農地法裁判上告審闘争 葉山弁護団事務局長に聞く 最高裁で2審判決破棄させる

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週刊『三里塚』02頁(0928号02面03)(2015/09/28)


農地法裁判上告審闘争
 葉山弁護団事務局長に聞く
 最高裁で2審判決破棄させる


 ――まず東京高裁・小林昭彦裁判長の判決への批判をお願いします。
 葉山 小林裁判長は、3月4日に突如、審議を打ち切り、6月12日に判決を強行しました。不当きわまる国策判決です。 空港会社(NAA)は、市東孝雄さんのかけがえのない農地、完全無農薬・有機農法の農地について、農地法を悪用して収奪する不当を行いました。88年に空港公団が収用委員会を使って収奪しようとしたことが出発点です。公団は、市東さんの耕作地の買収のため地主・藤﨑政吉氏と一方的に交渉し、市東さんに無断で底地を売買し、後に市東さんの小作耕作権を収用委員会で収用裁決しようとしました。全人民の怒りの中で収用委員会が崩壊して、公団の計画は崩れてしまった。そのため今度は、裁判所を使って実質的な収用裁決をしようとしたのが市東さんの農地取り上げです。
 小林裁判長は、NAAのとんでもない憲法違反の行為の一切に目をつぶって、実質的な審議に入らずに一審・多見谷判決をほぼまるごと追認しました。小林判決の少しの修正は、多見谷判決の破綻を取り繕うためだけのものです。実に、裁判の名に値しない不当きわまるものです。つまり実質的な強制収用による農地の収奪を、農地法の違憲解釈を行って実質審理なしに強行したということです。小林判決は違憲・反人民的な反動判決といえると思います。
 ――弁護団が総力を挙げて反撃したのが、上告理由書ですね。
 葉山 市東さん農地法裁判の上告理由書は、全逓中郵事件に匹敵するボリュームです。これだけのものは労働裁判ではいくつかありますが、近年にないものです。
 ――では、ポイントをあげてください。
 葉山 ポイントは、❶市東さんの農地の収奪が違憲な公用収用であることを否定して単なる民事事件として言いなして判決を下した違憲性。❷農地法そのものを「耕す者に権利あり」という要件を無視して、強制収用のために曲解し、憲法29条、31条に違反して農地法を悪用して農地を収奪したこと、それに対する弾劾。❸憲法29条3項には「正当な補償の下に公共のために用いる」とあるのですが、これを否定して農地を収奪しようとしている点。市東さん自身は補償を考えていないのですが、だからと言って空港に反対する人には、補償なしに収奪することはできません。❹農地収奪の手続き等については憲法31条で保障する適正手続きに違反した、と弾劾しました。
 ――特に力を入れた点は、何ですか。
 葉山 裁判上の争点の根本的な問題は、❶市東さんの農地はかけがえのないものであるということ、❷農地法の核心である小作権者の権利を否定したこと。NAAは農地法5条を適用し、知事の許可を不要とするということで底地を買収したわけですが、知事の許可が不要だから小作権者の同意も不要だというとんでもない暴論で88年の時点で違法に買収したことです。❸その上で農地そのものを公団が取得したことを秘匿した上で、市東さんに地主に対して地代を払わせていたことです。地主が従前どおりの小作農地として使用させることでそれを容認・偽装することで市東さんを欺き、結果として公団が農地を農地のまま取得してそのまま15年保持した。それは、農地法3条で取得したことを意味する。ところが農地法3条では、知事の許可を経ない取得は無効です。これも上告理由書で力説しました。
 総じて農地法、農地を収奪する場合の根本的な、小作権者の権利の保障を一切否定したことが、一審・多見谷判決とそれを引き継いだ小林判決の特徴です。これに対して反論を集中しました。
 ――上告審の展望と弁護団の取り組みはどのようなものですか。
 葉山 これほど農民に対して憲法29条、31条をふみにじった農地収奪は、とうてい許されないという道理は、最高裁も認めざるを得ません。普通、上告申立書、そして上告理由書を提出して、後は最高裁判所の判決待ちというのが通例なのですが、そういう形にはさせない。あくまで最高裁において、二審の不当きわまる小林判決を覆させるために、さらに最高裁に向けて大きな闘いをする必要があると思います。
 一つは、この判決が耕作する農民の権利を否定し、軍事空港を建設するための国策判決であることを訴え、高裁判決弾劾の全国的な署名を5万筆を目標に集め最高裁に提出する。2審判決の反動性・不当性を最高裁に対して暴き、認めさせ、取り消しを要求する闘いが重要です。もう一つは、判決に対して、さらに上告理由書を補充する書面、憲法学的には内藤光博教授、石原健二農学博士の鑑定意見書と補充書を提出する。数波にわたり申し入れを行い、二審判決を覆す異例の闘いをやろうと思います。
 ――最後にまとめを。 葉山 安保法案では、成田空港について、一朝有事には米軍50万が殺到する軍事空港として使用することが定められている。戦争法をつぶすことは成田空港廃港運動と不可分一体です。成田空港は軍事空港です。この軍事空港を動労千葉を中心とする労働者、階級的労働運動と農民・市民・学生の力で粉砕しなければなりません。反対同盟を守り、市東さんの農地を守ることは決定的に重要です。農地を死守することが成田空港絶対反対の闘いそのものです。
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