■特集 青年を先頭に14春闘を闘おう 派遣法撤廃、過労死根絶、賃下げ攻撃粉砕へ団結を

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月刊『国際労働運動』48頁(0451号03面01)(2014/03/01)


■特集 青年を先頭に14春闘を闘おう
 派遣法撤廃、過労死根絶、賃下げ攻撃粉砕へ団結を

(写真 動労千葉が春闘第1波で、駅に配転されている北嶋青年部長を直ちに運転士に戻せと抗議行動【2月3日 JR千葉運転区前】)

はじめに

 2014年春闘は、安倍政権と日帝ブルジョアジーによる賃下げと賃金制度改悪攻撃と対決し、労働者階級の生存をかけて大幅賃上げをかちとる闘いだ。同時に、民営化・外注化を粉砕し、非正規職の3月末雇い止め解雇を阻止し、過労死を許さず8時間労働制を守る闘いだ。さらに今通常国会での労働者派遣法改悪を阻止する決戦だ。
 第Ⅰ章では、資本家の春闘対処方針である日本経団連の14年版経営労働政策委員会報告を全面批判し、労働者派遣法の歴史的経過と改悪の狙いを暴いている。
 第Ⅱ章は、青年労働者をはじめとする労働者階級の状態に迫り、特に過労死の実態を解明する。そして、国鉄決戦を先頭に労働組合を再生させることを訴えている。
 第Ⅲ章では、2・25ゼネストに上りつめる韓国・民主労総をはじめとする全世界の労働者階級との国際連帯闘争を発展させることを呼びかけている。

▼特集 青年を先頭に14春闘を闘おう Ⅰ 経労委報告と徹底対決を――非正規化進める派遣法撤廃へ

大恐慌は大失業・戦争・革命へ

 14春闘を取り巻く内外の情勢は激動している。最末期帝国主義の絶望的延命形態である新自由主義が崩壊を始め、その対極で青年労働者を先頭とする労働者階級人民の根源的な怒りが爆発し、全世界で巨大なデモ、ストライキが闘われ、まさに革命情勢と言える時代に突入している。
 〈大恐慌は大失業と戦争を生み出すとともに、革命を生み出す〉――革共同政治局が2014年1・1アピールで打ち出した時代認識の核心である。日本の労働者階級は、今こそ全世界の労働者階級と連帯し、「現代革命への挑戦」をやり抜こう。
 07年のパリバ・ショック、08年のリーマン・ショックを契機にして爆発した今次の世界大恐慌は、長期大不況化の様相を呈している。この中で過剰資本・過剰生産力の深刻な現実が突き出され、それは解決不能である。
 米・欧・日の各帝国主義は、超金融緩和によってマネーを市場に注ぎ込むことにより、景気浮揚を図ろうとしてきた。アメリカ帝国主義の量的金融緩和策は、09年にQE1(量的緩和策第1弾)として始まり、12年にはQE3が実施されている。しかし、いつまでも金融緩和を続ければ、インフレの爆発、米国債暴落、ドル暴落が避けられず、FRB(米連邦準備制度理事会)は「出口戦略」を追求してきたが、そのたびに市場は動揺を繰り返している。今年に入ってFRBが金融緩和縮小を決めると、アルゼンチンなどの新興国に流れていた資金が引き揚げられ、新興国が軒並み通貨安となり、それが世界的な株安を引き起こした。日経平均株価は、今年に入って1割も下落している。
 日本帝国主義・安倍政権の「アベノミクス」、黒田・日銀の「異次元の金融緩和」も破綻を開始した。
 こうした中で、巨大独占体や国家間の競争戦=争闘戦が激化し、商品市場、資本市場をめぐるすさまじい分割戦・再分割戦が激化している。特に原発・鉄道などの大規模な「パッケージ輸出」をめぐり、激しい争闘戦が繰り広げられている。国家間の争闘戦の帝国主義的侵略的展開は、戦争にまで行き着く。

