■News & Review 東アジア 南中国海での戦争に参戦する戦争法案 国際主義で闘い戦争を阻止しよう

月刊『国際労働運動』48頁(0466号02面03)(2015/07/01)


■News & Review 東アジア
 南中国海での戦争に参戦する戦争法案
 国際主義で闘い戦争を阻止しよう


 東アジアは中東、ウクライナとともに世界戦争の危機を激化させている。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立計画への各国の相次ぐ参加表明は、米帝の世界支配力の決定的な後退を突き出した。それゆえに一層、米帝を争闘戦の激烈な展開、〝失ったものを軍事、戦争で取り返す〟政策に駆り立てている。
 米帝は中国の海洋戦略に「リバランス(再均衡)戦略」を打ち出し、軍事的に対峙し、北朝鮮金正恩体制の転覆を狙う朝鮮侵略戦争に突き進んでいる。
 4月28日、日米新ガイドラインが締結され、現在国会では、集団的自衛権の行使を中心に戦争法案が審議されている。その核心は、政府(1%の支配階級であるブルジョアジーの政治委員会)の判断で武力行使(戦争)ができるようにする、ということである。その全権を安倍に委任しろ、それが政府の責任だなどと言っている。冗談じゃない。安倍に労働者は命を預けられるか。とんでもない。これが労働者人民の声だ。
 戦争法案が決まる前にすでに戦争政治が実行されている。そのひとつが南中国海における事態である。
 今、南中国海で米中の軍事衝突の危機が切迫している。

米中の軍事衝突の危機

 ヘーゲル米国防長官は5月31日、シンガポールで開催されているアジア安全保障会議で演説し、南中国海で領有権を主張する中国に対し、地域を不安定化させる行動を控えるよう警告した。さらに国際秩序の根本的原理が脅かされることになれば、「見て見ぬふりはしない」(戦争に訴える)と恫喝を加えた。
 他方、中国軍の孫建国・副総参謀長(海軍上将)は同日、シンガポールで演説し、中国が南中国海で進める岩礁埋め立てや施設建設について「中国の主権の範囲内の問題だ」などと述べ突っぱねた。
 中国海洋戦略は、1992年に打ち出された中国が覇権国家に成長するための海軍建設長期計画。具体的には、2010年までには第一列島線(九州を起点に、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島にいたるラインを指す)に防衛線を敷き、その内側の南中国海・東中国海への米海軍・空軍の侵入を阻止することである。

南中国海の領土紛争

 南中国海は、東アジアとインド洋―中東を往来する世界屈指のシーレーンである。中東から日本に来る石油の大半がここを通っている。米軍の空母機動部隊も南中国海を通行している。
 海域内における大きな島は海南島(中国の海軍基地がある)くらいで、サンゴ礁も含めて中小の島嶼は多く、南海諸島(南沙諸島、中沙諸島、西沙諸島、東沙諸島)、南ナトゥナ諸島、アナンバス諸島がある。そしてこれらの諸島をめぐって領土紛争が起きている。
 現在、激突点となっているのが南沙諸島(スプラトリー諸島)だ。多くの島があるが、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどが領有権を主張して係争しているが、それぞれが実効支配している島々を持っている。
 米帝が問題にしているのがファイアリクロス礁である。中国が最近ここに3000㍍の滑走路を建設した。さらにジョンソン南礁とクアルテロン礁に灯台を設置した。
 中国軍は南中国海で米軍の艦艇や潜水艦に対する能力はあるが、空中では戦闘機の連続飛行能力が2、3時間程度で航空機の燃料補給や離発陸が可能な飛行場の確保が求められていた。
 米帝は、中国に対して「航行の自由」(つまり南中国海での米軍活動の自由)を守るように要求している。そのために警戒監視活動を強化し、沿海域戦闘艦(LCS)やP8哨戒機を飛ばした。国際法で海岸線から12カイリが領海・領空と定められていることから、人工島の12カイリ以内に哨戒機を飛ばして人口島を領土と認めないと突きつけようとしている。
 南沙諸島で偵察中の米無人偵察機「グローバルホーク」に中国機が電波妨害を仕掛けた。5月には公海を飛行していたアメリカ軍所属P―8ポセイドン哨戒機に対して、中国海軍が計8回にわたり強い口調で退去を命じる交信を行っている。衝突寸前の事態が起きている。

進む米比、日比軍事協力

 4月20日から米比合同軍事演習「バリカタン」がフィリピン国内で始まった。去年の倍にあたる1万1000人余りが参加し、30日まで上陸作戦や海上輸送などの訓練を行った。フィリピンは14年4月、アメリカと新たな軍事協定を締結した。事実上の米軍再駐留につながる内容だ。これに対して、フィリピンの労働者人民は反対闘争を闘っている。
 新ガイドライン締結を受けて日本の海上自衛隊の2隻の駆逐艦、フィリピン最新鋭の護衛艦が5月12日、南中国海の係争海域で初の合同演習を実施した。すでに自衛隊は南中国海に入り込んでいるのである。
 訪日していたフィリピンのアキノ大統領は6月5日、自衛隊が将来、南中国海で警戒・監視活動する場合を想定し、給油などのために自衛隊がフィリピン軍の基地を使うことを認める「訪問軍協定」の締結に向けた議論を始めたい意向を示した。
 安倍の「積極的平和主義」とはこのことだ。南中国海における米中対峙・対決に日帝の利害をかけて参戦しようとしているのだ。これは世界戦争・核戦争そのものだ。帝国主義と残存スターリン主義の戦争には、労働者階級は国際主義で闘おう。全世界の労働者が団結して闘えば戦争は止められる。戦争のない新しい労働者の社会を建設することができる。
(宇和島 洋)