▼特集 Ⅱ 派遣法撤廃、過労死根絶、賃下げ攻撃粉砕へ団結を

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月刊『国際労働運動』48頁(0451号03面02)(2014/03/01)


▼特集 青年を先頭に14春闘を闘おう Ⅱ
 派遣法撤廃、過労死根絶、賃下げ攻撃粉砕へ団結を
 長時間労働で「過労死」多発――国鉄決戦を軸に反撃しよう

(図 過労死・過労自殺にかかわる労災請求件数の推移)
(図 若年層に多発する過労自殺)

青年に過労死・過労自殺強制する過酷な労働実態

「青年の職場から」

 革共同の機関紙『前進』には、「闘いは進む/青年の職場から」が連載されている。その中に次のような内容の投稿がある(1月13日付、要旨)。
 「私はいま民間の中小企業で働いています。労働組合はありません。就業規則すら社員に満足に周知されておらず、しかも賃金規定の抜け落ちているでたらめなものです。職場はどの部署も人員不足です。いくらやっても仕事は終わらず、期限に間に合わせようとすればミスや不備が発生し、『自己責任』として恫喝される。私自身、1日4時間以上は超過勤務をし、それでも仕事は片付きません。私は好きこのんで1日14時間以上も職場にいるのでしょうか。ストライキ会議(首都圏闘う労働組合『生きさせろ!』会議)の14春闘統一スローガンに『過労死絶対阻止』が結実したことは闘いの前進の必然だと感じています。生活のために働いているのに働いて死ぬ――この矛盾を資本が強制しているのであって、それは200年前からそうだった。1ミリの正義もない。過労死・過労自殺を根絶する力は労働者に、労働組合にこそある。全世界の過労死・過労自殺予備軍の状況下にある仲間に、自分もその1人として訴えたい。『労働力商品であることをやめよう! 団結して闘おう!』と。われわれ労働者は資本のために過労死する義理はない。破綻した新自由主義にとどめをさすのが14春闘です」
 このように、多くの青年労働者が「過労死・過労自殺予備軍」の状況下で闘おうとしている。

過労死・過労自殺の実態

 2012年度の労災補償状況に関する厚生労働省の発表によれば、過労死にかかわる脳・心臓疾患での労災認定は前年度より28人増の338人(うち死亡123人)。過労自殺にかかわる精神疾患での認定は、前年度1・5倍の475人(うち自殺・自殺未遂は93人)に上り、3年連続で過去最多を更新した。
 労働基準法では、使用者は労働者を1週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならない。だが、労基法には時間外労働協定(三六協定)による抜け道があるために、働き過ぎの基準としての法定労働時間は、残業手当の支払基準以外の意味を失っている。職場に蔓延する賃金不払い残業(いわゆるサービス残業)においてはその意味さえない。日本の労働者は「死ぬほど働く」現実に置かれている。
 「急性死」や「突然死」と言われていた労働者の死亡を産業医が「過労死」と呼びはじめたのは、70年代半ばからだ。73年のオイルショックを契機とした74~75年恐慌以降、資本は「減量経営」という名の合理化を強行し、人員削減と生産技術のME化を背景に、残業(時間外・休日労働)が長くなり、労働時間が増勢に転じ、特に男性の間で過重労働に起因する健康障害が多発するようになった。この頃、労働組合の労資協調化が進み、ストライキ件数も74年をピークに減り続ける。そして、過労死が社会問題化したのは80年代の後半である。

