欧州で激発する反戦闘争 戦争・大軍拡に歴史的反撃

週刊『前進』04頁(3427号02面01)(2025/12/22)


欧州で激発する反戦闘争
戦争・大軍拡に歴史的反撃

(写真 ジェノサイドと戦争経済に反対して「労働者の国際的団結」の力を訴えて行進するS.I.Cobas(11月29日 イタリア・ミラノ))

(写真 高校生ら400人が授業ストライキに立ち、「二度と徴兵を許すな!」とデモ【12月5日 ドイツ・ミュンスター】)


 イタリア全土で11月28日、ガザでのジェノサイド反対・イタリア政府によるイスラエルへの武器援助阻止を掲げたゼネラルストライキとデモ・占拠闘争が9月、10月に続いて闘われた。全社会的な差別・排外主義、愛国主義の洪水と対決し、反戦そのもので100万人規模の労働者を強固に組織する闘いだ。欧州階級闘争の歴史的転換が切り開かれつつある。

イタリアの反戦ゼネスト

 イタリアでは、ランク・アンド・ファイル労働組合である職場委員会全国連合(S・I・Cobas)が9月にゼネストを組織し、他の労組も加わった。10月には体制内の労組ナショナルセンターもゼネストを指令。実際には一部しかストに突入しなかったが、組織労働者全体にジェノサイド阻止・イスラエル武器援助反対の声が響き、体制内労組の抑制を打ち破ってデモに参加する労働者が続出した。パレスチナ解放と帝国主義の再武装・戦争反対、不安定雇用化反対と賃上げ要求を掲げた今回のゼネストは今秋3度目となり、翌日には大デモが行われた。
 欧州全体で、軍事予算の国内総生産(GDP)比5%化が打ち出され、軍需産業拡大を「経済政策」とする方針が掲げられている。アメリカ帝国主義・トランプの、欧州・中東からインド太平洋(中国)方面に米軍兵力を移動させるという戦略に対して、欧州帝国主義は独自の軍事力の飛躍的強化とロシアとの直接の戦争に公然と向かっている。
 フランス軍参謀総長は11月21日、「(ロシアとの軍事対決で)子どもを失う覚悟」を求める発言までしている。ウクライナの戦場での戦死を覚悟せよというのだ。イギリス国防省もこの12月、英陸軍の落下傘部隊の伍長がウクライナで死亡したと発表した。「最前線から遠い場所で死亡した」としているが、実際は戦闘参加に限りなく近いことをしていたと言われている。
 すでに英・独・仏・伊軍が中国近海で自衛隊や米軍と共同演習を行うなど、戦後的あり方を一変させる軍事的突進が加速している。

徴兵制復活と闘うドイツ

 ドイツでは、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の連立政権が、連邦議会(下院)での「兵役近代化法案」の可決日を12月5日に設定した。2026年から18歳になる男女に兵役希望調査票で志願者を募るが、不足時は兵役義務を復活させるというものだ。27年からは18歳になる男子全員に適性検査を義務付ける。
 これに対して採決日の5日、全国で高校生のデモが行われた。授業放棄・ストライキを行って丸ごと参加した学校も多く、反対の意志の強さを示している。ベルリンでは主催者発表で7千人がデモをし、連邦軍本部に向かってシュプレヒコールを上げた。ハンブルクでは5千人が集まるなど、ドイツ全土で徴兵への怒りが噴出した。法案可決後も「希望調査から身体検査・徴兵導入のすべての段階で闘う」という決意が次々に表明された。新たな反戦闘争の世代が登場している。

「自国帝国主義打倒」掲げ

 米帝を基軸とする戦後世界体制の大崩壊の中で、米帝と欧州帝の関係は激変している。特に米帝の「ロシアを抑えつけ、中国を打ち負かす」(22年版国家安全保障戦略)戦略のもとでウクライナ戦争が行われたことは決定的だった。それは中国侵略戦争のための対ロシア戦争であると同時に、欧州帝諸国に対する米帝の争闘戦でもあった。ロシアとの経済関係が深い欧州諸国への打撃をも狙った対ロシア経済制裁に加え、米帝は22年、ロシア産天然ガスの主要パイプラインであるノルドストリームの爆破までやった。その結果、欧州のエネルギー価格と物価全体が急騰し、人民の怒りが沸騰している。
 さらにトランプ政権が12月初旬に発表した新国家安全保障戦略は、欧州帝との争闘戦を加速させている。それは、「(欧州諸国が)経済・軍事面で信頼できる同盟国であり続けられるかは全く明らかではない」として「方向性の修正」を求め、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対して防衛費のGDP比5%化達成を急ぐよう要求した。
 欧州帝諸国の全政府が崩壊の淵にあるからこそ、イタリア・ドイツの闘いは全欧州にたちまち波及する。パレスチナ人を絶滅すると公然と宣言したジェノサイド戦争を、米帝に次ぐ軍事援助額で支えてきたのがドイツとイタリアだ。しかし、パレスチナ連帯闘争を「反ユダヤ主義」「差別」であるとする攻撃も、機動隊の凶暴な弾圧と不屈に闘う隊列の拡大によって大衆的に打破されてきたのだ。
 11月集会に参加したS・I・Cobasのロベルト・ルッチ氏は「自国帝国主義打倒」が重要であることを強調し、中国侵略戦争との闘いこそ世界の労働者の任務だと明言した。反帝国主義・反スターリン主義世界革命へ闘おう。

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