南西諸島を戦場にするな 宮古島現地ルポ 急速に進むミサイル基地化

発行日:

週刊『前進』04頁(3333号03面01)(2024/02/26)


南西諸島を戦場にするな
 宮古島現地ルポ
 急速に進むミサイル基地化

(写真 陸上自衛隊宮古島駐屯地開設5周年式典に対して住民連絡会をはじめ全国から労働者・学生ら50人が集まり「ミサイル基地はいらない」 「戦争訓練やめろ」「沖縄戦を再び繰り返すな」と声を上げた【2月18日 沖縄県宮古島市】)

(写真 自衛隊が基地内でパレード)

(写真 日本軍慰安婦の碑の前で説明するミサイル基地いらない宮古島住民連絡会の清水早子さん【19日】)

(写真 建設中の弾薬庫【保良】)


 2月18日、ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会が呼びかける陸上自衛隊宮古島駐屯地(沖縄県宮古島市)への抗議行動に改憲・戦争阻止!大行進や全学連らが参加し、本紙記者も同行した。19日には連絡会共同代表の清水早子さんの案内でフィールドワークも行った。宮古島のミサイル基地化は2019年駐屯地開設以来、暴力的かつ急速に進められている。だが凶暴な攻撃に対し住民を先頭に労働者階級人民の怒りが爆発している。2日間の現地行動のルポを掲載する。(本紙 屋敷博一)

陸自駐屯地前で抗議闘争

 陸自宮古島駐屯地正門前で2月18日、住民連絡会をはじめ全国から約50人が集まり、「戦地や被災地の苦難に思いをはせ、陸自5周年を祝わない2・18市民の集い」(主催・同実行委員会)が行われた。
 この日は駐屯地創立5周年の記念式典が開催されていた。市民(実際にはほとんどが自衛官の家族)を参加させ、「パレード」と称して実際にやっていたのは軍事訓練・戦争訓練だ。ミサイル車両などが走り回り、軍用車両に子どもを乗せていた。さらに空包射撃訓練や模擬銃の銃撃戦訓練などの銃声音が周辺一帯に鳴り響いた。道路一本はさんで農家があるにもかかわらずだ。まさに宮古島を戦場化することを目的とした式典に対して、抗議行動参加者の怒りは大爆発した。
 午前9時から抗議行動が始まった。参加者らは「ミサイル基地はいらない」 「戦争訓練やめろ」「沖縄戦を再び繰り返すな」と声を上げた。
 連絡会共同代表の清水早子さんは「能登半島が大変な状況にあり、食料も住まいも困窮している中で飲食を伴う式典をやり、軍事訓練を行うなどとんでもないことです。ウクライナやパレスチナでは戦争が続いています。抗議の声を上げましょう」「自衛隊は死ぬな、殺すな」と訴えた。
 さらに駐屯地にはミサイル車両を含め300台の軍用車両があり、膨大な軍事予算が使われていることを弾劾。また新たな電子戦部隊配備やレンジャー訓練棟、整備場、新しい庁舎建設など基地増強・軍備拡大が強行されている。「軍拡がどんどん進められている。与那国も石垣も石川(うるま市)もそう。電子戦部隊配備の住民説明会も要求しているが開かれていない」と暴露・弾劾し、南西諸島を中心とした日本全体の軍事要塞(ようさい)化、戦争に向かう流れを共に止めようと訴えた。
 全国から駆け付けた仲間も発言に立った。赤嶺知晃全学連委員長は「宮古島の闘いと連帯する。住民説明会すらなくミサイルを配備して5周年を祝うなど許せない。うるま市でも新たな訓練場がつくられようとしており、『空包も撃たない、ヘリコプターも着陸しない』などと言っているが、うそに決まっている。宮古島でも当初、『弾薬庫は置かない』と言っていたのに弾薬庫もミサイル部隊も置いた。住民を踏みにじって戦争準備を進める自衛隊・岸田政権に対し、宮古島住民と連帯して共に闘います」とアピール。
 うるま市から駆け付けた大行進沖縄の仲宗根光洋さんも訓練場反対の訴えを行った(要旨別掲)。途中、右翼の妨害などもあったが抗議行動は3時間にわたって闘いぬかれた。住民を黙らせ「祝賀ムード」を演出しようとした自衛隊の狙いは完全に粉砕された。
 その後、関連イベントで宮古島警察が自衛隊の要請を受けて参加し、子どもを乗せたパトカーがサイレンを鳴らして基地内を走り回ったことが発覚した(消防も要請されていたが拒否した)。軍警連携そのものだ。沖縄戦で軍と警察が一体で住民を弾圧した歴史を誰もが思い起こした。
 住民連絡会らは即座に自衛隊に対して抗議し、さらに宮古島警察署にも行き、抗議の声をたたきつけた。