「ブラック企業」で若者に多い過労自殺

 過労死にかかわる労災請求件数は、「過労死110番」が開設された88年度とその翌年度は増加した後、バブル崩壊とともに減少した。その後、93年度から07年度にかけては、380件から931件へと大幅に増加した。08年度と09年度は、リーマン・ショックで残業が減った影響で減少したが、10年度以降、再び増加している。
 過労自殺に関して注目されるのは、若者の発症が増え続けていることである。グラフに明らかなように、40代、30代、20代へと下がるほど、過労死に比べ過労自殺が多い。19歳以下では過労死はゼロにもかかわらず過労自殺は40件ある(08~11年度)。これには、新自由主義大学の下で「就活」に追われる学生の自殺も含まれている。
 「ブラック企業」として有名な大手居酒屋チェーン「和民」で働いていた26歳の女性労働者の自殺が過重労働による労災であると、神奈川労働局が2012年2月21日に認定した。彼女が08年に入社した時の「基本シフト」は午後4時から午前1時(実働8時間、拘束9時間)となっていたが、実際は開店2時間前の午後3時から閉店30分後の午前3時半まで、午前5時閉店の時は午前6時まで、連日のように12時間を超える勤務を強いられ、最長連続7日に及ぶ朝5時までの深夜勤や休日のボランティア研修などもあった。そういう中で精神疾患を患って入社後約2カ月で自殺に追い込まれた。彼女の手帳には「からだが痛いです。からだがつらいです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けてください。誰か助けてください」というメモが残されていたという。

1日24時間拘束も可能

 長時間労働の末に過労死した例として、「過労死110番」をとおして最初に労災認定を受け、遺族が企業の責任を追及して裁判を起こし、完全勝利和解(94年2月)をかちとった平岡悟さんのケースがある。彼は椿本精工で作業長職の「多能工」として働き、
88年2月に48歳で死亡した。拘束時間は、死亡前1年間の拘束時間から勘案すると、1年の自然時間8760時間の半分前後になる。これは365日休みなく、1日11時間の拘束勤務を続けたに等しい。
 このような長時間労働が強制されたのは、三六協定のためである。このケースでは、「1日について延長することができる労働時間」を全業務について「男子5時間、女子2時間」とし、但し書きで「男子の場合は、生産工程の都合、機械の修理、保全等により15時間以内の時間外労働をさせることがある」と断っている。これは通常の拘束9時間(所定内8時間+休憩1時間)を15時間延長して、1日24時間働かせることも可能な青天井の協定である。とうてい許されない現実である。
 しかし、これは特殊な例ではない。第Ⅰ章でも触れたが、キヤノン(日本経団連の前会長・御手洗が会長を務めていた)では、三六協定で最大延長時間は月90時間、年1080時間だった。同社のある事業場では、最大で月80時間、年700時間働かせることができる協定を結んでいるが、その場合の1日の延長することができる時間は15時間である。これによって、1日24時間働かせることができる。キヤノンでは実際に過労死や過労自殺が起きている。

階級的労働運動の復権を

 以上見てきた過労死・過労自殺の実態は、『過労死は何を告発しているか』(森岡孝二著、岩波現代文庫、13年8月刊)を参考にしている。筆者は、過労死が多発した要因として、「ストライキ件数や労働争議参加人員が減少」したこと、「大方の労働組合は総評の解体と、連合の発足の最中にあり、有効な残業規制を行えなかった」ことを挙げているが、「過労死防止運動」としては、「過労死防止基本法」の制定運動に絞り込んでいく。
 だが、問われているのは、労働者・労働組合の団結と闘いなのだ。階級的労働運動を復権してこそ、過労死は根絶することができるのだ。
 合同・一般労組全国協小竹運輸グループ労働組合は、2012年11月に労働者が会社構内で心筋梗塞で亡くなったことに、真正面から闘い、遺族と協力して、13年5月に労災認定をかちとっている。
 動労千葉は、エルダーの組合員がCTS(千葉鉄道サービス)において13年8月に成田空港駅で勤務中に亡くなった問題でCTSを追及して闘っている。1勤務で4~5万歩も歩かせたり、夕食を取れる休憩時間も確保されていない実態を暴いている。
 今春闘を「過労死阻止春闘」として闘おう。

(写真 JR北海道のレール点検数値改ざん問題で、解雇5人をはじめ75人が処分された【1月22日付朝日新聞】)
(写真 最高裁に「JR復帰判決を出せ」と怒りのこぶしを突き上げる動労総連合の組合員ら【1月22日】)
(写真 常磐線のいわき~広野間での「ポケモントレイン」運行に反対しストに決起した動労水戸【1月31日 いわき駅前】)

