新入生歓迎特集 革命的女性解放闘争を 戦争・新自由主義と対決し 政治と暴力を奪還しよう 革共同中央学生組織委員会

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週刊『前進』04頁(3287号04面01)(2023/03/27)


新入生歓迎特集
 革命的女性解放闘争を
 戦争・新自由主義と対決し
 政治と暴力を奪還しよう
 革共同中央学生組織委員会

(写真 ストライキに突入し、JR千葉運輸区前で抗議行動に立つ動労千葉【3月18日 千葉市】)

はじめに

 今日、巨大な女性の決起が全世界的に沸き起こっている。性暴力被害の告発やフェミサイドへの抗議、イランでのヒジャブ強制に抵抗した少女が虐殺されたことに対する怒り、アメリカやポーランドでの中絶禁止への抵抗は、ストライキや内乱的激突に発展し、社会体制そのものの根底的変革を求める闘いが生み出されている。これまでのフェミニズム運動の延長線ではなく「本当の敵は資本主義だ」と宣言してその打倒・転覆を求める闘いとして展開されていることが決定的だ。
 この日本においても、三里塚強制執行との闘いや右翼・国家権力の度重なる襲撃をはねのけて進撃する洞口朋子杉並区議再選に向けた闘いなど、戦争に反対する実力闘争の先頭に若い女性が立ち、新たな女性の革命的決起が陸続と始まっている。
 日米帝国主義が中国侵略戦争―世界戦争に突き進む中、岸田政権は「異次元の少子化対策」=現代版「産めよ殖やせよ」政策や女性の労働力・兵士としての動員を進めている。帝国主義が戦争という「政治と暴力」に女性動員しようとする今、私たちは労働者階級自身の「政治と暴力」を女性の手に奪還しなければならない。戦時下、女性たちが「国防婦人会」で侵略戦争に協力した道を繰り返すのか、女性たちのデモが口火を切った1917年ロシア革命の道か。我々は後者の道を、真の女性解放・人間解放を実現する共産主義革命・プロレタリア世界革命の道を断固として進もう!

女性への差別・抑圧・暴力の根源=資本主義倒そう

 2020年10月の女性の自殺率が前年比1・8倍になったことが端的に示しているように、コロナパンデミックは新自由主義下の女性がおかれてきた現実を白日のもとにさらした。21年2月の調査では、失業状態にある非正規雇用者の数は男性43万人に対して女性103万人だった。雇用者全体に対する非正規職の割合は、男性22%に対し女性は54%にも上る。コロナ禍で在宅時間が増えたことに伴い、家事・育児・介護といったケア労働負担が女性に集中したことや、家庭内暴力(DV)被害の増加も問題となった。
 女子学生も「妊娠・出産する性」として差別に直面し続けている。2018年には東京医科大、聖マリアンナ医科大などの入試において、女子の点数を一律減点して女子入学者を意図的に抑えていたことが明るみに出た。就活においても、採用予定人数や採用職種が男女で異なるなど、いまだに女性差別は根強い。就職活動中のセクハラによって進路を潰される女子学生も少なくない。

