■世界の労働組合 韓国編全国学習誌産業労組

月刊『国際労働運動』48頁(0449号06面01)(2014/01/01)


■世界の労働組合 韓国編
全国学習誌産業労組

(写真 鐘楼で高所籠城する才能労組の2人の組合員【13年8月23日】)

 全国学習誌産業労組(民主労総・全国民間サービス産業労働組合連盟傘下)は、教育関連企業の発行する学習誌を用いて、その企業の指定するカリキュラムに沿って家庭教師を行う労働者(学習誌教師。全体で約10万人)で組織する労働組合。各地域本部の他に、才能教育、公文、テギョ、ウンジン、ハンソルなど企業ごとの支部がある。

 ■学習誌教師の労働実態

 学習誌教師は家庭教師先から直接に授業料を受け取るが、会社側に上納する「手数料」が契約時の子どもの数で計算されるため、子どもが減っても同額を支払わなければならない。
 実際、公文の学習誌教師だったイジョンヨンさんは、生徒数の拡大を求める会社側のノルマに苦しみ、1500万ウオンの借金を残して2004年に死亡した。イさんは、表向きはひと月204回の授業を行い、収入は250万円だったが、実際に行っていた授業は47回に過ぎず、134回分の200万ウオン近くについては自腹を切っていた。公文は、生徒が減れば面談と督促電話で圧力を加え、ついにはイさんを過労死に追い込んだのだ。
 学習誌労組は、生活賃金獲得、労働基本権獲得、勤労基準法全面適用とともに不正業務・悪制度の撤廃を要求として掲げているが、その背景にはこうした強搾取の現実がある。

 ■才能教育支部の闘い

 こうした現実に対し「才能教育」社と契約を結ぶ学習誌教師たちが1999年に才能教師労働組合を設立し(2006年からは学習誌労組才能教育支部)、政府労働部から労組設立認定証の交付を受けた。以降、会社側との間では団体協約(労働協約)の締結も行われてきた。
 だが、最高裁が2005年に、「学習誌教師は労働者ではない」(労働者性不認定)とする判決を出し、これを受けて会社側は労組弾圧の姿勢に転じ、2007年12月に賃金カットと解雇圧力を加えてきた。これに対し労組はソウル市惠化洞にある才能教育本社前でテント籠城に突入。2013年8月26日の合意まで2076日間、韓国最長期の闘争となった才能教育闘争の始まりである。闘争の過程で会社側は、2008年11月に団体協約を解約し、2010年12月には組合員全員を解雇した。

 ■「特殊雇用労働者」

 才能教育闘争の最大の争点は労働者性の認定と団体協約の締結だ。
 学習誌教師は契約形態としては「事業者」(個人事業主)だが、実態は雇用労働者そのものの、いわゆる「特殊雇用労働者」だ。業務を発注する側は、学習誌教師は労働者ではないとし、労働組合を認めず、団体協約を拒否する。
 学習誌教師の他にも、ゴルフキャディー、代理運転、ダンプ・トラック・宅配・バイク便運転、建設機械操縦、看病、馬匹管理、保険設計、エキストラなどが特殊雇用職であり、そこで働く労働者は劣悪な労働環境と無権利状態に対し改善を求めて闘っている。したがって才能教育闘争は、特殊雇用労働者全体(250万人とされる)の問題を代弁する闘いでもある。
 労働者の闘いにより特殊雇用問題に焦点があてられる中、2012年11月にソウル行政裁判所(行政事件を扱う第一審裁判所)は、才能教育支部の被解雇者が提起した不当解雇撤回訴訟において「才能教育の学習誌教師は労働組合法が定めた労働者」とする、2005年最高裁判決と相反する判決を出した。

 ■労使合意と意見対立

 撤去攻撃を受けながらの本社前でのテント籠城、そして2人の組合員による今年2月からの惠化洞聖堂鐘楼での高所籠城(才能教育社長室から見える)の末、8月26日、労使合意が実現した。団体協約の原状回復と解雇者12人全員の原職復帰(1人はがんで死亡)を含む内容だ。
 ただ、この合意に対してユミョンジャ前支部長とカンジョンスク前学習誌労組委員長は、「『団体協約原状回復』は事実上空文句に過ぎず、手数料制度を含むその他の合意案も実利的には何も保障されていない」として反対の立場を表明している。闘争をすべて解除した状態では、合意通り交渉を進めても核心要求をかちとることはできない、とする主張だ。
 これに対し現執行部は、教師に自腹を切らせる悪制度を廃止できなかったことなど不満も残る内容に遺憾を示しつつも、現場に復帰して組織化に力を入れると反論している。何よりも、労働組合を認めることになるため会社側が最後まで譲らなかった「団体協約の原状回復」で合意したことを最重要視している。(支部は8月25日に行われた組合員総会の場で、組合員11人のうち出席9人、賛成8人、反対1で暫定合意案を可決している。)
 いずれにしても、特殊雇用職唯一の団体協約を原状回復し、労働者性を認めさせる闘いとして、今後の原則的な闘いがますます重要になっている。