解雇撤回・JR復帰、外注化阻止・非正規職撤廃を

分割・民営化に決着を

 国鉄分割・民営化でJR不採用が通知されてから27年目の2月16日、東京、北海道、九州で国鉄集会が開催され、闘う労働者は決意も新たに解雇撤回・JR復帰、外注化阻止・非正規職撤廃へ闘う態勢を打ち固めた。
 これまで見てきた労働者派遣法の問題も、過労死の問題も、国鉄分割・民営化の新自由主義攻撃により、闘う労働組合が徹底的に解体され、翼賛化してきたことによってもたらされた現実だ。
 だが、動労千葉は国鉄分割・民営化に唯一ストライキで闘い、JR体制下でも団結を維持し、組織を拡大して闘い抜いている。動労総連合傘下の動労水戸、動労連帯高崎、動労西日本も同様に意気高く闘っている。また、和解を拒否して闘う国労闘争団の不屈の闘いがある。この国鉄労働者の闘いで、今こそ分割・民営化に決着を付ける時だ。

JR北海道による現場労働者の解雇を許すな

 国鉄分割・民営化の破産は、JR北海道の現実に明らかだ。
 昨年9月19日、JR函館本線の大沼駅で貨物列車が脱線する事故が起きた。その原因は、線路の幅(軌間)が37㍉も拡大していたのを放置していたことだと報道された。しかも、レール検査データを改ざんしていたという。さらに、そうしたレール異常の放置は、当初は9カ所と発表されたが、最終的に267カ所だったと報道されている。
 1月21日、JR北海道は、現場労働者に責任を転嫁する懲戒解雇などの処分を行った。同時に国土交通省はJR北海道に監督命令と事業改善命令を通知した。2月10日には、国交省が国に虚偽のデータを提出して監査を妨げたなどとして、鉄道事業法違反(虚偽報告および検査妨害)の疑いで北海道警に刑事告発した。まさに異例の事態だ。
 JR北海道は大沼保線管理室の現場労働者2人を、大沼駅脱線事故直後にデータ改ざんしたとして懲戒解雇にした。うち1人は23歳の青年だ。この2人は刑事責任を問われる可能性が大きい。
 大沼保線管理室の監督責任者として函館保線所長、大沼と函館の保線管理室助役は諭旨解雇になり、現場労働者ら11人は出勤停止など、合計75人が処分された。
 他方、野島誠社長ら会社幹部13人は、役員報酬を最大50%カットされただけで、「現場がデータ改ざんを勝手にやり、役員は知らなかった」と責任逃れに汲々としている。
 公表されただけでもデータ改ざんが行われたのは保線の全44部署のうち33部署に上る。改ざんが保線区トップの指示で組織的に行われたことは明らかだ。
 事故後、国交省はJR北海道に特別監査を行ったが、監査に入ることはJRに事前に通知された。だからJR北海道は、監査の前日にもデータ改ざんを指示し、証拠隠滅を行ったのだ。全責任はJR資本と政府・国交省にある。現場労働者には何の責任もない。トップの野島たちこそ監獄に行くべきだ。

人員削減と外注化が原因

 JR北海道では、11年5月の石勝線特急列車炎上事故など、事故が相次いで起きている。また、保守部門などでJR社員や下請け労働者が列車にはねられる触車事故、転落、感電などが起きている。昨年6月25日には根室線で保線の下請け労働者が触車事故で亡くなった。まさに、安全崩壊の事態だ。
 これらの要因は、国鉄分割・民営化による大量解雇と、2万2640人を7千人に減らしたJR体制下での要員削減、保守部門の外注化と保安費削減にある。
 さらに、これを受け入れてきた労働組合、特にJR総連・JR北海道労組の罪は重い。JR総連カクマルはマスコミからも「人減らしや予算圧縮に主要労組は反発せず、なれ合いを選んだ」(日経新聞2・3付)と言われるほどに腐っている。国労も約200人いるが、何の声も上げない。
 もし、北海道に動労千葉のような組合があれば、事態はまったく違ったであろう。現場から怒りの声を上げ、反合・運転保安闘争をたたきつけるだろう。問われているのは、ここでも労働組合の再生だ。

