十亀弘史の革命コラム -12- プロレタリア文化と前衛

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週刊『前進』04頁(3323号04面03)(2023/12/11)


十亀弘史の革命コラム -12-
 プロレタリア文化と前衛

 日本近代文学館の秋季特別展「プロレタリア文化運動の光芒(こうぼう)」を見に行きました。堺利彦が『共産党宣言』の一部を日本語と英語で大書した書、小林多喜二の『蟹工船』の肉筆原稿、葉山嘉樹の獄中メモ、1919年発行の生田長江訳の『資本論』、また闘いのビラ・パンフ・ポスターなど、おおっと思わせる戦前の資料が150点ほど展示されています。ただ、最も見応えを感じたのは、当時の日本プロレタリア映画同盟(プロキノ)が1931年に製作した7分強の記録映像「第12回東京メーデー」です。
 工場内でメーデーのポスターに見入る労働者たちの場面から始まり、芝浦の会場に続々といろいろな服装の人たちが結集してくる画面へ。「この日一万三千」という字幕。プラカード、のぼり、組合旗の林立。警官隊による集会への弾圧。演壇の女性労働者の熱烈なアピール。「ダラ幹」への弾劾。長くて力強いデモ隊列。水を配る救護班とデモ参加者との笑いの交歓。労働者たちの怒りと熱気と明るさが鮮やかに伝わってきます。それらの映像は、11・19集会の光景と重なって見え、身体が熱くなりました。
 しかし、そのわずか4カ月後に柳条湖事件が起こり、日本は15年に及ぶ侵略戦争に突入します。労働者の闘いはそれでも続きますが、多くは愛国主義と排外主義の波にのみ込まれて行きます。どうしてなのか。詳しい展開は省きますが、スターリン主義党の「指導」のせいです。コミンテルン32年テーゼ、二段階革命論、社会ファシズム論、天皇制への屈服、暴力革命の放棄。これらが労働者の革命魂をむしばんでいったのです。
 展示には、「佐野と鍋山 獄中で転向声明」との見出しが躍る、33年6月10日の東京朝日新聞一面の拡大コピーもありました。獄中で転向したこんな人物を「真の最高首脳者」(同記事)とする党が、労働者の前衛になれることなど絶対にありません。
 11・19集会の発言の中に、「戦争をさせられるのは労働者、でも戦争を止めることができるのも労働者です」があります。共産主義者の党に、労働者階級全体の利害と切り離された利害はありません。党は、戦争に反対し、帝国主義を打ち倒す労働者階級と一体となって進みます。その党は前衛であると同時に労働者によってこそつくられます。11・19の快晴の空には、そのことへの確信も満ちあふれていたと思っています。
(そがめ・ひろふみ)
2023.12.11

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