歯止めなき大軍拡と戦争の道 安保3文書改定を粉砕しよう

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週刊『前進』04頁(3268号03面01)(2022/11/07)


歯止めなき大軍拡と戦争の道
 安保3文書改定を粉砕しよう


 岸田政権は、「国家安全保障戦略」など安保3文書の年内改定に向けて攻撃を強めている。これは米帝が中国スターリン主義の体制転覆=中国侵略戦争を決断したことに応えて、日帝自身が中国侵略戦争―世界戦争に突き進むための国家戦略、軍事戦略の策定を狙うものである。絶対に許してはならない。今秋、労働者人民の反戦闘争の巨大な爆発で、安保3文書改定を断固粉砕しよう。11・19新宿反戦デモに決起しよう。

米帝の軍事戦略と一体化し中国侵略戦争体制狙う

 ウクライナ戦争、朝鮮半島危機と連動して、米日帝国主義の中国侵略戦争の動きがますます強まっている。米軍はかつてない規模と頻度で日米、米韓合同演習を繰り返し、臨戦態勢を強めている。安保3文書の改定は、このような「すでに戦争が始まった」と言うべき情勢のもとで、日帝・自衛隊が、米帝と共同して中国侵略戦争に突き進むための国家総力戦体制、軍事体制を確立しようとするものである。特に米バイデン政権の「国家安全保障戦略」と一体化し、対中国の国家戦略、軍事戦略を策定することを狙っている。
 その内容は、自民党が4月に岸田首相に提出した「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」からうかがうことができる。
 自民党提言は、これまでの3文書をアメリカの戦略文書体系と整合させて、新たに「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」に改称して策定せよとしている。これは単なる名称変更ではない。従来の「必要最小限度の自衛力」の枠を決めるやり方をやめて、「限度」ではなく、米軍と共に戦争をやって勝つための国家戦略、軍事戦略、軍事力整備計画をつくるべきだ、という考え方への根本的転換である。
 その立場から自民党提言は、中国を「わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の重大な脅威」と位置づけている。そして、「相手領域内への打撃についてはこれまで米国に依存してきた」が、今や「迎撃のみではわが国を防衛しきれない」から「反撃能力(敵基地攻撃能力を改称)を保有」すべきだと提言している。「守り」から「攻め」への転換が、明確に主張されている。これを達成するために「防衛費の対GDP(国内総生産)比2%も念頭に5年以内に防衛力を抜本的に強化」せよと提言している。安保3文書の改定は、この自民党提言をベースに進められている。
 岸田政権は今秋、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」を発足させた。元官僚や財界代表、御用学者などをそろえて2回開かれたこの会合では「有事に備えて、公共インフラの整備・活用、滑走路の延伸や港湾機能の強化を」とか、「防衛産業の育成」「防衛装備品(兵器)をもっと輸出できるようにせよ」などという反動的な主張が噴出している。このような内容が、新たな安保3文書に盛り込まれようとしている。

政治・軍事中枢も対象に「敵基地攻撃能力」を保有

 安保3文書改定の最大の狙いは「敵基地攻撃能力」保有の明記である。具体的には、日本の領域から中国本土を攻撃できる長射程のミサイルを保有することである。
 政府・自民党は、「敵基地攻撃」を「反撃」に名称変更することで「国際法に違反する先制攻撃には当たらない」「専守防衛の枠内だ」などと言っているが、これは大うそである。名称変更の本当の狙いは、攻撃対象をミサイル基地だけでなく「相手国の指揮統制機能等も含むものとする」(自民党提言)ためだ。「日本で言えば都心の防衛省や首相官邸も含む」と自衛隊幹部は言っている。
 早くも3文書改定を先取りした攻撃が強まっている。防衛省は長射程のスタンド・オフ・ミサイルの開発・量産と海外からの購入費用を来年度予算の概算要求に盛り込んだ。既存のミサイル「12式地対艦誘導弾」の射程(約200㌔)を1千㌔程度に伸ばし、艦艇、航空機からも発射できるようにする。南西諸島に配備すれば上海など中国沿岸部を攻撃できる。
 それだけではない。政府が巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診していることが報道された。「トマホーク」は米軍が湾岸戦争(1991年)やイラク戦争(2003年)、シリア空爆(18年)などで発射し、中東の労働者人民を大虐殺してきたミサイルである。射程は1600㌔(地図参照)。日本海に展開するイージス艦から発射すれば、北京も射程内に入る。
 さらに、情報収集のための人工衛星50基、長射程ミサイルを発射できる潜水艦の開発・保有など、これまでの水準をはるかに超える兵器の要求が次々と防衛省から出されている。これらが「防衛計画の大綱」に盛り込まれようとしている。
 政府が「敵基地攻撃能力の保有」に踏み切ることは、このように野放図に軍事力を強化・拡大する道を開く。日帝は、第2次世界大戦での敗北に規定された戦後の「専守防衛」的なあり方では、もはや延命していけなくなった。そこで戦争で危機を突破しようという、帝国主義的な衝動が一挙に噴出し始めたのだ。

