団結街道

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週刊『三里塚』02頁(0980号01面05)(2017/11/27)


団結街道


 千葉県警が捜査費の年度予算を使い果たしてもなお殺人犯を逮捕できなかった香取郡久賀村(現多古町)で起きた「鬼熊事件」▼1926年は、陸軍機密費横領問題や松島遊郭疑獄など汚職事件が相次ぎ、農民労働党創立、共産党再建など政治団体の組織化も活発で、都市や農村では争議が続発した。京都学連事件など政府による弾圧も強化され、官僚、警察に対する民衆の怒りが高まっていた▼女性の裏切りに激昂した岩淵熊次郎は、警官2人を含む5人を殺傷し、さらに関係者3人を殺害しようと潜伏し続けた。警察官を大動員しても屈服しない熊次郎に民衆は喝采を送った。「ああ執念の呪わしや 恋には妻も子も捨ててやむ由もなき復讐の 名もおそろしや鬼熊と うわさも久し一カ月 空を駆けるか地に伏すか 出沼の里の空くらく 人の心のさわがしや」。演歌師は歌い、松竹キネマは映画撮影隊の派遣を試みた。自殺を看取るスクープを取った東京日日新聞は発行部数を大きく伸ばす▼なぜ逃げ続けられたのか。苦労して荷馬車引きとなった熊次郎は、お年寄りや子どもに優しく、仕事熱心でけんかの仲裁も買って出るなど村人からは大きな信頼を得ていた。他方、高圧的な警察は反感を買った。村人は偽情報で捜査を撹乱し彼を匿った▼国家権力の居丈高な態度は今も変わらない。中傷ビラで分断を試みようが、住民の怒りの深さを思い知るだけだ。
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