相次ぐ戦争法の成立弾劾 刑訴法改悪で戦時司法へ転換「サイバー防御」で他国を攻撃
週刊『前進』04頁(3397号04面02)(2025/05/26)
相次ぐ戦争法の成立弾劾
刑訴法改悪で戦時司法へ転換「サイバー防御」で他国を攻撃
石破政権は国会で戦争法を立て続けに押し通した。5月16日には刑事訴訟法改悪と能動的サイバー防御法が参院本会議で可決・成立した。中国侵略戦争とそのための戦時統制を図る攻撃だ。6・14反戦闘争に総結集し、石破政権打倒・中国侵略戦争阻止の大闘争を巻き起こそう。
被告を在廷させず密室裁判が可能に
刑事訴訟法の改悪は捜査や裁判手続きのデジタル化を口実に強行されたが、その本質は戦時司法への転換だ。また、警察権力の権限を拡大し、人民の全生活を国家の監視と統制のもとに組み敷く攻撃だ。この改悪で、被告人を法廷に出席させず、裁判所内の別室に、あるいは拘置所や警察署に留め置いたまま、ビデオリンクで公判を進めることが可能となった。被告人が在廷できない裁判など、もはや裁判ではない。公開裁判の原則は否定され、被告人は実質的に裁判から排除される。
証人尋問をビデオリンクで行うことが許される条件も、大きく緩和された。目の前にいる検察側証人に厳しい反対尋問を浴びせる被告人や弁護人の権利は、徹底的に奪われる。これは権力による偽証のでっち上げをきわめて容易にする。8・6広島暴処法裁判では広島市職員の証人尋問がビデオリンクで強行されたが、こうしたやり方が当然のことにされるのだ。
逮捕令状の発付を警察官や検察官がオンラインで請求し、裁判官がそれを電子データで発付することも可能になった。被疑者や立会人に対する令状の提示もタブレット端末で行える。
これに加え、捜査機関が電気通信事業者などに電子データの提出を命じる「電磁的記録提供命令」が創設された。命令を受けた事業者に、その事実を口外しないことを義務づけることもでき、それに違反した事業者には1年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金が科せられる。
通信事業者に電磁的記録提供命令が出されても、被疑者は自分がこうした捜査の対象になっていることを通常は知りえない。これは言わば国家権力による事後的盗聴だ。すでに通信傍受法によって警察による盗聴は「合法化」されているが、同法は通信の傍受が終了してから30日以内に、通信の当事者、つまり被疑者にその事実を書面で通知しなければならないと定めている。対象となる罪も限定され、犯罪の実行、準備、証拠隠滅などの共謀が現に行われると疑われる通信に限って傍受が許される。だが今回の刑訴法改悪には、そうした限定は全くない。
国家権力は人民の行動を秘密裏に継続的に監視できる。その根本の狙いは反戦闘争の圧殺だ。
宣戦布告なき開戦へ意図的踏み込み
能動的サイバー防御法は、宣戦布告なき戦争への突入を可能にする恐るべき法律だ。この法は、「重要インフラ」が国外からサイバー攻撃を受ける可能性がある場合、警察や自衛隊がその発信源に電子的に侵入し、プログラムを破壊できると規定する。国外のサーバーなどに破壊目的で侵入することは、その国からすれば違法行為であり、「国家主権」を侵害するものだ。それを日本政府が組織的・継続的に行えば、それ自体が戦争の開始とみなされてもおかしくない。そこへの踏み込みを警察や自衛隊が独断で決めるのだ。それは、これらの機関に開戦の権限を与えるに等しい。ウクライナ戦争が示したように、サイバー領域での攻防は、戦争の結果を直接に左右する。それは即座に、実空間で砲弾やミサイルが飛び交う事態を引き起こす。
また、「サイバー攻撃の危険を探知するため」と称して、政府は国内と国外間の「外内・内外通信」、外国発で日本を経由して国外に送られる「外外通信」を日常的に取得し監視する。通信情報の取得に際しては、通信当事者の同意は必要とされない。また、犯罪捜査とも異なるとして、裁判所の令状も不要とされた。政府に設けられたサイバー通信情報監理委員会が運用をチェックするというが、事実上、制限は何もない。国境を越えて行き来する通信情報を、国家権力は制度上、逐一取得し監視できるのだ。
さらに電気やガス、鉄道、金融など「基幹インフラ」に指定された15業種には、サイバー攻撃による被害を受けた場合、政府に報告することが義務付けられた。これは、経済安保法と併せて、労働者を戦時統制下に置く攻撃だ。
戦争へと突き進む総翼賛国会粉砕を
まぎれもないこの戦争法に、自民党、公明党の与党はもとより立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などが賛成した。国会の総翼賛化はすさまじい勢いで進んでいる。労働者人民の実力闘争だけが戦争を止められる。6・14芝公園に3千人を結集し、大隊列の反戦デモを実現しよう。