軍事費の2倍化で人民の生活を破壊

 安保3文書改定のもう一つの重大な狙いは、軍事費の2倍化である。政府は、23年度の防衛費を6~7兆円程度とし、その後も毎年1兆円程度を上乗せし、27年度に10兆円超まで膨らませることを狙っている(グラフ参照)。改定中期防では、5年間で総額48兆円まで引き上げるとの報道もある。防衛省の来年度予算の概算要求は過去最大の5兆5947億円、このほか金額を明示しない事項要求が約100項目追加された。三菱重工業を始め日帝の兵器産業に巨額のカネが流れ込み、政府・自衛隊と「死の商人」=兵器産業との結合・癒着が一層進む。
 野放図な軍拡は、労働者人民の生活に破壊的な打撃をもたらす。「年間5兆円規模の新規財源を確保する場合、消費税なら2%増税が必要」「防衛費に比べて優先度が低い既存予算の削減も検討されそうだ」と報道されている(10月1日付産経新聞)。軍事費2倍化の攻撃は、消費税などの大増税と社会保障解体、生活破壊となって労働者人民に襲いかかるのだ。

巨大な反戦闘争の爆発で岸田政権を打倒しよう!

 だが、こんな暴挙に労働者人民が屈服することなど断じてありえない。岸田政権に対する労働者人民の怒りと闘いは、すでに激しく爆発し始めている。
 日本の労働者階級は、決して排外主義に屈服していない。昨年の世界価値観調査で、「戦争になったら祖国のために戦うか」との問いにイエスと答えた割合は日本は13・2%、世界79カ国中で最低だった(10月15日付朝日新聞ほか)。30歳未満の青年世代では8・8%である。圧倒的多数の労働者、青年は、戦争に絶対反対なのだ。「ヒロシマ・ナガサキ、オキナワを繰り返すな!」という戦後革命期以来の反戦・反核、改憲反対の意識と闘いは根強いのだ。
 現代の戦争の一切の根源は帝国主義である。何よりも戦後世界体制の基軸国・米帝の歴史的没落、体制崩壊的危機の深刻さが戦争を不可避としている。これに対して中国スターリン主義は、世界の労働者人民に反戦闘争を呼びかけて共に闘うのではなく、反人民的な軍事対抗に走り、世界戦争の危機を一層促進している。労働者階級の国際連帯、反戦闘争の爆発で反帝・反スターリン主義世界革命を成し遂げることこそ、労働者階級の生きる道である。安保3文書改定を粉砕し、米日帝の中国侵略戦争を阻止しよう。

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▼安保3文書 「国家安全保障戦略(NSS)」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」のこと。NSSは政府の外交・軍事政策の基本方針で、日本周辺国の軍事状況を記し、その上で政府がとる軍事政策を記す。2013年の安倍政権下で初めてつくられた。
 「防衛大綱」は、NSSを受けて政府がめざす軍事力の水準を記す。「中期防」は、防衛大綱を受けて5年間の軍事予算の金額と具体的な兵器の数などを定める。毎年の軍事予算は、中期防に基づいて決める。

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