団結街道

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週刊『三里塚』02頁(0960号01面05)(2017/01/23)


団結街道


 雪の白さは人を無口にする。全国農民会議総会の朝、宿の外に降り積もる雪を見てふとそう思った。身に染みこむほどの寒さがそうさせるのだろうか。方言で一番短い会話として有名な「どさ」(どこへ)、「湯さ」(風呂へ)の例を引くまでもなく、寒いと確かに口は動かない▼雪の音を聞くから無口になる。現闘の仲間の一人はそう答えた。しんしんと降るとしか表現しようのない雪の音。なるほど、それもあるだろう▼雪はまた様々な色や凹凸を覆い隠し、辺り一帯真っ白に染め上げる。息を飲むほどの美しい雪景色。その感動もあるはずだ▼味覚の点はどうだろう。宮沢賢治の『永訣の朝』を思い出す。「あめゆじゅとてちてけんじゃ(雨雪を取ってきてちょうだい)」。今度生まれかわったら自分のことで苦しむのではなく、他人のためにと言う賢治最愛の妹が、最期に食べたがった雪の味。その切ない心象も言葉を奪う▼「雪が解けると春が来る」。雪の下ではふきのとうはじめ多くの生き物が静かに春を待っている。そのイメージの影響もあるかもしれない▼一方、資本主義社会のもとで降り積もる甲斐なき悲しみの雪は人を立ち上がらせる。民営化・外注化・非正規化を推し進めるパククネを大統領にしてしまった屈辱を雪(そそ)がんと、労働者・農民とともに闘うセウォル号家族。闘いこそが、虐殺された高校生たちの無念を晴らし、悲しみの雪を解かす。
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