安倍政権の改憲・戦争国家化攻撃

 安倍政権は、昨年、特定秘密保護法を強行採決したのに続き、1月から始まった今通常国会では、「積極的平和主義」の名の下に、集団的自衛権行使容認を狙い、憲法9条改悪をはじめとする改憲への道をひた走ろうとしている。
 また、沖縄・普天間基地の名護・辺野古への移設を、名護市長選での推進派の敗北にもかかわらず強行する構えだ。さらに、安倍は昨年12月26日には靖国神社参拝を強行し、安倍が1月25日にNHKの新会長に据えた籾井は、「従軍慰安婦はどこの国にもあった」と発言する極悪の人物であることなど、国家主義・排外主義を全面化させている。

政労使会議「賃上げ合意」のペテン

 昨年12月20日、政府と日本経団連などの財界団体、連合が政労使会議で「合意文書」を交わした。そこでは、「賃金上昇等について経済界への要請等の取組を行う」とされているが、日本経団連は、後述するように、ベースアップを否定し、定期昇給制度の解体を狙っている。また、非正規雇用労働者の問題に関し、「多様な形態の正規雇用労働者の実現・普及」を掲げている。これも後述するように、「限定正社員制度」の導入を図ろうとするものだ。

国家戦略特区の狙い

 昨年12月、安倍政権が「成長戦略」の柱として打ち出した「国家戦略特区法」が成立した。東京、大阪などの大都市をはじめ、「特区」に指定した都市で、徹底した規制緩和を進め、「世界一ビジネスのしやすい環境」をつくるというものだ。
 この「特区法」では導入が見送られたが、産業競争力会議で検討されていた中身は、「解雇特区」と言われたように、特区内では、まさに解雇自由にするものだ。現在、解雇は、「整理解雇4要件(①人員整理の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③被解雇者選定の合理性、④手続きの妥当性)」により、厳しく規制されている。だが特区では、例えば、入社時に「遅刻をすれば解雇」といった条件で契約すれば、実際に遅刻をすると解雇できるなど、解雇を容易にするものだ。
 また、労働契約法では、有期雇用の場合、短期契約を繰り返す労働者が、5年を超えて契約を更新すれば、無期雇用に転換できる(これには、5年を超える前の雇い止めや、6カ月間のクーリングという空白があれば、再び有期で雇える、という問題がある)が、無期転換ができないようにすることも検討されている。
 さらに、労働時間規制も撤廃し、一定の年収がある場合にすべての規制をなくし、深夜や休日にどれだけ働いても割増賃金を払わないことを認める「ホワイトカラー・イグゼンプション」を盛り込もうとしている。

