葛西敬之は首切りの主犯 国鉄分割・民営化で社会を壊す

週刊『前進』04頁(3249号02面03)(2022/06/20)


葛西敬之は首切りの主犯
 国鉄分割・民営化で社会を壊す


 JR東海名誉会長の葛西敬之が5月25日に死んだ。葛西は国鉄職員局次長として国鉄分割・民営化を強行し、労働者の首を切った張本人だ。葛西はまた、元首相・安倍の盟友として集団的自衛権の行使を唱え、戦争法制定と改憲の基本構想をつくった。さらに、2011年3・11福島第一原発事故の直後から原発再稼働を強硬に叫んだ極悪人だ。
 1987年4月に行われた国鉄分割・民営化で、国鉄職員の3分の1にあたる20万人が職場を追われた。7628人にJR不採用が通告され、最終的に1047人が解雇された。この過程で200人を超える労働者が自ら命を絶った。国鉄分割・民営化の実行犯・葛西には、労働者の怒りと怨念がまとわりついている。
 国鉄分割・民営化と対決し三十数年に及ぶ解雇撤回闘争を闘い抜く動労千葉・動労総連合は、葛西を首謀者とする解雇の真相をついに暴いた。分割・民営化直前の86年12月、本州JR3社では応募者が定員を下回ることが確実になった。分割・民営化に反対する動労千葉などの組合員も、JRに採用される見通しが出てきた。この状況を反動的に覆したのが、労組絶滅を使命にした葛西だった。
 葛西は87年2月、国鉄総裁室長だった井手正敬(後にJR西日本社長・会長)と連れだってJR設立委員長の斎藤英四郎(当時、経団連会長)を訪れ、「労働運動で処分された者は排除すべきだ」と説得した。斎藤もこれに応じて葛西に不採用基準を作らせた。その不採用基準により、分割・民営化反対のストライキを理由に停職処分を受けていた動労千葉組合員12人が、JR採用候補者名簿から名前を削られ解雇された。不採用基準の策定が不当労働行為になることは、最高裁も認定している。その不当労働行為の主犯は葛西だ。
 1047名解雇撤回闘争はこの事実を暴いて葛西ののど元にやいばを突き付けていた。葛西の死は、その不屈の闘いと執念に追いつめられた結果に他ならない。

地方線廃止が示すJR体制の大破産

 葛西が強行した国鉄分割・民営化は大破産した。JRは本州3社も含め、ローカル線を大規模に廃止しなければ存続できないところに追い込まれている。
 岸田政権が策定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)は、防衛費倍増をはじめ戦時経済への転換を公然と打ち出した。この方針にはリニア中央新幹線の建設促進と「地域公共交通の再構築」も盛り込まれた。「地域公共交通の再構築」とはローカル線の廃止を意味する。中国侵略戦争に一切を集中する国家にとって、地方の住民の生活や生存など、もはや問題にもならないというのだ。
 葛西は尊大極まる口調で中国との対抗を唱えた。だが、今起きている事態は、葛西が夢想した「日本の復活と強大化」に至るプロセスとは全く異なる。新自由主義が大崩壊し、日本帝国主義は戦争に絶望的に突進する以外に存続できなくなったのだ。

最悪の負の遺産はリニア中央新幹線

 JR東海が建設するリニア新幹線は、葛西が残した最悪の負の遺産になろうとしている。静岡県内では着工もできず、完成の見通しは立たない。昨年10月には岐阜県中津川市で労災死亡事故が起き、長野県下伊那郡豊丘村でも労災事故が続発した。日本最大の断層帯がある南アルプスでのトンネル工事が本格化すれば、重大事故は避けられない。
 工事が完成したとしても、リニアはJRで最大の赤字路線になりかねない。それでも資本は浪費というべきリニア建設にしがみついて延命を図る。それは戦時経済化と一体だ。リニアはそれ自体が軍事技術の側面を持つ。
 葛西らの悪行がもたらしたものは社会の全面破壊と戦争だ。反戦闘争を基軸にした階級的労働運動で、この現実に立ち向かおう。7・17国鉄集会に集まり、戦争絶対阻止へ闘おう。
このエントリーをはてなブックマークに追加