私有財産制の廃止を

 女性への差別・抑圧・暴力が、なぜ社会のあらゆる領域で生み出され続けているのだろうか。リベラル・フェミニズムは、個々人の「無知」や「無理解」、法律や制度上の欠陥が問題だと主張するが、単なる啓蒙や法整備だけで性差別や性暴力をなくすことができるだろうか。
 断じて否だ。なぜなら女性に対する差別・抑圧は、私有財産制のもとでの家族制度を経済的・政治的基礎に再生産されているからだ。女性の真の解放は共産主義革命=私有財産制度の廃止・階級社会の廃絶・全人間の解放と不可分一体だ。マルクスの唯物史観はそのことを徹底的に明らかにした。
 人類の生産力が限られていた原始社会は、一部の人間が富を占有することで他人を支配することができない(その条件のない)無階級社会だった。しかし農耕や牧畜の発展によって生産力が増大し、社会的分業が進むにつれ、全く新しい社会関係がつくり出された。肉体労働に従事してもっぱら生産を担う階級と、家畜や奴隷などの生産手段を所有し管理業務や宗教的儀礼などの肉体を用いない精神労働を行う階級へと社会が分裂していったのだ。ところで、「当時の家族内での分業によれば、食料の調達とそれに必要な労働手段の調達は夫の仕事であり、したがって後者の所有もまた夫に属していた」(エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』)。すなわち夫は「家畜の所有者であり、また……奴隷の所有者でもあった」(同)。
 こうして生産手段(家畜や奴隷)を所有する夫が、自分の子孫へその財産を確実に相続させるために妻の「貞操」を管理する必要が生じ、一夫一妻制家族が確立していったのである。この家族制度は、実際には女性にのみ強制された「一夫一妻制」である。夫の買春や不倫は禁じられない一方で、妻の「姦通(かんつう)」は厳しく禁じられ、「子産み道具」「家内奴隷」にされてきた。ここに有史以来の女性差別の物質的・イデオロギー的基礎がある。この中で家族制度・イデオロギーにそぐわない人々である「独り身」や後継ぎを産めない・産まない女性、さらに現代的にはセクシュアル・マイノリティに対する差別・抑圧も生み出されてきた。
 私有財産の発生と社会的分業の発展は、支配階級にとって「価値のある」生産労働を第一に優先し、そこに生殖や育児といった領域を従属させた。こうして、男女の生理的・自然発生的分業は、社会的分業に従属させられることで、女性差別・抑圧に固定化されるようになった。

帝国主義が分断強化

 資本主義社会において、家族は「最小の経済単位」として労働力再生産の場となり、女性差別・抑圧は最後の完成された姿をもって現れた。女性は将来の労働力商品の提供者として子どもを産み育てる役割を押し付けられるのと同時に、低賃金労働者として狩り出された。
 資本主義が帝国主義段階に移行すると、女性への差別・抑圧は一層激化した。帝国主義はその体制的危機ゆえに労働者民衆の反乱を抑え込もうとし、労働者の一部を買収し、労働者内部に分断を持ち込む。この中で女性差別は巧みに利用され、職場ではセクハラ・パワハラや賃金差別による分断支配が横行している。諸権利を求める民衆の運動もまた買収と分断攻撃を受ける。
 とりわけ日本帝国主義は天皇制のもとで、天皇を家父長として臣民をその赤子に見立てた「家族国家」としての支配構造を確立し、特殊に強大な女性差別・抑圧をつくり出した。戦争の時代には女性に対する抑圧は「国力」のための出産の強制にまで行き着いた。

新自由主義に総屈服した既成政党とフェミニズム

 新自由主義・戦争情勢下で多くの人々が立ち上がっている。これに対して、支配階級はこの労働者民衆の決起を体制の内側に取り込むことに全力を挙げてきた。女性解放は資本主義・帝国主義を打倒する立場に立ち切ることなしには決して実現できない。これまで「平等」や「多様性」の名のもとに労働者の権利が徹底的に破壊されてきた現実がある。
 それを最も典型的に示したのが、日本において国鉄分割・民営化(1987年)、労働者派遣法(1985年)とセットで仕掛けられた「男女雇用機会均等法」制定(1985年)の攻撃だ。中高の教科書などでは「男女共同参画社会基本法」(1999年)と並んで男女平等を実現させた法律であるかのように語られている。しかし現実には、均等法は膨大な女性を「子どもを持つ女性が働きやすい」といううたい文句で不安定・低賃金のパート労働や派遣労働に追い込み、変形労働時間制の導入=8時間労働制の解体を強行し、女子保護規定(時間外・休日労働の制限、深夜労働や危険有害業務の禁止)を次々と撤廃した。その結果、女性労働者が得た「自由と権利」とは、超長時間労働や深夜労働で体がボロボロになるまでこき使われる「自由」であり、正社員の半分以下の低賃金で正社員と同じように多重業務や重労働、残業までも課せられるという「権利」である。
 均等法攻撃は労働者全体が必死の闘いを通してもぎ取ってきた諸権利をすべて剥奪(はくだつ)し、今日に至る総非正規職化と極度の低賃金・過労死・貧困化、労組破壊と無権利化の突破口を開くものだった。しかし当時の日本共産党や日本社会党、女性団体・フェミニズム活動家は全て均等法を男女賃金差別の解消と女性の地位向上にとっての「一歩前進」として制定を推進した。
 このような攻撃の最大のよりどころとなっているのが、日本の労働組合のナショナルセンターである連合の屈服だ。2021年に連合会長に就任した芳野友子は「女性初の連合会長」「女性の期待が大きい」と自ら強調し、女性活躍の代表人格のように振る舞っている。自民党をはじめとする日帝権力中枢でも女性の登用が進められている。新自由主義のもとでは女性を体制の一員にしていくこと(リーン・イン)が女性全体の権利を向上させるものであると大宣伝されているが、ほとんどの女性労働者は困窮を極めている。