日本経団連の春闘対処方針・「経労委報告」を徹底弾劾する

 このような春闘をめぐる情勢の中で、まず、日本経団連の「2014年版経営労働政策委員会報告」(以下、経労委報告、34~38㌻に抜粋を掲載)を徹底批判する。

安倍政権と完全に一体化

 今年の経労委報告は1月20日に発表された。その副題が「デフレからの脱却と持続的な成長の実現に向けて」とあるように、安倍政権のアベノミクスを全面的に礼賛し、安倍政権と完全に一体化していることが第一の特徴である。
 米倉会長は序文で、「安倍政権の経済政策によって企業を取り巻く環境が大きく改善したことを受けて、今年は、長期にわたってわが国企業を苦しめてきたデフレからの脱却を実現する好機を迎えている」「企業が世界で一番活躍しやすい国づくりを進めることによって、内外からの投資は加速し、持続的な経済成長の基盤は揺るぎないものとなっていこう」と書いている。
 本文でも「安倍政権による異次元の経済政策(三本の矢)により、わが国企業を取り巻く経営環境は大幅に改善してきている」「円高の是正や好調な内需を背景として、自動車などの輸出関連産業、建設業などの内需関連産業を中心に、企業業績が大幅に改善している」と、安倍の「成長戦略」をバラ色に描こうとしている。
 しかし「中小企業における業況判断や収益の改善は大企業に比べて遅れている」と書かざるを得ない。実際に利益を享受しているのは一部の輸出産業だけだ。日本経済全体で見れば、13年の貿易統計によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は11兆674
5億円の赤字で、過去最大となった。円安と原油などの輸入が増加したのが要因だが、製造業の輸出そのものが電機産業などで伸びていない。
 それでも、経労委報告は、「経営環境のさらなる改善に向けて、今後は『第三の矢』である成長戦略を着実に進めていくことが求められる」として、「労使一丸で生産性の向上に取り組むこと」を労働組合に強制すると言うのだ。
 また、原発の再稼働を推進すべきとしているのも、安倍政権との一体化を示すものだ。「最近の値上げは原発の早期再稼働を前提としており、再稼働が実現しない場合、さらなる値上げが行われる可能性が高い」と、電気料金の値上げを恫喝材料にして、「原発の再稼働プロセスを加速化していくべき」と言うのだ。
 さらに、「社会保障給付の重点化・効率化」と称して、消費税率の引き上げの上に、社会保障の解体を主張している。法人税をめぐっては、「企業だけが優遇され、恩恵を受けているのではない」として、「法人税実効税率の引き下げ」を要求している。

連合の屈服を突いて「労使一丸」を強制

 第一で触れた「労使一丸」ということは、「いわゆる春闘不要論に対する考え方」の項目に端的に表れている。
 経労委報告は、「近年、『春闘は不要ではないか』との指摘がある」「確かに、労働組合が実力行使を背景として賃金水準の社会的横断化を意図して闘うという意味での『春闘』は、もはや終焉している」、しかし、「競争力をいかに強化するかを労使で虚心坦懐に話し合い、方向性を模索し確認し合う建設的な討議の場として、春季労使交渉・協議の意義や重要性はむしろ高まっている」と書いている。
 「闘う春闘」は終焉したが、競争力強化のために労使が話し合う場として重要性は高まっていると言うのだ。労働組合、つまり連合が完全に資本に屈服し、ここまで資本家階級になめられているのかということを示すものだ。しかしこれは、労働組合を巻き込んでいかなければ、その支配体制が崩れるということに対する危機感の表れでもある。闘う労働組合が甦り、真っ向から闘う春闘が再生されるなら、労働者の怒りの爆発によって自らの支配が打ち倒されるということを恐怖しているのである。これが第二の特徴である。

アジアの労働者の闘いの圧殺を狙う

 第三の特徴は、経労委報告に初めて入った項目である。それは「海外労使紛争の現状と課題」だ。「わが国企業の主な進出先であるアジア各国において、2000年代半ば以降、労使紛争が増加している」ことに大打撃を受けているのだ。日系企業においても、「怠業による生産性の低下やストライキ、抗議行動の発生による操業停止、長時間の軟禁、暴力行為」などがあるとして、具体例としてインドネシアを挙げる。
 本誌2月号8~11㌻で取り上げたように、インドネシアの労働者階級の最賃引き上げなどを求めた13年10~11月のゼネストは、日系企業をも追いつめている。そして、その圧殺を狙っているのが日本の連合傘下の金属労協(JCM)であり、日本共産党だ。
 経労委報告は、「労使紛争の未然防止」のために、「日本から派遣した従業員」に対して、現地従業員とのコミュニケーションを重ねることなどを求めている。そして、それが「上部団体等の外部からの不当な介入を防ぐ」として、労働組合のナショナルセンターの介入を絶対に許すな、と叫んでいるのである。
 われわれは、逆に、アジアの闘う労働組合との国際連帯を深め、日本帝国主義を打倒する共同の闘いを強めなければならない。

