新・開発協力大綱を弾劾する 中国を敵視し「国益」強調

週刊『前進』04頁(3300号04面02)(2023/06/26)


新・開発協力大綱を弾劾する
 中国を敵視し「国益」強調

(写真 G7サミットに対し在日ミャンマー人が日本政府抗議デモ【5月19日 広島市】)

 岸田政権は6月9日、 後進国への政府開発援助(ODA)の方向性を定める「開発協力大綱」を8年ぶりに改定した。日本帝国主義が中国侵略戦争準備・戦時体制構築を進めるなかで、「国際協力」を「戦略」と位置づけ、中国との対決姿勢をむき出しにして「我が国の国益」を繰り返し強調する内容は安保関連文書そのものだ。絶対に許すことはできない。

「ODAは外交の最重要のツール」

 開発協力大綱(以下、新大綱)のサブタイトルは「自由で開かれた世界の持続可能な発展に向けた日本の貢献」だ。本文は「国際社会は歴史的な転換期にあり、複合的危機に直面している」との一文で始まり、「2022年12月に策定された国家安全保障戦略も踏まえ、我が国の外交の最も重要なツールの一つである開発協力を一層効果的・戦略的に活用する」ことが策定の趣旨だと記す。
 「開発協力の目的」は「責任ある主要国としての我が国の責任」として「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」のもとに「開発協力」を行うことが「我が国自身の国益の増進につながる」とし、「世界と日本にとってより望ましい国際環境を創出していく」ことであるという。日本の「国益」とそのための「望ましい国際環境」を得るために「開発協力」を行うという立場を隠そうともしていない。
 以上からも明らかなように、新大綱は「国際貢献」や「人道支援」という建前すら投げ捨てた。今回、(形式上は)相手国からの要請を受けて支援を行ってきた従来の手法をとりやめ、日本政府が支援メニューを提案する「オファー型協力」の強化を目玉として打ち出したのも、日本政府と企業がより直接的に軍事的・経済的利益を得るためだ。「国益」=国家権力と資本の利益を真っ向から押し出し、ODAを文字通り侵略の道具とするものだ。
 新大綱の閣議決定と同日、参院本会議では「国益は人権に優先する」として改悪入管法が強行採決され成立した。帝国主義国家の利益と労働者階級の利益とは1ミリも相いれない。

ミャンマー国軍の支援やめない日帝

 新大綱を貫くのは、経済圏構想「一帯一路」のもとに各国への投資を行う中国をさす「新興ドナー国」への敵意だ。また、策定の背景としてはウクライナ戦争を念頭に「武力の行使による一方的な現状変更を加える行動が生じるなど、自由で開かれた国際秩序……は重大な挑戦にさらされ」ているとする。外務省が新大綱とあわせて公表した資料「対ウクライナODA関連支援」は、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」という岸田の言葉を引用し「G7広島サミットにおいてウクライナへの支援強化を確認」したと大きく打ち出している。
 とりわけ異様なのは、「重点政策」に、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という語をあえて明記したことだ。具体的には「巡視艇供与などで途上国の海洋保安能力を後押しする」ことが検討されているという(4月4日付読売新聞)。「非軍事支援に限る原則は維持」などというのは大うそだ。
 とりわけミャンマーに対しては、日本政府は21年の国軍によるクーデター以降も既存のODA案件を継続し、開発計画を通じて巨額の資金を国軍に供給し続けてきた。今年4月には外務省自身が、ミャンマーにODAの無償協力で供与した船舶2隻が、クーデターを起こし民衆を虐殺している国軍の兵士や武器の輸送に使われたことを認めた。これは氷山の一角に過ぎず、命がけで国軍と戦うミャンマーの人々は一貫して国軍を支える日本政府に激しい怒りをたたきつけてきた。しかし新大綱はそのことに一言も触れず、改善策は一切設けられていない。
 さらに政府は4月、ODAとは別枠で国家安保戦略に基づき「同志国」の抑止力向上のためとして軍に直接無償資金を投入する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」制度を創設。今年度予算で20億円を計上した。武器輸出解禁に向けた動きも進んでいる。新大綱策定はこれらと一体で全面的な軍事援助や武器輸出に道を開く動きだ。国際連帯の闘いで粉砕しよう!
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