「産めよ殖やせよ」

 帝国主義はセクシュアル・マイノリティ運動をも意識的に体制内へ取り込もうとしている。セクシュアル・マイノリティ当該を中心とした性の抑圧への抵抗・闘いの中で「性の多様性」が社会的に重視されるようになり、いまや国連が定めたSDGsの中で「ジェンダー平等」という目標の一環として位置付けられるまでになった。しかしそれは、セクシュアル・マイノリティを差別・抑圧から解放するものでは断じてない。
 戦争情勢の中、米欧帝国主義は有色人種や移民、女性、セクシュアル・マイノリティの「差別撤廃」を掲げながら徴兵を強化し、ホモナショナリズムと呼ばれる潮流はイスラエルによる「ピンクウォッシュ(同性愛を利用したイメージ戦略)」に積極的に加担している。
 戦争絶対反対の立場に貫かれない「反差別」は、最後には「多様性」とは正反対の「産めよ殖やせよ」政策への協力にまで行き着く。
 2022年の年間出生数の概数は1899年に統計を取り始めて以来初めて80万人を割った。帝国主義支配階級にとって、人口問題は労働力と兵力の動員・確保、「国力」そのものに関わる死活的な大問題だ。
 岸田は「少子化は予想を上回るペースで進む極めて危機的な状況にあり、待ったなしの課題である」と露骨に危機感を表し、1月の施政方針演説で「異次元の少子化対策」を打ち出した。この少子化対策予算は大軍拡と一体で、これまで以上に社会保障を徹底的に破壊し、全世代に高負担を強いるものとなる。そもそも子どもを産みたくても産めない、産んでも育てられない今日の社会の現実は、労働者の非正規職化・低賃金化、医療・福祉、介護制度や保育園などの規制緩和、民営化など、岸田ら支配階級が推進する新自由主義が生み出してきたものだ。
 さらに自民党は3月10日の「教育・人材力強化調査会」で、学生時代に奨学金の貸与を受けた人が子どもをもうけた場合、返済額を減免するという提言をまとめた。新自由主義政策のもとで大学の学費は上がり続け、奨学金を受ければ卒業時には数百万円の借金を背負わされる。その現実を一切改善しないままに打ち出されたこの方針は「産む人に対する支援」ではなく「産まない人への罰金」でしかない。
 この「産めよ殖やせよ」政策にも「多様性」がグロテスクに利用されようとしている。岸田政権は生殖補助医療についての会合で、一定の条件の下では代理出産を認めるべきだとする案をまとめた。生殖医療法の改正案に代理出産の合法化を反映させることを狙っている。
 「多様な家族のあり方」や「同性愛者の権利」の美名のもとで発展させられている生殖医療は、戦争のもとでは女性の生殖機能・身体そのものを「子どもを産む機械」「商品」として資源化・商品化し、子どもをもたない選択をした女性や子育てを終えた経産女性にまで国力のために出産を強要していくものになる。

