JRの大再編粉砕を 戦時労働者支配を狙う大攻撃

週刊『前進』04頁(3427号02面03)(2025/12/22)


JRの大再編粉砕を
戦時労働者支配を狙う大攻撃


 中国侵略戦争に突進する高市政権は、戦時労働者支配の確立へ必死になっている。その先兵として労働組合を跡形もなくす攻撃に踏み出してきたのがJRだ。動労総連合は12月7日の定期大会で、反戦闘争を貫くとともに、これと全面対決する方針を確立した。

「事業所」を解体し労働者の権利圧殺

 JR東日本は来年3月14日のダイヤ改定でワンマン運転の拡大などの大合理化を強行した上、4月には新人事・賃金制度を実施に移し、7月からは会社組織の大再編に着手する。
 この組織再編は、会社を一から作り直すような抜本的なものだ。今ある首都圏本部と東北本部、10の支社を全廃して36の事業本部に改変する。千葉管内では、千葉支社は解体されて千葉、房総、京葉総武の三つの事業本部に分割される。
 しかも、この事業本部が一つの「事業所」とされる。千葉事業本部の場合、管轄区域は千葉駅以東の総武線、成田線、安孫子線にまたがる。そこにある各駅や、運転士と車掌が所属する運輸区、保線や電力など設備部門の各職場が、千葉事業本部に組み込まれる。
 これを一つの事業所とするのは、労働組合の存立条件を根本から奪う攻撃だ。労働法制は事業所を単位に組み立てられている。36協定の締結も、就業規則改定に際しての労働者からの意見聴取も、労働安全委員会の設置も、事業所ごとに行われる。だが、広大な地域にまたがり、複数の職種を抱える事業本部が一つの事業所とされれば、労働者の意思を集約することはできず、労働法が定める制度は空洞化する。だがJRは、あえてそうした上で、社友会を「労働者代表」にしつらえ、残業の強制も労働条件の改悪も安全を損なう労働強化も、好き勝手にできるようにしたいのだ。
 経団連が24年1月に出した労働法制に関する提言は、労働者代表に交渉権や労働協約締結権を与えよと唱えた。これを主導したJR東日本は、自社でまずそれを実行し、全社会に拡大しようと狙っている。
 事業本部が一つの事業所とされれば、場所や職種にかかわらず、その範囲内にあるどの職場にも、労働者は勤務指定一つで行かされる。勤務場所や職種が定められてこそ労働条件は守られる。それが否定されれば、労働者は単なる労働力として徹底的に使い回されることになる。

行きつく先は軍需産業への強制移動

 JR東日本は、新人事・賃金制度で「国鉄由来の人事・賃金制度を抜本的に変革する」と言う。その根底には、「国鉄千葉動力車労働組合」を名乗って分割・民営化と対決してきた動労千葉への憎悪がある。
 新人事・賃金制度により基本給や定期昇給という概念は廃止され、基本給は能力職務給、定期昇給は能力昇給に変えられる。競争に勝ち抜き昇格しなければ賃金は上がらない仕組みだ。
 さらにJRは、一般社員にも株式報酬制度を導入して「経営参画意識」を持たせると言う。退職金も廃止し、確定拠出型の企業年金に全面的に置き換える。その目的は、勤務年数が長いほど退職金が増える従来の制度を改め、雇用を徹底的に流動化することにある。JR社員がグループ会社に転籍した場合、転籍一時金を払う制度も設けられる。
 その狙いは戦後的な賃金体系の破壊だ。資本は常に査定によって労働者を分断する能力給の拡大を図ってきたが、それでも「労働組合との交渉を通じた賃金水準決定」という構図を否定し去ることはできなかった。だがJRは労働組合が賃金にかかわる余地を全面的に奪おうとしている。
 こうした「労組なき社会」が全社会に広がれば、軍需産業への労働力の強制移動も可能になる。「危機管理投資」の名で軍事経済への全面転換を狙う高市政権の登場を機に、経団連は「労働移動の積極推進」をさらに声高に唱え始めた。
 だが、その思惑は決してすんなりとは通らない。JRは「現業と非現業の区別をなくす」として、現業=鉄道業務のすべてを外注化しようとしている。車掌はワンマン化でなくし、運転士もドライバレス化でなくす。車両の検査・修繕部門でJR本体に残った最後の業務も外注化する。これは生身の労働者にとって我慢の限界を超えた攻撃だ。怒りは必ず爆発する。動労千葉と動労総連合は、そこに労働運動が復活するチャンスがあると確信し、組織拡大に向けた新たな挑戦に踏み出したのだ。

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