EABOの要=オスプレイ墜落 「救難活動」も軍事訓練

週刊『前進』04頁(3323号02面01)(2023/12/11)


EABOの要=オスプレイ墜落
 「救難活動」も軍事訓練



(写真 「救難活動」で奄美空港に派遣された2機のMV22オスプレイ【12月2日 鹿児島県奄美市】)


 11月29日、鹿児島県屋久島沖で米軍のCV22オスプレイが墜落する大事故を起こした。12月6日に米軍は搭乗員8人全員の死亡を認定、オスプレイの事故では最多の死者となった。
 オスプレイは米軍の対中国作戦の要「遠征前進基地作戦」(EABO)における不可欠の輸送機だ。その大事故によって運用が阻害されれば、中国侵略戦争計画そのものが破綻することになる。ゆえに事故直後から米軍と防衛省はなりふりかまわない対応を行った。
 米軍は当初この事故について「計画外の着陸」と説明、防衛省も「パイロットが最後まで(機体を制御しようと)がんばっていたから『不時着水』」としていた。しかし、目撃した多くの住民が「機体が火を噴きながら回転していた」と述べ、沖から約3㌔メートルの所で残骸が見つかるなど隠しきれない事態となり、米軍が「墜落」と発表したことを受けて修正せざるを得なくなった。事故現場周辺では海を封鎖して立ち入りを禁止、屋久島町の安房港を地元漁協に告知もせず無断使用し、事故対応について説明すらしなかった。米国防総省は30日、「事故原因は不明」だとしながら「空軍のCV22オスプレイと海兵隊のMV22オスプレイは使っている部品に違いがある」として「MV22オスプレイの飛行継続」を明言した。「原因不明」ならばどの部品が事故の要因かもわからないはずだ。米軍は12月6日になってようやく、海軍・海兵隊も含めオスプレイ全機の一時飛行停止を発表した。

事故の背景に戦争態勢

 今回の事故の救難活動は、戦時下を思わせるような総動員体制で行われた。捜索活動には米海軍や海上保安庁、海上自衛隊の艦船を使うだけでなく周辺から漁船を借り上げ、漁業者など民間人を動員。2004年、沖縄国際大学に米軍CH53ヘリが墜落した事故では、警察すら立ち入らせずに防護服を着た兵士が機体を回収したが、今回の対応はこれまでの事故対応とは対照的だ。そして12月2日には「救難活動と人員輸送のため」として、MV22オスプレイ2機を奄美大島にある民間空港・奄美空港(鹿児島県)に派遣。事故原因不明の段階で、CV22オスプレイの事故対応に基本構造が同じMV22オスプレイを使ったのだ。戦時において戦闘機が撃墜された場合を想定した「軍事訓練」さながらである。
 今回の事故は、米軍岩国基地(山口県)から米軍嘉手納基地(沖縄県)に向かう訓練の最中に起きた。この間、飛行中の不具合で民間空港にオスプレイの緊急着陸が相次いでいた。9月14日に奄美空港と新石垣空港(沖縄県)にそれぞれ2機ずつ、16日に大分空港に1機、10月19日には徳之島空港(鹿児島県)に1機が緊急着陸した。背後には、中国侵略戦争のために九州各地から沖縄・先島諸島へオスプレイを使った長距離輸送訓練が激増していることがある。今回の事故は、戦争態勢の構築に伴って必然となったのだ。
 オスプレイは現在、米空軍の6機が横田基地(東京都)、米海兵隊の24機が普天間基地(沖縄県)、陸自の14機が木更津駐屯地(千葉県)にあり、計44機が国内に配備されている。だが、米本土などから日本に一時展開している機体については日本への告知義務はないため、実際に国内に何機のオスプレイが展開しているかは把握できない。いつどこで事故が起きてもおかしくはなく、住宅地に落ちれば大惨事となる。陸自の14機は25年中に佐賀空港西側に新設される駐屯地に移転する計画であり、特に九州・南西諸島の各地でオスプレイの飛行がさらに増えていくことは確実だ。絶対に許してはならない。

「原因不明」のまま飛行

 22年8月、米空軍はオスプレイのクラッチ(エンジンとローターをつなぐ装置)の不具合でCV22オスプレイ全機の飛行を停止。しかし9月2日、「不具合の根本的な原因を特定し解決策を見つけるのは長期的な目標」としながら、事故が起きた際の訓練を強化するとして飛行再開を強行した。今年2月3日には同じくクラッチに不具合があるとして、対象機数を未公表のままMV22も含めた「複数機の飛行停止」を発表している。こちらも「根本原因は不明」のままだ。つまり、原因不明の危険な状態でオスプレイはずっと飛行を続けているのである。そもそもオスプレイは試作段階から事故や不具合が相次いできたのだ。
 戦争のため、自国兵士すら使い捨てにする米帝国主義が人民を守ることなどありえない。改憲・戦争阻止!大行進を先頭に反戦闘争を拡大し、中国侵略戦争阻止―オスプレイの全機撤去をかちとろう。

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