JR東の大再編攻撃粉砕を 「国鉄由来の制度」の解体は戦時国家体制づくりが狙い

週刊『前進』04頁(3399号02面03)(2025/06/09)


JR東の大再編攻撃粉砕を
 「国鉄由来の制度」の解体は戦時国家体制づくりが狙い


 中国侵略戦争が切迫する中、石破政権と経団連は「生産性の低い」産業を切り捨て、軍需産業など「戦略部門」に労働力を再配置する施策に乗り出している。これは「国力の一切を軍事に集中する」攻撃だ。
 その前提になるのが徹底した雇用の流動化だ。JR東日本はこれを先頭で進めている。改憲・戦争阻止!大行進の6・14集会に続く15日の国鉄闘争全国運動の集会は、1047名解雇撤回闘争に勝利する陣形を築くとともに、JRを先兵とする戦時体制づくりと対決する重要な闘いだ。

労組絶滅の強行と業務の全面外注化

 JR東日本は5月7日、「JR東日本グループのさらなる飛躍に向けた新たな組織と働き方について」という提案を行った。従来の会社組織と人事・賃金制度を全面解体し、一からつくり直すような形で改変するというものだ。首都圏本部と東北本部、10の支社からなる会社組織を36の事業本部に再編する。千葉管内では、千葉支社は解体されて千葉、房総、京葉総武の三つの事業本部に変わる。
 この提案は冒頭で、「国鉄由来の人事・賃金制度を抜本的に変革します」と言う。国鉄分割・民営化を完成させるとともに、労働組合の存在を前提にした戦後的な労資関係の清算が狙われている。御用労組の東労組も解体して「労組なき社会」にする攻撃を、極限まで推し進めるのだ。
 提案は「これまでの現業・非現業といった働き方の区分をなくす」と言う。これは運転士や車掌、車両の検査・修繕業務や駅業務など、JRに残った現場業務をすべて外注化するということだ。現場労働者は外注会社に転籍させられ総非正規職化される。JR本体は管理職だけからなる持ち株会社にする。だからJRは「社員一人一人が主役」となり「経営ビジョンを達成」しろと、労働者意識の解体を迫っている。
 グループ会社に転籍した場合、転籍一時金を支払う制度も設けられた。転籍の強制は人身売買だ。そこまでJRは踏み込んできた。

戦後的な賃金体系の全面清算を狙う

 賃金制度も抜本的に改変される。「基本給」をなくして「職務能力給」にする。定期昇給という概念も否定して「能力昇給」に変える。JR東日本はすでに、職務等級により定期昇給額が大きく異なる格差昇給を制度化している。それを、同一の職務等級内でも査定により昇給額が6段階に分かれる形にする。最大の昇給額でも従来より低い。総体として賃金は低く抑え込まれる。そこから抜け出そうとすれば、職務等級が上がる昇格をめざすほかにない。労働者を徹底した競争にたたき込むのだ。
 乗務距離や乗務時間に応じて支払われている乗務員手当も廃止され、月額固定の業務手当に変わる。労働者の誇りを奪う攻撃だ。

社会保障の解体と一体の退職金改悪

 さらに重大なのは退職金の改悪だ。退職金は確定拠出型年金に全面的に移行する。大企業の退職金は、退職時に支払われる一時金と確定給付型年金、確定拠出型年金を組み合わせることが通例であり、100%確定拠出型年金にするのはきわめて極端な措置だ。確定拠出型年金は企業が年々積み立てる掛け金が固定される。運用実績により労働者が受け取る金額が大きく目減りすることもある。
 退職金が確定拠出型年金に一本化されれば、中途退職者はこれまで積み立てられた掛け金を携えて次の職場に移ることになる。雇用は流動化され、「円滑な労働移動」「労働市場改革」は徹底して進む。
 これは公的年金制度の改悪とも連動する。2001年に確定拠出年金法(日本版401k法)が制定された。それに先立つ1999年には、当時の小渕政権が設けた経済戦略会議(後に経済財政諮問会議に引き継がれた)が、厚生年金の比例報酬部分を完全民営化するという答申を出した。その思惑は貫徹できていないが、それは今も資本の基本方針だ。経団連が昨年12月に公表した「フューチャー・デザイン2040」は、「現役世代への負担が大きい社会保険料への依存は、成長と分配の好循環を阻害する」と叫び、「全世代型社会保障改革」の名で社会保障の解体を改めて確認した。JR東日本は国家戦略を体現し、これを全力で推し進めているのだ。
 JRが行っているのは鉄道の運行に必要な現場の技術やそれを支える人材を徹底的にないがしろにする攻撃だ。行きつく先は重大事故の多発だ。他方で現場業務の外注先となるグループ会社は、労働力を確保できず技術力を持つ労働者も育成できない危機にある。
 攻撃は矛盾だらけで、労働者の怒りがどこから噴出してもおかしくない。「社友会」を使って労働者にあきらめを強い反撃を抑えるというJRの思惑が通用するとは限らない。
 国鉄闘争は戦時体制構築の先頭に立つJR資本と対決する決戦に入った。この攻防の成否をかけて6・15国鉄集会に集まろう。
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