上からの内戦狙うトランプ 銃撃事件うけファシスト体制へ突進

週刊『前進』04頁(3414号04面01)(2025/09/22)


上からの内戦狙うトランプ
 銃撃事件うけファシスト体制へ突進

(写真 トランプによる都市への州兵派遣や移民摘発に対し、デモや抗議行動が繰り返し闘われている【9月6日 シカゴ】)

 アメリカ・ユタ州で9月10日、31歳の「MAGA(米国を再び強大に)」活動家チャーリー・カークが大学でのイベントの最中に射殺される事件が起きた。
 カークは、トランプ第1期の共和党予備選の時からSNSなどを使って若い世代のMAGA運動の牽引(けんいん)役となった。2012年に共和党右派の実業家が当時18歳だったカークに資金を与えてつくらせた青年団体・TP(ターニングポイント)USAは大学教員の監視リストをネットに上げて戦後の赤狩りの再現を扇動し、トランプに最も忠実な勢力になった。トランプ派が20年の大統領選での敗北を認めず翌年1月6日に連邦議会を襲撃した時には、80台ものバスを仕立てて結集した。
 カークは今月、東京で開かれた参政党のイベントで講演を行ってもいる。

学生の闘いへの恐怖が原動力に

 特に重要な転機は、23年10・7のパレスチナ蜂起に連帯したアメリカの学生運動・教員の運動が米帝を根底から揺るがしたことだ。「ハマスのテロに賛同するのか」「反イスラエルは、反ユダヤ主義=差別主義だ」という恫喝と弾圧、退学・解雇攻撃に屈せず、あいまいさのない連帯を貫き、巨大な決起をかちとった。この闘いに恐怖し、反動の先兵になったのがTPUSAだった。カークは以前から「西側の精神的闘争の敵は、アメリカ的生活様式を攻撃するウォーキズム(民主党系リベラルをやゆする表現)、マルクス主義、イスラム主義だ」と差別扇動をしていたが、10・7以降は特にエスカレートし、デモや占拠闘争に参加した学生らを標的とした。

トランプ支持者の分裂が顕在化

 だが、TPUSAの影響力の拡大とともにカークは一種の独自性を出し始めた。6月のイスラエルと米帝によるイラン核施設攻撃に対しては、「イランの核はイスラエルへの脅威だが、アメリカへの脅威なのか」と述べて公然と反対した。トランプの関与が疑われている大規模な性虐待事件のエプスタイン元被告についても、イスラエルの諜報(ちょうほう)機関モサドとのつながりを示唆して資料公開を迫った。同様の行動をとっている者は、共和党最右派でトランプ支持者だったグリーン議員を含め相当数に上る。従来のトランプ支持者の中で、重大な分裂が起きているのだ。
 こうした状況下でトランプやメディアは一斉にカークを賛美する大宣伝を行い、他方でカークの死を喜ぶSNSの投稿を探し出し、リスト化して雇用主に解雇を促している。

始まった人民の内戦・内乱的闘い

 進行する事態の本質は、統治形態のファシズムへの転換を図る凶暴な攻撃だ。
 トランプは、「中国をはじめとする外国にアメリカの雇用を奪われていることが諸悪の根源だ、そしてウクライナ戦争は一日で止める」と宣伝して登場した。
 だがトランプ関税は、逆に失業を増やした。8月1日の労働統計局長の解任を見れば、トランプの焦りが分かる。最大の穀物購入国である中国への輸出を断たれた農村地域でもトランプへの怒りは激しい。しかもトランプは、大軍拡予算と富裕層減税のために、高齢者年金、高齢者医療・貧困層医療制度の廃止に等しい大削減に手を着けた。トランプに投票した人々を含めた、膨大な数の労働者人民の決起は不可避だ。だからトランプはカーク事件を利用し、上からの内戦をしかけ、中国侵略戦争にのめりこむ以外にないのだ。
 だが実は、人民の側からの内戦はすでに始まっている。20年に爆発したBLM(ブラックライブズマター)運動は、警察に守られた白人至上主義者によるデモへの銃撃を受けながら不屈に隊列を拡大した。各地のBLM運動が、憲法修正第2条(規律ある民兵のため、人民が武器を保有し携帯する権利)に基づき武装自衛をした。100年前の炭鉱スト時の蜂起戦や、武装し闘われた30年代の自動車労組ストが示すように、武装自衛はアメリカ階級闘争に根付いているのだ。
 革命的情勢は熟しすぎるほど熟している。米労働者階級とともに、米日帝の中国侵略戦争を内乱に転化し、反帝・反スターリン主義世界革命に勝利しよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加