(図 正規雇用者と非正規雇用者の推移)
限定正社員制度の活用、裁量労働制の見直し

 第四の特徴は、これもまた、安倍政権の攻撃の方向と一体化し、「勤務地等限定正社員(限定正社員)の活用」や「裁量労働制の見直し」を打ち出していることである。
 その前提として、非正規雇用労働者の増大を全面的に居直っている。経労委報告にも「近年、非正規労働者が増加している。2013年1~11月平均で非正規労働者数は約1906万人、雇用者全体に占める割合は36・6%に達している」と、その隠しようもない実態を記述している。だが、その増加の要因は「世帯主の配偶者」であるとして、多くの青年労働者が非正規労働者に突き落とされている現実を押し隠すことに躍起となっている。
 その上で、「多様な働き方の推進」と称して「『正規雇用、非正規雇用の二極化論』から早期に脱却すべき」と言いなし、「勤務地等限定正社員の活用」を打ち出している。これは、すでに日本郵政がJP労組の容認の下に今年春からの導入を決め、ユニクロは07年から導入している「地域限定正社員」を全社会に拡大していこうというものだ。
 この「限定正社員」は、「正社員」とは名ばかりで、低賃金で不安定な雇用であることに変わりはない。経労委報告では、「限定正社員に対する使用者の雇用保障責任は、従来型の正社員と同様、労働契約法第16条に規定される解雇権濫用法理が適用されるが、その判断において当然には同列に扱われないと解釈されており、この点をより明確にする法整備が必要である」としている。労働契約法第16条とは、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定したものだ。日本経団連は、この規制を取っ払い、例えば、働いている事業所が閉鎖されたりした場合に、即解雇できるようにせよ、と言っているのだ。
 さらに「裁量労働制の見直しをはじめとする労働時間制度改革」である。経労委報告は、「現行の労働基準法は、明治時代にできた工場法の流れを汲むため、費やした時間に比例して仕事の成果が現れる労働者の時間管理には適するが、業務遂行の方法や時間配分を自らの裁量で決定し、仕事の成果と労働時間とが必ずしも比例しない一部事務職や研究職就労実態とは乖離している」と、労基法を攻撃し、「企画業務型裁量労働制の対象業務・対象拡大」を主張している。
 同時に、「現在、労働者の働き過ぎ防止が課題となっている」と、過労死・過労自殺が多発する現状を開き直った上で、「特別条項付き三六協定を締結し、やむを得ず月100時間以上の時間外・休日労働が発生した場合には、一定要件のもと、労働者に医師の面接指導を受けさせることを徹底すべき」と言うのである。厚生労働省が定めている「過労死ライン」の時間外労働は月80時間である。それをも超える月100時間以上の時間外・休日労働を強制した上で、医師の面接を受けさせればいいと言うのだ。なんという資本の強欲か!
 ここでのキーワードは「労使自治」である。つまり、連合傘下の御用労組との「労使自治」によって労働時間を決めるべきとしていることだ。実際に、キヤノンは、1日24時間働かせてもよいとする三六協定を労働組合との間で結んでいる。裁量労働制も、「労使自治」で青天井だということだ。

定昇制度の解体も主張

 第五の特徴は、春闘の最大の課題である賃金をめぐって、ベースアップを軸とする賃上げを否定するだけでなく、定昇制度の解体をも叫んでいることである。
 「『賃上げ=ベースアップ』との誤解が多い」と言いなし、「ベースアップは(賃上げの)選択肢の一つ」に過ぎないとしている。
 さらに、「そもそも定期昇給という概念がない賃金制度を有する企業があることなどを踏まえると、毎年春における、賃金水準の改定を『定期賃金改定』として捉えることが、名実ともに実態に合致している」として、勤続年数に応じて定期的に昇給する定昇制度そのものをなくすことを主張しているのである。
 以上、14年度版経労委報告の特徴とその反労働者性を見てきた。総じて、解雇規制や社会保障、賃金制度の解体をとおして、資本に対するあらゆる規制を取っ払い、資本が自由に活動し、好き放題に労働者を搾取し尽くすという、新自由主義政策の徹底を求める、断じて許せないものだ。
 経労委報告と対決し、今こそ闘う春闘を復権しよう。

