東京高裁 小林判決を批判する 農地の取り上げは強制収用そのもの 収用委の代行機関を自認

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週刊『三里塚』02頁(0925号02面02)(2015/08/10)


東京高裁 小林判決を批判する
 農地の取り上げは強制収用そのもの
 収用委の代行機関を自認

(写真 判決後の報告会で怒りを表明する市東孝雄さん【6月12日 東京・霞が関】)

 東京高等裁判所・小林昭彦裁判長は、市東孝雄さんの農地法裁判控訴審において、6月12日、控訴棄却の〝農民殺し判決〟を強行した。市東さんは即日、最高裁判所に上告した。反対同盟顧問弁護団は8月10日、上告理由書を提出した。また、反対同盟は7月12日の事務局会議で、「最高裁・緊急5万人署名」の方針を決定するとともに、この署名運動成功のための「賛同人の呼びかけ」も新たに開始した。市東さん農地法裁判の最高裁決戦が音をたてて始まった。
 この闘いに勝利するために、あらためて東京高裁・小林判決の批判、弾劾を行う。

デタラメ国策判決

 小林判決は90%が一審・多見谷寿郎裁判長による判決の追認である。しかし、「当裁判所による補正」として、小林裁判長独自の論点を突き出すことによって、多見谷判決を上回る国家主義、国益主義をあらわにする極悪判決となっている。
 小林判決の問題点の第一は何よりも、収用委員会になりかわって東京高等裁判所が、強制収用攻撃の当事者を務めることを自認したことである。その実践として、農民にとっての命=農地を奪うという市東さんへの〝死刑判決〟を強行したのだ。
 第二に、しかしその犯罪性への恐怖から、市東さんへの農地取り上げ攻撃が実質的な強制収用攻撃である点について、一審・多見谷判決とともに、卑劣な形式論をもって否定していることである。
 小林判決は、一審同様「解約許可処分は、賃借権消滅という法律効果は生まない」「単に解約の申し入れを許可するにすぎない」と言い、収用手続きを細切れに分断して、その「農地強奪」という悪辣(あくらつ)さを隠蔽(いんぺい)する手法で「実質は強制収用だ」との主張を退けた。
 県知事による「解約許可処分」がなされれば、今現に市東さんの身に起きているように、「解約許可の申し入れ」〜農地明け渡しの提訴〜国策裁判による農地強奪判決〜裁判所による強制執行=事実上の強制収用へと、事態が一気に向かうことは百も承知の上で、「解約許可処分は賃借権消滅という法律効果は生まない」との詭弁(きべん)を言うのだ。
 公的な収用は土地収用法でしか行えない――これが憲法の定めるところだ。農地法や民法を悪用し、裁判所を収用委員会の代行機関に利用した、市東さんへの事実上の強制収用を許してはならない。
 問題点の第三は、最初から最後まで、「国家的公共性」論を貫き、多見谷判決の不徹底性を修正していることである。小林判決は、成田市農業委員会〜県農業会議手続きのデタラメなどの指摘について動揺する多見谷判決を「修正」して、「手続きの可否は大した問題じゃない。成田空港という公共性に鑑み、農地転用が社会通念上妥当かどうかだけを判断すればいい」と叱責している。
 第四は、「一部支配者のための国策とそれに対抗する人民の闘い」という成田空港問題の本質をなすテーマに関して、1㍉の検討も加えていないことだ。このようなものは裁判とは呼べない。
 例えば、旧空港公団が市東さんの底地を買収しておきながら15年間も登記をせず、秘密にしてきた違法に対して判決文は「空港反対闘争があったから仕方なかった」などと、空港会社を全面擁護している。
 では、なぜ反対同盟農民を先頭に歴史上にもまれな抵抗闘争が起きたのか、今もなお続いているのか、こうした空港問題の根本に関する検討はゼロだ。その一方、小林裁判長自ら国策判決を行い、農民圧殺の旗振りを行っているのだ。
 元東京高裁の裁判官・瀬木比呂志氏は『絶望の裁判所』という著書の中で、最高裁事務総局を頂点とした現在の司法制度を批判し、現在の裁判官は最初から権力に寄り添う「法服を着た官僚」と断罪したが、小林昭彦裁判長はそれを超えた農民の死刑執行人だ。
 第1回弁論で、市東さんの畑の土を見て「いい土ですね」などとおためごかしを言ってだまし、結局は〝死刑判決〟を下した小林昭彦。こういう男には人民の怒りの鉄槌が下るであろう。
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