戦争と性暴力は一体

 少子化で人員不足が深刻化する自衛隊への女性の積極的な動員も狙われている。ウクライナ戦争以降、マスメディアでは女性兵士の活躍が大々的に報道され「祖国のために闘う女性」として美化されている。
 その一方で元自衛官・五ノ井里奈さんが告発した自衛隊内での性被害をはじめ、自衛隊内・自衛隊員による女性への暴力は深刻だ。平時にさえ腐敗している帝国主義軍隊では、戦時下には「武器」として敵国市民への性暴力が行われるように、より非人間的な女性差別が引き起こされる。戦争と性暴力が切っても切れない関係にあることは、日本軍軍隊慰安婦制度の史実を見ても明らかだ。ウクライナ戦争で難民となった女性たちは性産業に囲い込まれている。軍事基地と隣り合わせの生活と貧困を強制されてきた沖縄では、米兵による事件・事故が後を絶たない。貧困に付け込んだ自衛隊募兵=「経済的徴兵制」や少女の売買春も問題になっている。
 こうした深刻な事態とは裏腹に、リベラル勢力の側は女性の「自己決定権」を強調することで、女性が性を「自由に」扱うことによって、あたかも女性解放が実現していくかのように主張している。だが、新自由主義と戦争による直接の政治的・経済的圧迫によって自らの性や身体そのものを差し出さなければならない人々が大量に生み出されている現実から切り離した形で「自己決定権」を強調することは、階級社会の搾取・抑圧・差別や帝国主義戦争の現実を隠蔽(いんぺい)する役割を果たす。真の意味での「自己決定権」や性差別・抑圧からの解放は、家族制度=私有財産制度が存続している限り、資本主義・帝国主義を打倒しない限り、実現することはできない。その変革抜きの「自己決定権」の追求は観念論と自己合理化への転落の道である。
 だが例えば労働者の賃上げをはじめとする改良的要求のための闘争には、労働者階級としての自覚と団結を形成するという決定的な意義がある。同様に「性の解放」を求める現実の運動の中には性の抑圧をもたらす社会構造そのものを変革する萌芽があり、その積極的推進と連帯を闘い取らなければならない。その闘いの中で不断に、真の「性の解放」の条件である私有財産制度の廃止、資本主義・帝国主義の打倒を共に闘い取ることを呼びかけていこう。

労働者階級として自己を形成し階級社会の廃絶へ

 人間らしい生き方と家族制度・帝国主義戦争は根本的に相いれない。有史以来、女性に対する差別・抑圧は形を変えながらも生み出され続けてきた。私たちは家族関係や性のあり方を支配階級によって押し付けられ、人間らしい関係から疎外されている。男性も階級社会の中で絶え間ない抑圧を受け、差別者・抑圧者としての自己への転落を強制されている。
 今我々が生きている資本主義社会は資本家階級と労働者階級という二大階級が対立する最後の階級社会だ。共産主義は、搾取―被搾取の階級関係の中で動いてきた全歴史を私有財産制度の廃止をもって転覆し、これまでのすべての時代のイデオロギーとも根底的に決別する。労働者階級は、数千年の歴史をもつあらゆる差別・抑圧を最終的に廃止することができる世界史的な存在だ。
 新自由主義のもとで女性が労働者として狩り出されていくことは、女性に悲惨な現実を強制している一方で、これまで家庭に押し込まれてきた女性が労働者階級として自己を形成して闘っていく条件を生み出した。女性解放は、女性が自らの手に政治を奪還し、反戦・政治闘争の主体として社会の根底的変革に向けたあらゆる課題を自らの課題として闘い切ることによってのみ実現する。私有財産制度を維持したまま女性を「救済対象」として議会や政治家に乞うて改良を重ねることの先に女性解放はありえない。家族との関係、恋愛、セクシュアリティといったあらゆる側面に存在する課題を、社会全体の根底的な変革を勝ち取るための闘いと一体で実践的に突破していこう。
 新入生は全学連に結集し、共に闘おう。
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