汚染水海洋放出即時中止せよ 日帝の狙いは原発推進と核武装 排外主義あおる岸田許すな

週刊『前進』04頁(3310号03面01)(2023/09/11)


汚染水海洋放出即時中止せよ
 日帝の狙いは原発推進と核武装
 排外主義あおる岸田許すな



(写真 汚染水放出が強行された8月24日夜、首相官邸前で改憲・戦争阻止!大行進東京とNAZENが抗議行動を行った)


 日本帝国主義・岸田と東京電力は8月24日、全国・全世界の人民の反対を踏みにじり、漁民との合意も反故(ほご)にして福島第一原発の放射能汚染水海洋放出を強行した。岸田がこれほどの強硬手段に出たのは、アメリカ帝国主義のウクライナ戦争・中国侵略戦争策動と一体で、すでに日帝自身が中国侵略戦争への突入を決断しているからだ。3・11反原発福島行動実行委員会はただちに福島県浪江町で緊急の抗議闘争を呼びかけ、改憲・戦争阻止!大行進とNAZENも全国各地から結集し闘い抜いた。他方で今、政府・マスコミ・野党までが一体化して「汚染水と言うな、処理水だ」と大合唱し、これに異を唱える者は「国賊だ」「中国の手先だ」とばかりの異常・異様な排外主義的大キャンペーンを繰り広げている。白を黒と言いくるめ、デマとバッシングで一切の異論を封殺し、中国への敵意で「世論」を塗りつぶそうとしている。これ自体が中国侵略戦争に向けた労働者階級人民への攻撃そのものだ。だが、今まさに太平洋へ放出されているのは、「処理」によっても除去できない大量の放射性物質を含んだ汚染水以外のなにものでもない。この日帝の国家犯罪を徹底弾劾し、これをごまかす一切のうそとペテンを暴き、9・23大反戦デモで汚染水放出即時中止・岸田打倒の闘いを爆発させよう。

放射能まみれの「処理水」

 岸田政権は「福島第一原発の年間の放射能放出量は22兆ベクレルだが、中国の寧徳原発の2018年の放出実績(約98兆ベクレル)の5分の1程度だ」などと主張し、汚染水放出を正当化しようとしている。だがこれは、福島第一原発汚染水と通常運転中の原発から出る温排水との根本的違いを意図的に無視した暴論だ。
 第一に、福島第一原発から出ているのは事故により核燃料などが溶け落ちてできたデブリに直接触れている高濃度の汚染水であり、通常運転中の原発の温排水とはまったく別物だ。(図)
 通常の原発では、運転に伴い発生したトリチウムを含む放射性物質のほとんどは原子炉圧力容器内の燃料棒の中に閉じ込められる。トリチウムが発生するのは核分裂制御材のホウ素や冷却水に含まれる重水に中性子が当たるなどするためだ。海に流す温排水は核燃料には直接触れず、トリチウム以外に含まれるのは少量のコバルト60などだ。
 対して福島第一原発の約880㌧ともいわれるデブリには、ウランが核分裂した結果として200種類もの放射性物質が含まれている。実測値で毎時500シーベルトもの高線量、数十秒同じ場所にいるだけで確実に死亡するほどの「死の灰」であり、これに水をかけ続けないと再臨界という破滅的事態が起こる。事故から12年以上たっても1㌘のデブリも取り出せず、事故の応急処置が依然として続いている。まさに「福島原発事故は何も終わっていない」のであり、デブリの冷却と流入する地下水により、どれほどの核物質を含むかも分からない汚染水が1日あたり90㌧も生成されているのだ。こんな水を海に流すなど、日本以外のどの国もやっていない。
 第二に、多核種除去装置(ALPS)で処理できるとしている放射性核種62種類すら完全な除去には程遠い。すでに処理済みと称する汚染水タンクの72%にはセシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、イットリウム90、アンチモン125、ルテニウム106、ヨウ素129などが国の基準値を上回って存在することが判明している。炭素14もALPSでは除去できない。これを二次処理と希釈で基準値以下にして放出すると言うが、放射能を流している事実は何も変わらない。タンク内の放射能の総量も不明だ。
 第三に、トリチウム被曝の危険性だ。トリチウムは水爆や核融合炉などの原料であり、その製造法とともに被曝の影響は1950年代から研究が積み重ねられてきた。トリチウム事故で被曝による死者も出ている。トリチウムが体内に取り込まれると一定の割合で「有機結合型トリチウム」となり、重大な内部被曝をもたらす。さらに遺伝情報を担うDNA中の水素とも置き換わるため、DNAを損傷しがんなどの原因となる。「トリチウム安全論」は内部被曝の影響を意図的に無視したペテンだ。
 第四に、政府・東電は、汚染水放出はデブリを取り出して保管する敷地を確保するためだと主張するが、これも真っ赤なうそだ。1㌘のデブリの取り出しすらできず、その展望すら見えないのが現状だ。
 そもそも、東電はコスト優先で数々の事故や自らに都合の悪いデータを隠してきた悪徳企業だ。こんな企業が「ALPSで処理したから安全です」と言っていったい誰が信用するだろうか。またこの東電を監督すると称する日帝自身、福島第一原発事故の時に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報を隠し、福島県民に高線量地域への避難を強いた。そして、年間20㍉シーベルトという放射線管理区域並みの被曝を福島の住民に日々強制しているのだ。
 これらをあいまいにした議論はインチキであることを、声を大にして訴えなければならない。