歴代社長2人が自殺

 1月15日に遺体で発見された坂本真一相談役(元社長)は、「経営陣とカクマルの闇を一番知っていた人物」で、今後の調査で自分の弱みが噴出することを恐れて自殺したと言われている。11年9月には現役社長だった中島尚俊も自殺している。
 歴代社長の2人の自殺は何を意味するのか。まだ、すべてが闇の中だ。また、これは1949年の「下山事件」を想起させる。定員法による国鉄の10万人首切りが問題となり、第1次首切りが通告された翌日、当時の下山国鉄総裁が常磐線で轢死体で発見された。これも自殺だと言われるが、当時、「共産党の仕業だ」とフレームアップされ、弾圧された。もちろん、これと同一視はできないが、国鉄分割・民営化とJR体制は、もっともっと解明されなければならない重大な問題があるのだ。

解雇撤回・JR復帰へ最高裁10万筆署名を

 こうした中で、動労千葉の1047名解雇撤回闘争が決戦を迎えている。
 昨年9月25日、東京高裁・難波裁判長は、動労千葉の鉄建公団訴訟において一審の東京地裁・白石判決に続いて、〝国鉄当局が動労千葉組合員を不利益に取り扱う目的・動機(不当労働行為意思)の下に名簿不記載基準を策定し、採用候補者名簿から外した〟と明確に認定した。国鉄分割・民営化は不当労働行為であったという「国鉄改革の真実」を暴き、不屈に闘い抜いてかちとった画期的な判決だ。
 しかし、難波裁判長は、国鉄とJRは別法人であり、JRには「採用の自由」があり、仮に採用候補者名簿に原告の名が記載されていても「直ちにJRに採用されることを意味するものではない」と言い逃れを図り、500万円の慰謝料のみを命じた。
 だが判決が〝国鉄が採用差別をやらなくても、JRが採用差別をやった可能性がある〟としたことは、「井手文書」(元国鉄総裁室長で、JR西日本会長であった井手を囲む座談会)で暴露された、国鉄当局の井手や葛西がJR設立委員長の斎藤英四郎のところに足しげく通い共謀して不採用基準をつくったという真実を(井手文書に触れることから逃げながらも)、事実上認めてしまったとも言える。
 裁判は、最高裁での決戦に突入した。なんとしても国鉄改革法体制を打ち破り、解雇撤回・JR復帰をかちとらなければならない。そのための10万筆署名に全力を挙げよう。1月22日、最高裁への要請行動が行われ、1万7416筆の署名が提出された。署名運動を全国で展開しよう。

14春闘の決戦へ労組拠点の建設を

 動労千葉は、今春闘を「組織拡大春闘」と位置づけ、闘いを開始した。2月3日には、ライフサイクル制度により11年2月に千葉運転区から千葉駅に配転されている北嶋琢磨青年部長が、3年が経った2月1日時点でも運転士に戻されていないことに対し、千葉運転区前で抗議した。
 その上で、今春闘では、外注化された検修・構内部門でCTSに出向に出されている労働者を取り戻すために、偽装請負―強制出向を許さず、JRとCTSの双方で組織拡大を進めること、JR貨物の大幅賃下げを粉砕することなどを課題として全力で決起しようとしている。
 動労水戸は1月31日、常磐線のいわき~広野間での「ポケモントレイン」の運行(2月1、2日)に反対し、「JRは子どもを被曝させるな」とストを貫徹した。福島の怒りに応え、3・11反原発福島行動14に総決起しよう。
 国鉄、郵政、自治体、教労の4大産別をはじめ、全産別で闘う労働組合の拠点を建設しよう。マルクス主義青年労働者同盟は昨年末、第10回大会を開催し、「党と労働組合の一体的建設」の先頭で闘うことを宣言した。
 「現代革命への挑戦」の開始として、鈴木たつお候補を推し革命的なうねりをつくり出した東京都知事選決戦を引き継ぎ、14春闘を闘おう。