■News & Review 日本 三里塚闘争、首都中枢を揺るがす 3・23全国集会から3・26控訴審を闘う

月刊『国際労働運動』48頁(0453号02面03)(2014/05/01)


■News & Review
 日本
 三里塚闘争、首都中枢を揺るがす
 3・23全国集会から3・26控訴審を闘う


 3・23三里塚全国総決起集会とデモが大高揚し、3・26農地裁判控訴審第1回口頭弁論が力強く闘いとられた。労農連帯の力で首都中枢を揺るがし市東孝雄さんの農地を守りぬく決戦が、東京高裁を舞台に開始された。

(写真 晴天下、三里塚芝山連合空港反対同盟主催の全国総決起集会に950人が結集し、「労農連帯で市東さんの農地を守る」と誓い合った【3月23日 東京・芝公園】)

3・23東京で集会

 首都東京に打って出て「農地死守」の決意を表そう――この三里塚芝山連合空港反対同盟の呼びかけに応え、3月23日、東京・芝公園で開かれた全国総決起集会に950人の労働者・農民・学生・市民が結集した。
 清々しい晴天のもと、参加者の熱気が高まる中、ウイングボディのトラック荷台を演台にして正午を前にオープニングライブが始まり、労働歌、反原発ソングなどに続き、大阪から駆けつけた趙博(チョウパギ)さんが「反対同盟の歌」で会場をわかせた。
 12時30分から3分間スピーチが行われた。真っ先に星野暁子さんが立ち、「1971年強制代執行阻止闘争を闘った星野文昭は、獄中から今日の闘争に参加している」と述べ、再審無罪をかちとる決意を表した。全学連の斎藤郁真委員長は、三里塚闘争の正義への確信を述べ、4・25法大集会への決起を訴えた。
 泉州住民の会代表の国賀祥司さんは「関西新空港に反対する闘いは新自由主義との闘いだ」と述べ、労働者と住民の力で関空と泉佐野市・千代松市政を打ち砕く決意を鮮明にした。

(写真 「耕す者に権利あり」の横断幕を持ってデモ【3月23日 東京・銀座】)

〝霞が関へ攻め上る〟

 午後1時、司会の萩原富夫さんが本集会の開会を告げ、「反対同盟は〝霞が関へ攻め上ろう〟の方針の実践として、空港周辺住民への署名・一斉行動を行ってきた。そして東京の反原発、反TPPの怒りと結び、戦争と改憲の安倍政権打倒へと進む。私はおやじ萩原進の遺志を継ぎ、敷地内農地を守り空港廃港まで闘う」と高らかに宣言した。
 北原鉱治事務局長が主催者あいさつに立ち、3日後の口頭弁論への大結集と傍聴を強く呼びかけ、「何が正義かをこの法廷で明らかにする」と意気込みを示した。
 大きな拍手に迎えられて市東孝雄さんが登壇した。「一審千葉地裁の判決はまったく認められない」と怒りを表明し、「7年間裁判闘争を闘い、国策裁判というものを知った。政府は今、企業の農業への参入に道を開き、農地法を改悪しようとしている。農家の問題は、不安定な雇用と低賃金に縛られる労働者の問題とつながっている。あらゆる運動が垣根を越えて連帯しよう」と訴え、控訴審勝利への決意を明らかにした。
 反対同盟顧問弁護団が壇上に勢ぞろいし、葉山岳夫弁護士が貝阿彌裁判長との攻防を報告し、法廷闘争を三里塚現地実力闘争の一環として闘う立場を明らかにした。
 連帯のあいさつとして最初に、動労千葉の田中康宏委員長が発言した。「今日は、かつて小作農たちが不在地主を撃つために鎌を持ち上京してきた情景を見る思いだ」と、国策による市東さんの農地強奪攻撃を断罪し、安倍政権の反動的突出と支配の危機を鋭く指摘した。そして国鉄分割・民営化攻撃との闘いの決着を込めて最高裁で勝利する決意を明らかにした。
 婦人行動隊・宮本麻子さんのカンパアピールに続き、福島からの訴えとして福島市の椎名千恵子さんと福島診療所建設委員会の渡辺馨さんが登壇した。椎名さんは、「原発はいらないと声をあげてきたが、三里塚の地に立って初めて、これはとてつもなく大きなものに立ち向かう覚悟が必要であると分かった。三里塚と福島のつながりを強めよう」と訴えた。
 全国農民会議の農民が緑色ののぼりを林立させて壇上に並んだ。共同代表の小川浩さんは、「安倍政権は農地中間管理機構をつくって農民の土地を取り、5年後には減反政策を完全にやめようとしている。市東さんの農地を守る闘いは全国の農民を守る試金石だ。絶対に守りぬこう」と訴えた。
 発言の最後に動労水戸の石井真一委員長が意気高く、常磐線竜田延伸による被曝強制を許さずストに立ち上がったことを報告した。
 伊藤信晴さんのリードで団結ガンバローを三唱しデモに出発。最先頭で反対同盟の北原事務局長、市東さん、萩原さん、野平聰一さんが「耕す者に権利あり/貝阿彌裁判長は審理を尽くせ」と大書した横断幕を持った。おびただしい数の公安警察と完全武装した機動隊を蹴散らして進む威風堂々たる行進だ。反対同盟の宣伝カーからは宮本さんが農地を守って闘う農民の正義を訴え続けた。
 休日で賑わう新橋、銀座の繁華街で、沿道の人々は大都会のど真ん中に繰り出した「農民のデモ」に圧倒的に注目し、ビラを受け取った。「がんばって!」との声も飛んだ。東京駅近くまで約3㌔のデモを全員が意気高くやり抜き、控訴審への闘志をみなぎらせた。