核・原発と人類は共存できない

 そもそも労働者階級人民の立場は、どの国の原発や核関連施設だろうと、トリチウムを含む一切の放射性物質のいかなる量の排出も許すことはできない、「核と人類は共存できない」ということだ。「中国や他の国もトリチウムを出している」などという問題のすり替えは許されない。
 岸田は「処理水」に含まれる放射性物質は国際原子力機関(IAEA)の認める基準以下だと強調するが、IAEA自体が「核拡散防止」と称して核保有国の核独占を維持するための原子力マフィアそのものである。各国の防護基準への勧告を行う国際放射線防護委員会(ICRP)も同じである。彼らの基準は悪名高い「ALARA(As Low As Reasonably Achievable〔合理的に達成できる限り低く〕)原則」だ。「個人の被曝線量や人数を、経済的・社会的要因を考慮に入れて合理的に達成できる限り低く保つこと」を意味する。結局、原子力産業の利益のために労働者人民を「合理的に」犠牲にしてよいとするものだ。米帝と旧ソ連スターリン主義は、核兵器と原子力開発に支障のない限りでの「規制基準」なるものを設けることで、原子力産業に従事する労働者に被曝を強制し続けてきたのだ。
 福島第一原発のトリチウム放出基準は1㍑あたり6万ベクレルとしているが、この基準は六ケ所村の再処理工場には適用されないという。なぜならば、再処理工場が本格稼働すればなんと1年間に1京8000兆ベクレルもの膨大なトリチウムが発生するためだ。福島第一原発の汚染水海洋放出を強行できなければ、日帝の核武装のための六ケ所村核燃サイクルは稼働できない。
 まさに「放射線被曝の押し付けへの反対は、その源を断つことによって徹底される。核兵器と原発・核燃料サイクルとをなくさない限り現代の主要なヒバクの押し付けを断つことができない」(中川保雄著『放射線被曝の歴史』)のだ。
 「トリチウム安全論」とは、実際には処理が困難だから「安全ということにしよう」というものでしかない。日帝の「非科学的」デマを粉砕し、アジアをはじめ全世界の人民と連帯して汚染水放出中止へ闘い抜こう。

原発は核開発の偽装形態

 岸田が汚染水放出の暴挙を強行したのは、福島原発事故を「終わったこと」にして、再び国家の総力をあげて核・原発政策の推進へ突き進むためである。すなわち、今日の世界戦争下において核技術と核エネルギーを独力で確保することが、日帝の帝国主義としての死命を決する絶対的課題としてあるからである。その先に狙われているのは、米帝との核共有=核ミサイルの配備、新型原子力潜水艦の開発・導入、そして日帝自身の核武装にほかならない。
 加えて、「世界第一」と「第二」の経済大国である米中の間で貿易や投資への規制が次々と強化され、世界経済の分断と分裂・ブロック化が急ピッチで進む中で、これまで主要なエネルギー資源の調達を他国からの輸入に依存してきた日帝=日本資本主義は、今やその根本的な脆弱(ぜいじゃく)性を突きつけられている。しかも戦時下のインフレ、とりわけ資源価格の高騰は深刻だ。だからこそ岸田は核エネルギーの確保に必死になっているのだ。
 経団連会長・十倉雅和は8月27日付日経新聞のインタビューで、原発再稼働の必要性に関して「核エネルギーは人類の英知だ。原子力は日本の特殊性を考えると絶対に要る」「再稼働だけでなく、今はもう少し突っ込んで、核のゴミをほとんど出さない核融合による発電をやらなきゃいけないと強く言っている」と答えた。原発エネルギー、そればかりか実用化のめどなどまるで立たない「核融合発電」などに日本資本主義の活路を求めてすがりつき、そのために核・原発政策の全面的推進を求めているのだ。福島とアジア・世界の人民の反対の声を踏みにじる汚染水放出強行の暴挙は、核エネルギーにすがるほかに延命の道がない日帝の絶望的凶暴化を示している。こんな帝国主義は今すぐ打倒する以外にない。
 何より日帝にとって原発とは、単なるエネルギー戦略ではなく、「平和利用」の名のもとに核軍事力の研究・開発・保有を進めるための偽装形態にほかならない。とりわけ高速増殖炉や再処理工場によって構成される核燃料サイクル関連技術は、核兵器に転用可能な高純度プルトニウムの生産を可能とするものであり、日帝にとって絶対に手放すことのできない「切り札」なのだ。
 そもそも戦後の日帝は、「当面核兵器は保有しない政策をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャル(潜在能力)は常に保持する」(外務省文書「わが国の外交政策大綱」、1969年)ことを国家戦略としてきた。そして「平和利用」と称して原発建設を推し進めつつ、その使用済み核燃料から核兵器級プルトニウムをつくりだすことを追求してきたのである。2011年3・11福島原発事故は、核武装を目的とする日帝の原子力政策が引き起こした人災であり、国家犯罪以外のなにものでもない。
 岸田が中国への排外主義の大宣伝をもって汚染水放出の国家犯罪を全面的に居直る以上、汚染水放出即時中止・全原発廃炉へ闘い抜くためには、中国侵略戦争―世界戦争に突き進む日帝を内乱・革命で打倒する立場に立ちきる以外ない。9・23反戦デモをはじめ今秋反戦闘争の爆発をかちとり、11・19労働者集会へ大結集を実現しよう。

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