全業務を無期限に総非正規化狙う労働者派遣法改悪案

 次に、今通常国会で改悪が狙われている労働者派遣法について見ていく。

国鉄分割・民営化―国鉄改革法と一体で

 今次の改悪案を批判する前に、そもそも労働者派遣法の制定と改悪に次ぐ改悪がどのような経過をたどってきたのかを振り返ってみたい。
 労働者派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」)が成立したのは、1985年6月である(施行は86年7月)。これとほぼ同時期、中曽根政権が85年10月に「国鉄改革のための基本方針」を決定し、86年11月、国鉄改革関連8法が成立し、87年4月に国鉄分割・民営化が強行された。
 労働者派遣法制定と国鉄分割・民営化がほぼ同時期に強行されたのは、けっして偶然ではない。労働者派遣法は、労働者の非正規化を決定的に推し進め、国鉄改革法は、「一旦全員解雇・選別再雇用」という、民営化による解雇攻撃の先鞭を付けたものである。両者は、二つにして一つなのである。

当初は13業務に限定

 そもそも、労働者派遣は、日本では古くは江戸時代の口入屋と呼ばれる人身売買業が労働者斡旋を行っていたことに端を発する。その劣悪な労働環境が問題となったため、職業安定法(1947年成立)により間接雇用が禁止された。にもかかわらず、「業務処理請負業」として、違法な労働者派遣を行う企業が存在していた。特に74~75年恐慌の頃から、そうした業者が急増していた。
 そのため、「職業安定法と相まって労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もって派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする」(第1条)として労働者派遣法が制定された。
 労働者派遣とは、派遣元の派遣会社が労働者を雇い、他の会社に労働者を派遣して働かせ、派遣会社は派遣先から労働者の賃金と派遣会社の利益を合わせて派遣料を受け取るという仕組みである。事実上の中間搾取(ピンハネ)が行われるのだ。こういう間接雇用のため、派遣労働者は、派遣先との雇用関係がないので職場で賃金や労働条件について交渉することもできず、事実上、労働法の保護を受けられない無権利状態に置かれるのだ。
 だから、制定当初は、ソフトウェア開発、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書などの13業務に限定されていたのだ(ポジティブリスト)。

対象業務を拡大し製造業も解禁

 96年の改悪では、対象業務が26業務に拡大。99年の改悪では、原則自由化、ネガティブリストになり、港湾運送、建設、警備、医療、製造以外に派遣業務が拡大された。
 2004年には、物の製造業の派遣が解禁され、青年をはじめとする多くの労働者が低賃金で製造ラインで働かされる事態が現出した。この時点では、製造業の派遣は1年に制限されていたが、07年3月に3年まで延長された。この期間延長を見越して、06年以降、「請負」から「派遣」へのシフトが進んだ。06年7月以降、「偽装請負」が社会問題化したのも、その要因だ。偽装請負は、請負労働者に対して、メーカーが直接指示・命令を出す違法行為だ。松下電器やキヤノン、トヨタ自動車などの大手企業が、実態は「派遣」であるにもかかわらず、雇用期限のない「請負」を装っていたのだ。

派遣切り―年越し派遣村と09年問題

 そして、08年のリーマン・ショック後には、製造業の「日雇い派遣」などで働く労働者が首を切られる「派遣切り」が起き、年末には「年越し派遣村」がつくられる事態となった。
 もう一つ、「2009年問題」があった。派遣は、雇用期間が3年を超えると、企業は派遣労働者に直接雇用(期間工を含む正社員)を申し出る義務が生じる。06年から3年が経過した09年、派遣労働者の大多数が一斉に雇用期限を迎えた。派遣は3カ月の契約解除期間があれば再契約できるが、この「空白の3カ月」に製造現場の労働力不足から工場が操業停止に陥りかねない。そこで、松下電器やキヤノンなどの大手メーカーは、直接雇用と請負にシフトした。
 08年度に399万人にまで増えた派遣労働者が09年度には97万人も減少したのは、以上の理由による。

