した社会課題解決」(=全面民営化)「円滑な労働移動」(=解雇自由・総非正規職化)を唱えるが、その帰結は戦争・軍需で「成長」する軍事経済への絶望的転換だ。
 骨太方針、「規制改革実施計画」と一体で閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(実行計画)は、資本主義の歴史を概括して「自由放任主義」とそれに続く戦後の「社会保障を重視する福祉国家」を過去のものとして否定。「新自由主義は、成長の原動力の役割を果たした」が「経済的格差の拡大」「市場の失敗等による多くの弊害も生んだ」として、「新しい資本主義」が「資本主義の歴史上、3回目の大きな転換」だと強弁。「資本主義を超える制度は資本主義でしかあり得ない。新しい資本主義は、もちろん資本主義である」と開き直った。
 しかしそれは新自由主義の極限化でしかなく階級矛盾は限りなく爆発する。新自由主義の大崩壊と労働者階級の反乱が迫る中で、日帝は一切をかけて中国侵略戦争―世界戦争・核戦争へひた走ろうとしている。社会の最後的崩壊と破滅への道だ。プロレタリア世界革命だけが人類の未来を開くことができる。

連合・芳野が関与し推進

 骨太方針と実行計画は、6月7日の経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議(連合会長・芳野友子が出席)の合同会議で決定された。骨太方針と実行計画の策定に芳野自身が関与し加担したのだ。連合幹部の腐敗と堕落は極まった。

産業報国会化阻み労働者の総反乱を

 改憲を主張する国民民主党に続いて、立憲民主党は参院選の公約として「自衛隊と日米同盟を基軸とした責任ある防衛戦略」「着実な防衛力整備」を掲げた。日本共産党は現憲法下の自衛戦争と自衛隊活用を表明。6月12日、勢いづいた自民党政調会長・高市早苗は防衛費10兆円を公言した。参院選とその後はかつてない局面に入る。改憲・戦争をめぐる階級決戦はいよいよ本番を迎える。
 この雪崩打つ戦争翼賛と産業報国会化の動きに労働者の怒りと危機感は満ちている。大軍拡と生活破壊、国家間の戦争=殺し合いに動員させられる労働者に「祖国」などない。日帝支配階級の手先と化した連合本部を倒し戦争絶対反対で闘う階級的労働運動の躍進をかちとろう。5・15沖縄―5・22実力デモの地平を進め、6~7月反戦闘争、8・6広島―8・9長崎に総決起しよう。今夏・今秋を歴史の転換をかけて実力で闘い、11・6労働者集会の大結集へ攻め上ろう。

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骨太方針2022のポイント
「これまでの延長線上にない世界」
・全編で「ロシアによるウクライナ侵略」、「権威主義的国家(=中国)の挑戦」を連呼。
・脚注で5月23日の日米首脳会談での「台湾海峡の平和と安定の重要性の強調」に言及。
戦争遂行のための軍事力の抜本的強化
・「NATO諸国は国防予算を対GDP比2%以上に」と例示し「防衛力を5年以内に抜本的に強化」と明記。中国内陸部まで攻撃できるスタンド・オフ防衛能力や無人機などを列挙。
・経済安全保障の徹底・強化を強調。
財源は社会保障費削減・増税・国債増発
・2023年度予算は「(財源を理由に)政策の選択肢をせばめることはあってはならない」。
・岸田は財源となる社会保障費削減、増税、国債発行の三つの選択肢は「一体として進めるべき議論」と国会答弁(5月31日)。

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