23春闘 実質賃下げ 非正規職は最低賃金水準 連合の崩壊さらに進む

週刊『前進』04頁(3295号02面02)(2023/05/22)


23春闘 実質賃下げ
 非正規職は最低賃金水準
 連合の崩壊さらに進む

(写真 連合メーデーに出席した岸田を会長・芳野が絶賛【4月29日】)

 岸田首相は5月15日に開かれた経済財政諮問会議で、「30年ぶりの高い水準となる賃上げを、賃金と物価の安定的な好循環につなげていく」と発言した。4月29日に東京・代々木公園で行われた連合中央メーデーでも、岸田は「30年ぶりの賃上げのうねりを地方、中小企業へ広げるべく全力を尽くす」とうそぶいた。あたかも自らの手腕で、全労働者に賃上げがもたらされたかのような言い分だ。
 だが、労働者に強いられたのは実質大幅賃下げだ。連合が発表した集計では、平均賃上げ率は定期昇給込みで3・67%で、インフレに追いつかない。「満額回答」だの「組合要求以上の回答」だのとマスコミがもてはやした現象も、ごく一部の大企業に限られる。これも、連合の要求があまりに低いことが原因だ。
 23春闘で資本は、非正規職労働者に賃上げゼロを情け容赦なく突き付けた。非正規職の賃金は法定最低賃金のレベルに固定され、格差はさらに拡大した。アメリカの銀行破綻を機に大恐慌が再燃する中、資本は意識的にこの攻撃をかけてきた。「どんなに物価が上がろうが非正規職労働者の賃金は上げなくていい」ことが通例になれば、労働者の非正規職化はさらに進む。
 この現実を生み出した一方の元凶は連合だ。連合の集計では、資本が回答した非正規職労働者の時給の平均は1102円、東京都の最低賃金の時給1072円をわずかに上回っているだけだ。連合は非正規職労働者のこうした賃金水準を容認し、妥結したのだ。
 連合内の最大の労組は、主にパートなど非正規職労働者を組織するUAゼンセンだ。連合の総人員684万人のうち、約27%の187万人がUAゼンセンに所属する。これだけの組合員を組織する労働組合が、もし仮に「生きていける賃金をよこせ」と本気になって闘えば、日本でも間違いなくゼネスト情勢が生まれていたはずだ。
 だがUAゼンセンは、労働者の反乱を抑え込むための御用労組づくりを資本から請け負ってきた存在だ。資本とユニオンショップ協定(組合員以外は雇用しない協定)を結び、労働者に組合加入を強制することで組合員を増やしてきた。闘う労働組合が結ぶユニオンショップ協定は資本に対する強力な武器になるが、御用組合が結ぶユニオンショップ協定は、労働者の身を縛る鉄鎖にしかならない。
 しかもUAゼンセンは改憲を唱え、徴兵制にも賛成している。これが最大労組になっていることに、日本の労働運動の危機がある。
 23春闘が突き出したのは、連合の歴史的な崩壊だ。闘って資本に賃上げを強制する方針も構えもない連合は、インフレ下で何一つ行動を起こさず、存在意義を自ら失った。後は、文字通りの産業報国会が労働者を支配するか、階級的労働運動が職場からよみがえるかの、どちらかしかない。労働者階級は歴史の岐路に立っている。
 23春闘で岸田と資本は、自身が賃上げを主導するかのように振る舞い、「労働組合はもう必要ない」と描き出そうとした。その最先端に全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への大弾圧とJRの「労組なき社会」化の攻撃がある。

3労組軸に階級的労働運動とり戻せ

 動労千葉はこれと対決し、3月のJRダイヤ改定時にストライキを貫徹した。JR東日本の子会社CTS(千葉鉄道サービス)が4月に強行した非正規職労働者への賃上げゼロの回答にも怒りの抗議行動に立ち、「この悔しさを晴らす道はCTSでの過半数の労働者の組織化だ」と確認して新たな挑戦を開始した。
 関西生コン支部も反転攻勢に出ている。産業別労働組合運動の正当性を認めた和歌山広域生コン協組事件の逆転無罪判決を確定させたのは大勝利だ。労働者階級が歴史的に勝ち取ってきた労働基本権の奪還が再び決戦の焦点になったのだ。
 関西生コン支部、全国金属機械労組港合同、動労千葉の3労組は、11・19労働者集会に向けてのスタートを切った。11月労働者集会勢力は広島G7サミット粉砕決戦の先頭にも立っている。この闘いは階級情勢を一変させ、階級的労働運動をよみがえらせる巨大な力に必ず転じる。11月集会は労働者国際連帯で戦争を阻止する決戦だ。6・18国鉄集会を当面の焦点に、職場と地域に階級的な闘いと組織をつくる意識的な努力を重ね、11月に向かおう。
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