23春闘は何を示すか 極限化した労組解体攻撃現れた労働者反乱の予兆

週刊『前進』04頁(3288号02面07)(2023/04/03)


23春闘は何を示すか
 極限化した労組解体攻撃現れた労働者反乱の予兆

労働者の階級意識の一掃を狙う攻撃

 戦時下での23春闘は極めて異様な形になっている。岸田首相は年始に「インフレ率を上回る賃上げ」を企業に求め、これに応じる形で経団連は「賃上げは企業の社会的責務」と表明した。2023年版経営労働政策特別委員会報告でも経団連は、賃金のベースアップ(ベア)について「前向きに検討することが望まれる」と明記した。
 賃金の集中回答日の3月15日を待たずに、多くの大手企業が満額回答、さらには労働組合の要求を上回る回答を出した。これにより、賃上げはあたかも政府や資本が労働者に恩恵的に与えるものであるかのような雰囲気がつくり出されている。これは労働組合の存在意義を抹殺し、労働者から階級的なものの考え方を奪いつくす攻撃だ。
 その象徴が、岸田首相や芳野友子連合会長、十倉雅和経団連会長らが出席して行われた3月15日の政労使会議だ。賃金の集中回答日に政労使会議が開かれること自体、異例だ。どんな御用労組の幹部でも、この日だけは「交渉を重ねて経営から回答を引き出す」自己の「奮闘ぶり」を組合員にアピールすることが、これまでの常だった。だが今年は、政労使が集まって岸田が唱える「構造的な賃上げ」「賃金と物価の好循環」を粛々と確認した。これは、賃金水準も国家が政策として決める戦時総動員体制を思わせるあり方だ。
 そこには労働組合のナショナルセンターとしての連合の存在感はまるでない。戦時下の今春闘で労組解体の攻撃は一段と進んだ。岸田や資本家たちが恩恵としての賃上げを唱えるのは、連合には権利を主張し闘って賃上げを獲得する方針も、その力もないことを見透かしているからだ。
 労働組合が企業や産別を超えて団結し、闘って一律大幅賃上げを資本に強制する春闘本来のあり方を、連合は常に破壊してきた。その行き着いた先は、連合自身の崩壊だった。
 この後には、戦時体制下で労働組合が絶滅されるか、階級的労働運動が根源からよみがえるかの、どちらかの道しかない。労働者階級はまさに歴史の岐路に立っている。

実質的には賃下げ格差もさらに拡大

 資本が労働組合の要求を上回る回答を出せるのは、連合の要求があまりに低いからだ。連合の集約では、定期昇給とベアを合わせた賃上げ率は平均3・76%、30年ぶりの高さだと言う。だがそれは、連合支配下で30年にわたり日本の労働者の賃金が極度に抑えられてきたことの結果だ。
 2月の全国消費者物価指数は前年同月比で3・1%増、電力会社などに補助金を出して光熱費を抑制する政府の政策がなければ、物価上昇率は4・3%になっていた。大手企業の賃上げ水準でもインフレは補えず、実質的には賃下げだ。
 正社員に平均4800円のベアを出した日本郵政グループは、非正規職労働者の賃上げ要求にはゼロ回答で応じた。日本郵政グループ傘下の日本郵便は、下請け企業にコスト上昇分の価格転嫁を認めないことで悪名高い。下請け企業は大企業に収奪されて賃金原資も確保できず、非正規職や下請け企業の労働者は生活できない賃金に縛りつけられ、さらに格差を強いられる。「賃上げなどどこの話か」という怒りが広がる。

世界を覆うストの波は日本にも波及

 だが、今春闘が示したものは、資本の支配が崩壊しているという事実でもある。ますます激化する戦時インフレに対し、全世界で労働者が大幅賃上げを求めて立ち上がっている。日本の労働者も世界で巻き起こる闘いと無縁ではない。
 今春闘では非正規職労働者の春闘ストライキが社会の関心の的になり、医療労働者の全国規模のストが行われた。JRのダイヤ改定に抗議して動労千葉がストに立った3月18日、日本中央競馬会(JRA)でも改悪された賃金体系の撤廃を求めてストが闘われた。
 連合幹部は「ストをしても国民から支持されない」などとうそぶく。だが、社会の意識は確実に変わった。資本の支配が貫徹される職場で、仲間を組織しストができる団結を形成するのは、並大抵のことではない。だが、労働者が意を決してストに立てば、それは圧倒的に支持される。
 支配階級は、日本でもついに労働者が職場から立ち上がろうとしていることにおびえている。日本は帝国主義各国の中で最悪の破綻国家だ。もはや抑えられない恐慌下で、ひとたび労働者が立ち上がれば、支配は直ちに崩壊する。それを察知しているから、岸田政権と資本家たちは「賃上げ」を口にせざるを得ない。連合を崩壊させておきながら、それに代わる労働者支配のあり方を形成できないことも、致命的な弱点だ。
 この中で全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部、全国金属機械労組港合同、動労千葉の3労組は階級的労働運動の復権へ、地をはう闘いを続けている。それが膨大な労働者を束ねる時代が来ようとしている。

関生弾圧の和歌山事件は無罪が確定

 関西生コン支部弾圧では、和歌山広域生コン協組事件の控訴審で大阪高裁が出した武谷新吾書記次長ら3人への逆転無罪判決が確定した。検察は上告断念に追い込まれた。和歌山地裁判決は、暴力団を使って関生支部組合員を脅した和歌山広域生コン協組代表者に対する組合役員の抗議行動を「強要未遂」「威力業務妨害」とした。だが、大阪高裁は、産業別労働組合の関生支部と業界団体の生コン広域協組は「労働関係上の当事者」に当たり、広域協組の代表者に抗議した関生支部の行動は、団結権を守るための正当な活動だと判断した。産業別労働運動の正当性を認めた判決を確定させたのは、大勝利だ。
 これをてこに、湯川裕司委員長に対して出された大津地裁の懲役4年の実刑判決を覆そう。何よりも関西生コン支部のようにストライキを闘える労働組合をよみがえらせよう。
 関生支部をはじめとする3労組の呼びかけに応え、11・19労働者集会を見据えて、戦争を阻止する階級的労働運動を職場からよみがえらせる実践を強めよう。
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