遠征前進基地作戦(EABO)とは 「沖縄戦の再来」 不可避に

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週刊『前進』04頁(3337号03面02)(2024/03/25)


遠征前進基地作戦(EABO)とは
 「沖縄戦の再来」 不可避に

(写真 ミサイルを発射するハイマース)


 南西諸島を戦場とし、150万人以上の住民を戦火に巻き込みながら中国本土へ侵攻する----そのような「沖縄戦の再来」と言うべき作戦を、米海兵隊がすでに正式に策定し、実行しようとしている。それが「遠征前進基地作戦(EABO)」だ。
 その作戦内容は、部隊を分散して宮古島や石垣島、奄美大島など有人島を含む南西諸島の約200の島々に展開して数十カ所の遠征前進基地(EAB)を建設し、そこを拠点に中国軍とミサイルを撃ち合うことを想定、島々を移動しながら高機動ロケット砲システム「ハイマース」などで中国軍を攻撃、制海・制空権の獲得を目指すというもの(図)。その後、中国の反撃を避けるためグアムやハワイに一時退避させていた空母打撃群など米軍主力を投入する計画となっている。
 米軍は2000年代後半に中国の国防戦略を「接近阻止/領域拒否(A2/AD)」と名付けた。EABOはこれを打ち破るために考案されたものである。したがってその目標は中国軍の「撃退」ではなく、中国軍の防衛ラインを突破して中国本土への侵攻を可能とすることなのである。
 米軍はすでに「EABOの中核」として既存の海兵連隊を次々と海兵沿岸連隊(MLR)へと改編している。自衛隊も10年代から南西諸島に駐屯地を拡大・建設、地対空・艦ミサイル部隊をはじめとして部隊を配備し、海上自衛隊掃海隊群には11年頃からEABOのような作戦を見据えた訓練をさせており、米海兵隊と共に直接にEABOを担う部隊として陸上自衛隊水陸機動団を発足(18年)、その増強を図っている。
 EABO、そして続く中国本土への侵攻には当然ながら中国軍も反撃する。中国軍が約2千発保有しているミサイルは米本土までは届かないため、その向かう先は沖縄をはじめ日本列島だ。
 真っ先に「戦場」となる宮古島、石垣島などの住民からは怒りが噴出している。政府はシェルター建設や避難計画の策定を進めているが、提出された避難計画は、臨時に飛行機や船舶を総動員して先島諸島から数日かけて九州や山口各県に12万人を避難させ、沖縄本島の住民は基本的に「屋内退避」とするものだ。
 あまりにも時間がかかりすぎる上に、EABOの作戦内容を見れば飛行機も船舶も安全に通行できるような状況であるわけはなく、まったくの机上の空論にすぎない。沖縄本島が避難先に入っていないのは、米軍基地が集中する沖縄本島が戦火に包まれることが想定されているからにほかならない。沖縄本島での「屋内退避」とは、つまり放置なのである。また、EABの建設には土地の接収が不可欠だが、接収された土地とその近辺は攻撃される可能性が当然にも高く、そこに暮らす住民は生き残れたとしても仕事や生活を維持することはまったく不可能だ。
 そもそもEABOは住民の「生命と財産を守る」ことを前提に考案することはできない作戦だ。最初から住民の命と生活など日米帝国主義にとって「守る」対象ではないのである。沖縄戦の血の教訓である「軍隊は住民を守らない」は今なお正しいのだ。南西諸島での軍事要塞化を絶対に許してはならない。

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