どっちが「力による現状変更」か

 19日は清水さんの案内で宮古島フィールドワークが行われた。
 最初に訪れたのは、前日抗議行動を闘った、千代田にある陸自宮古島駐屯地。倉庫の奥にミサイルを保管可能な1級弾薬庫が見える。手前には03式中距離地対空誘導弾や12(ひとにい)式地対艦誘導弾搭載の軍用車両も並んでいる。
 この弾薬庫のある駐屯地は辺野古と同じく軟弱地盤で、燃料タンクの下は改良工事もしておらず、地震(宮古島は地震も多い)などで地盤沈下したら大変なことになると清水さんは語り、「どっちが『力による現状変更』か」と怒りを吐露した。
 さらに敷地内には御嶽(ウタキ、村落の守護神がまつられている場所)も見える。地元との合意を破って泉を埋められ、森も半分に削られ、自衛隊の許可がないと入ることもできないとのことだ。
 通りがかった宮古空港では電線工事が行われており、軍事利用のための滑走路延長が狙われているとの説明。また2019年の駐屯地開設以降、街路樹が次々と伐採されているとのことで、軍事優先で住民生活をとことん破壊する実態が見えた。
 次に訪れたのは、地震で隆起した断層帯の上にある航空自衛隊宮古島分屯基地。戦前は日本軍司令部があった場所だ。ここにはFPS7をはじめとした最新鋭のスパイレーダーがある。脇には昨年宮古島に運び込まれたPAC3も見える。地下30㍍の事務室もあるとのこと。岸田政権は軍事費43兆円を使って司令部を全て地下にすることを計画しているが、真っ先に宮古島に地下施設を造ったのはまさに南西諸島の戦場化を想定しているからだ。
 基地から200㍍ほど離れた場所からトラメガで説明を受けていたら、定期的に「ピーピー」という音が入ってきた。「これはレーダー基地からの電磁波。琉球大の教授に調べてもらったら、ヨーロッパの規制基準の何千倍という電磁波が検出された(日本に規制の基準はない)。電磁波は放射能と同じで目に見えないが、確実に健康被害はある。実際、家畜の死産が増えている」と清水さん。
 基地と基地の間には集落と日本軍慰安婦の碑があった。保守系議員による妨害もあったが、「宮古島に日本軍『慰安婦』の記念碑を建てる会」という団体をつくり募金で建てたとのこと。その横には反戦歌人の碑も並んでいる。沖縄戦の時、宮古島は直接戦場にはなっていないが、餓死者が大量に出た。そのことを詠んでいる元軍人の碑だ。清水さんは昨年の机上訓練での宮古島島民5万5千人が避難するという想定は空論でしかなく、餓死者が出るに違いないと語る。
 抗議行動にも参加していた農家の方にも話を伺った。全学連をはじめ若者が参加していることを喜んでくれ、「今ならまだ戦争を止められる。がんばろう」と激励された。
 最後に保良(ぼら)にある陸自宮古島駐屯地弾薬庫・訓練場を訪れた。三つ目の弾薬庫・訓練場が建設中だ。赤嶺委員長は「昨年9月に来た時は一つの弾薬庫が建設中だったが、もう別のが建設されている」と急速に進む軍拡に憤った。
 自衛隊は弾薬庫建設のためにまだ取得できてない土地も整備を始めており、勝手に黄色いロープを張っていた。土地規制法攻撃そのものだ。ロープを無視してフィールドワーク参加者が進むと、自衛隊員が飛んできて「立ち入り禁止です」と言ってきた。「ここは敷地外だ」「お前らこそ出ていけ」と怒号が飛んだ。長さ300㍍の射撃訓練場もあり、フェンスを隔てて集落がすぐ脇にある。人命無視そのものだ。
 初めて沖縄に来たという京都大学の学生は「自衛隊が空包を撃っているのを見て戦争が近づいていると感じた。基地建設も住民にうそをついて進めていて許せないと思った。自分も京大に帰って学生を沖縄に連れてきたい」と語った。

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対中戦争の「前進基地」化狙う



 岸田政権・自民党は米帝の世界戦略と一体で、南西諸島軍事拠点化を次々と進めてきた。その背景には米海兵隊の「遠征前進基地作戦」(EABO)があり、これと一体で日本全土、とりわけ南西諸島へのミサイル配備がある。
 EABOは比較的少人数の部隊に分かれた米海兵隊を南西諸島の島々に送り込み、中国軍から受ける反撃を分散しつつ島から島へ移動しながら高機動ロケット砲システム(ハイマース)などで中国軍を攻撃・撃退した後、空母打撃群などの主力部隊を投入して中国の中枢部を攻撃するというシナリオである。この際、奄美大島、宮古島、石垣島など約40カ所が想定されている。この計画では南西諸島は当然にも中国軍の反撃にさらされ、文字通り「捨て石」にされることになる。岸田が「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と繰り返すのは、まさに南西諸島がウクライナのような戦場となることを想定しているからである。