(図 派遣労働者数の推移)
(図 労働者派遣制度のイメージ)
派遣法改悪を許さず派遣法撤廃を

 2012年3月の派遣法の改定(同年10月施行)では、日雇い派遣(30日以内の契約)が原則禁止となるなど、一転して規制が強化された。
 そうした中で、昨年8月以降、安倍政権の下で厚生労働省で検討されてきた改悪案について、1月29日に労働政策審議会の労働力需給制度部会が「労働者派遣制度の改正について(報告書)」(39~41㌻に抜粋を掲載)を「建議」し、今通常国会に法案が提出されようとしている。
 改悪案は、一言で言って、派遣労働者を全業務で無制限に使い続けるようにするものだ。
 現行の派遣法では、26の専門業務で無期限の派遣を可能としているが、それ以外では、一つの業務に派遣労働者を従事させられる上限を3年としている。だが、改悪案は、専門業務の区分を撤廃した上で、どの業務でも原則3年を上限とする。しかも、さらに企業が派遣労働者を使いたい場合、労働組合などの意見聴取をすれば、別の労働者に入れ替え、3年ずつ受け入れ延長を繰り返し、実質的に無期限で派遣労働者を使用できるようにするのだ。
 他方、派遣労働者にとって見ると、派遣会社と有期契約を結んでいる場合、同じ職場で働ける期間は最長3年になる。派遣会社との間で無期の雇用契約がある場合、派遣期間の上限を設けないという。
 また、派遣会社に労働者の雇用安定化を義務付け、3年働いた労働者については派遣先に直接雇用を依頼するよう求めている。だが、これは「依頼」に過ぎず、直接雇用となる可能性は低い。直接雇用にならなかった場合は、別の派遣会社での無期雇用とするとしている。
 要するに、派遣労働者は、3年で首を切られるか、一生、派遣労働者として低賃金のままで働かざるを得ない。これでは、派遣労働者にならざるを得ない青年労働者の未来が奪われるのだ。
 なお、日雇い派遣の原則禁止の見直しについては、今回の改悪案では見送られるが、資本側は見直しを求めており、検討課題とされている。
 今春闘の重要な課題として、派遣法改悪阻止、派遣法撤廃を掲げて闘おう。
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14春闘の統一スローガン

●民営化・外注化絶対反対! 労働者派遣法改悪粉砕!
●長時間労働・過労死を許さない! 8時間労働制解体を許すな!
●賃下げ攻撃粉砕! 生きていけるだけの大幅賃上げ獲得!
●非正規職撤廃! 3月末の雇い止め解雇をやめろ!
●福島切り捨て・原発再稼働阻止! 被曝労働拒否闘争を全国に拡大し3・11郡山へ!
●労組解体と戦争の秘密保護法粉砕! 国鉄闘争に勝利し、改憲を阻止しよう!
〔首都圏闘う労働組合「生きさせろ」会議(STRIKE会議)が決定〕
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労働者派遣の制定と改定の経過

1985年6月 労働者派遣法成立
      13業務、ポジティブリスト
1986年7月 派遣法施行(その後、16業務に)
       *86年11月、国鉄改革関連8法成立
        87年4月、国鉄分割・民営化
1996年12月 改定派遣法施行、26業務に拡大
1999年12月 改定派遣法施行
       原則自由化(ネガティブリスト)
2004年3月 改定派遣法施行
      製造業務、医療関連業務を解禁
2007年3月 製造派遣の期間延長(最長3年)
2012年3月 改定派遣法成立
      日雇い派遣の原則禁止(10月施行)
      *12年12月 安倍政権発足
2013年8月 「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」
2014年1月 「労働者派遣制度の改正について(報告書)」建議(全業務、無期限に)
      *通常国会で法案提出予定