NATO「軍事費5%」合意 米帝トランプの争闘戦が欧州各国の大軍拡を促進

週刊『前進』04頁(3403号02面01)(2025/07/07)


NATO「軍事費5%」合意
 米帝トランプの争闘戦が欧州各国の大軍拡を促進

(写真 NATO首脳会議を前に、欧州各地からオランダ・ハーグに集まった人々がデモに立ち、イラン侵略戦争反対・大軍拡反対の声を上げた【6月22日】)

 イスラエルとアメリカ帝国主義がイラン侵略戦争を強行する中、オランダ・ハーグで6月24~25日に開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、世界最大の軍事同盟NATOが大軍拡を宣言する歴史的な戦争会議となった。会議の「主役」として登場したトランプの狙いは、欧州帝国主義に激しい争闘戦をしかけつつ、米帝の軍事的資源を対中国に振り向けることにある。激しく進む戦争情勢と対決し、中国侵略戦争阻止・日本帝国主義打倒へ今夏反戦闘争を闘おう。

米帝の狙いは中国への軍事資源集中

 25日に発表された共同声明は、NATOが「ロシアによる長期的な安全保障上の脅威」に直面しているとし、加盟各国が軍事費を2035年までに、現行の国内総生産(GDP)比2%から5%へと引き上げる新目標を明記した。人員や兵器などの直接的な軍事支出を3・5%とし、重要インフラや軍需産業基盤の整備などに1・5%を充てるとするものだ。ウクライナ軍事支援もこれに含める。
 トランプはこれを「欧州と西洋文明にとっての大きな勝利」とし、サミットは「大成功」だと評価。NATOのルッテ事務総長は「より強く、より公平で、より殺傷力のある同盟を築き始めた」と語った。
 トランプは第1次政権以来、一貫して加盟国に「応分の負担」を求め、NATO離脱すらちらつかせて軍事費増額を要求してきた。国防長官ヘグセスが2月にNATO本部を訪問した際にも「共産中国」を名指しして「米国の基本的国益はインド太平洋地域にある」と主張。「欧州大陸の核兵器を除いた安全保障は欧州各国が責任を負うべきだ」と述べて軍事費の5%化を強く求めた。
 欧州帝国主義は今回、イラン侵略戦争という形で圧倒的な軍事力を見せつけた米帝に対し、継続的なNATOへの関与を約束させるためにトランプの要求に応じざるを得なかった。しかし同時に「脱米国依存」を掲げた独自の軍拡がすでに激しく進行している。
 NATOは3月、8千億ユーロ(約130兆円)規模の「欧州再軍備計画」を発表し、フランス帝国主義マクロンは仏主導の「核共有」を提案。ドイツ帝国主義メルツは首相就任前の3月に軍事費増額のための憲法(基本法)改悪に踏み切った。「ドイツ軍を欧州最強に」とうたって徴兵制復活の検討を始め、リトアニアへの軍隊駐留も開始した。
 イギリス帝国主義の動きも激しい。スターマー政権は、NATO首脳会議に先立って発表した「戦略防衛見直し」や新国家安保戦略で攻撃型原子力潜水艦増強や核弾頭の開発・製造、米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Aの取得による核の共同運用などを矢継ぎ早に打ち出し、「戦闘準備態勢への移行」を宣言した。
 6月5日のNATO国防相会合では、現行の軍事力目標を約3割引き上げ、加盟国全体で防空・ミサイル防衛を5倍規模に増強する方針で合意した。米帝抜きの「欧州軍」構想も動き出している。トランプの登場が欧州における戦後体制崩壊を促進し、戦争の危機を激化させているのだ。

会議参加とりやめ危機さらした石破

 一方、日帝は22年のウクライナ戦争開戦を契機に「今日のウクライナは明日の東アジア」と主張し、NATOとの連携強化を進めてきた。22年に岸田が日本の首相として初めてNATO首脳会議に出席して以来、3年連続の参加でインド太平洋地域への関与を求めた。しかし今回、「インド太平洋地域のパートナー国(IP4)」として招待されていた石破は前日に急きょ欠席すると発表した。
 すでに米帝から非公式で軍事費のGDP比3・5%化を求められる中、物価高騰・負担増への労働者階級人民の激しい怒りに包囲されて支配の危機にある石破は、直ちにのむことのできない5%化要求を突きつけられることに耐えられないと判断したのだ。しかし石破には、米帝と一体で中国侵略戦争に突進する以外に延命の道はない。
 急ピッチで進む再軍備と戦時体制への突入に対して、欧州全域で怒りの決起が巻き起こっている。欧州帝は軍事費5%化のため、米帝の巨大な軍事的プレゼンスを背景として成り立ってきた戦後の「福祉国家」的あり方を最後的に投げ捨てる以外にない。ウクライナ戦争によるエネルギーや生活必需品の価格高騰で苦しい生活を余儀なくされている労働者階級に、さらなる増税と社会保障解体が襲いかかることは明らかだ。
 同時に、「外敵」ロシアを標的とする戦争政策と一体で「内なる敵」として移民への激しい排外主義攻撃が吹き荒れている。しかし労働者階級は国際連帯を貫いてパレスチナ連帯闘争を闘い、フランスやイタリア、ギリシャ、スウェーデンでは労働組合が首をかけてイスラエルへの武器輸送阻止闘争に立っている。 
 自国帝国主義打倒へ決起する欧州の労働者民衆と固く連帯して闘おう。
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