住民が阻止行動

 しかし宮古島をはじめとした住民はミサイル配備に反対する激しい闘いを展開してきた。2019年に陸自宮古島駐屯地が開設される際、住民は軍用車両陸揚げに対してゲート前でバリケードを張り、警察に排除されるまで8時間にわたって抗議行動を展開した。
 「戦後70年以上軍備を置かなかった宮古島が、再び軍事の島にされることを認めることはできなかった」(住民連絡会)
 翌年にはミサイル部隊とミサイル車両が持ち込まれた。自衛隊は抗議行動を警戒し、分散して民間機で深夜に運び込んだ。住民は市内デモとゲート前集会を展開、正門を封鎖させた。
 さらに翌21年、海上自衛隊輸送艦で地対艦ミサイル、地対空ミサイルが持ち込まれようとしていた。「宮古島から戦争が始まる」と決意した住民は軍用トラックに身を投げ出し、やってきた機動隊と実力で闘いぬいた。安保3文書改定の具体的実態は沖縄、特に宮古・八重山諸島の中にある。
 2019年に岩屋防衛大臣(当時)が「宮古島が島しょ防衛の最前線だ」と語ったが、まさにここが中国侵略戦争の最前線にされようとしている。全国で怒りの反戦闘争に決起しよう。

取材後記

 今回、宮古島で感じたのは、異常なまでに急速に進む南西諸島の軍事基地化だ。岸田は中国侵略戦争を本気で構えており、三里塚や辺野古を含めて暴力的にあらゆるものを「戦時優先」につくり変えようとしている。住民どころか自衛隊員の命も安全も無視して戦争体制に突き進む中で、昨年の陸自ヘリ墜落事故などが起こったのは必然だと断言できる。
 一方で、沖縄戦の記憶も含め、沖縄の不屈の闘志もまた激烈に燃え広がっている。清水さんら住民は宮古島の軍事化に対して必死に闘い続けている。ミサイルやPAC3の搬入の際には文字通り体を張った実力闘争もたたきつけている。基地前での毎週のスタンディングも闘っている。
 問われているのは本土の人間がどう応えるかだ。大坂正明同志を先頭に闘った70年安保・沖縄決戦の再びの爆発をかちとり、「中国侵略戦争阻止、安保粉砕・日帝打倒」の闘いをまき起こそう。戦争絶対反対! 全基地撤去へ闘おう。

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宮古に学び、うるまで闘う
 大行進沖縄が抗議集会で発言

 沖縄県うるま市石川から来ました。労働組合で闘っています。私の地元でも宮古島と同じく、地域のど真ん中にいきなり陸自訓練場の建設が発表されました。急に、地域住民当事者になりました。陸上自衛隊の訓練場に対して地域住民、石川の15地区の自治会全てで、建設反対の決議が上がっています。
 防衛局は、単に商業施設をつくるかのように、建設地に隣接する2地区の住民にしか説明会を開かないという不誠実極まりない対応です。本当に許しがたいと、市議会も超党派で反対決議を上げています。
 今、駐屯地がつくられても反対し続ける宮古島の人たちの闘いを学び、絶対に訓練場をつくらせてはいけないという思いを強くしました。一度つくられてしまったら、それは何十年にもわたり固定化される。「台湾有事の際に住民を守る」ためだと基地はつくられますが、それは名目です。つくったらその先、どんどん基地の強化が進んでいきます。それを良しとしている自民党、岸田政権に対し、われわれは絶対に反対の意志をもって一緒に闘っていきます。
 米軍、自衛隊関係なく基地に苦しんでいる宮古、八重山の皆さんと一緒に連帯して闘っていきます。
(改憲・戦争阻止!大行進沖縄 仲宗根光洋)

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2019年以降の宮古島年表
2019年3月 「離島防衛態勢強化」へ陸自宮古島駐屯地開設2021年11月14日 ミサイル弾薬搬入を住民が下崎ふ頭で足止め
11月19~30日 日米共同訓練
2022年4月28日 駐屯地門衛銃携行と隊員家族暴行事件に抗議
9月20日 土地規制法全面施行
11月10日 千代田ゲート前で日米共同訓練キーンソード23抗議
12月11日 ブルーインパルス飛行抗議、宮古空港を自衛隊使用
12月16日 安保関連3文書改定
2023年2月17~22日 日米共同統合防空・ミサイル防衛訓練
7月9日 保良で実弾射撃訓練
8月4日 宮古初陸自公道訓練
9月6日 宮古島駐屯地に電子戦部隊を25年度までに配備決定
2024年1月10日 宮古島駐屯地警備隊長ら公用車で神社参拝

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