3・26控訴審始まる

 3月26日、いよいよ東京高裁第19民事部(貝阿彌誠裁判長)での控訴審第1回口頭弁論の当日を迎えた。
 午前8時、裁判所前で情宣活動を開始。10時30分、反対同盟始め、全学連や休暇を取って駆けつけた労働者などが参加してフリートークを行い、周辺を「三里塚農地決戦」の緊張感で満たした。
 正午前に日比谷公園霞門からデモに出発。横断幕を持つ反対同盟を先頭に、200人を超すデモ隊が、検察庁、警視庁、裁判所前を行進し、霞が関一帯を席巻した。
 午後1時、反対同盟と顧問弁護団は、この間集められた農地取り上げに反対する署名8019筆を、東京高裁第19民事部に提出した。

(写真 農地裁判控訴審を前に、日比谷公園から検察庁―警視庁―裁判所へとデモ行進【3月26日 東京・霞が関】)

市東さんが感動の陳述

 102号法廷が100人近い傍聴者で満席となり緊張感が高まる中で、午後2時に開廷した。次回期日を6月25日(水)午後3時と確認した上で、市東さんの意見陳述が行われた。
 市東さんはまず、「一審判決は私から農地を取り上げて、農業をやめろというものです。絶対に受け入れることができません」と確信も固く述べた。そしてスクリーンにスライド写真で南台と天神峰の農地を映しながら耕作状況と作物の品種などについて説明した。
 さらに、成田空港会社(NAA)による違法・不当な土地取得、農地法を悪用しての収用策動、有機農業の土壌の重要性、農業つぶしの国策との闘いの正しさを訴えた。最後に「農業がなくては人は生きられません。農業にこそ公共性がある。誘導路が曲がっているのは農家を虫けらのように扱い、場当たり的に進めてきた空港建設の結果です。貝阿彌裁判長は私の畑に立って、このことをよく考えてほしい」と力強く述べ、「父と私が精魂込めてつくり続けてきた畑の土を提出する」として、容器に満たした滋味豊かな黒い土を差し出し、裁判官らに確かめさせた。
 法廷は感動に満たされ傍聴席から大きな拍手が起きた。耕す農民の怒りと正義の告発だ。
 続いて、弁護団による控訴理由書の陳述に移った。千葉地裁・多見谷裁判長による一審判決は、NAAの主張を丸ごと認め、NAAの違法・不当の一切を不問に付し、さらに独自解釈を加えて空港建設のための農地強奪にお墨付きを与えるという、とんでもない代物だ。弁護団の控訴理由書は、この「国策の論理」=非論理的暴挙を根幹から細部まで粉砕するものとして、まさに弁護団が心血を注いで作成した187㌻に及ぶ大部の書である。
 怒りと気迫のこもった陳述が続く中、裁判長は4時半を過ぎたあたりからそわそわし始め、「あとどのくらい続くのか」と介入してきた。そして裁判官合議の末に「あと数分程度やって、残った分は進行協議を開いて決める」と一方的に言い渡した。
 市東さんの人生と日本農民の行く末がかかった主張だ。不当な制限を許さない! だが弁護団の抗議にもかかわらず、その後もたびたび陳述への打ち切り圧力を加えた末、裁判長は「今日はここまで」と閉廷を宣するや、脱兎のごとく逃げ去ってしまった。
 参議院議員会館講堂で報告集会が開かれた。
 北原事務局長のあいさつに続き、疲れも見せず市東さんが発言に立った。「この控訴審は、日本の農家の生き方を変えるかもしれない。みなさんの力を存分に発揮してぜひ勝たせてください」と訴え、大きな拍手を浴びた。
 続いて弁護団全員が、法廷で全力で闘いぬいた報告と今後の闘いへの展望と決意を表した。
 最後に、萩原富夫さんが一日の闘いをともにやり抜いた人々の労をねぎらい、「6・25の第2回弁論は今日を上回る結集で裁判所を包囲しよう。もっと多くの人々に訴え交流し、闘いの陣形をつくろう」と訴えた。司会の伊藤信晴さんのリードで団結ガンバローを三唱し、一日の激闘を締めくくった。
 反対同盟は、萩原進事務局次長を失った大きな試練をのりこえ、新たな決意と体制で控訴審闘争に勇躍突入した。
 労農連帯の力、闘う全人民の力で市東さんの農地を絶対に守りぬこう。
(田宮龍一)