明日も耕す 農業問題の今 農業にも「働き方改革」!? 収奪を強め儲けを追求

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週刊『三里塚』02頁(0988号02面04)(2018/03/26)


明日も耕す 農業問題の今
 農業にも「働き方改革」!?
 収奪を強め儲けを追求

(写真 農業へのAIの活用がもてはやされているが……)

 2月28日、安倍首相は「働き方改革」関連一括法案のうち裁量労働制を拡大する改悪案を削除すると発表した。だが「働き方改革」は労働法制だけの問題ではない。安倍は農業分野での推進も考えている。

人口減少の危機

 安倍はこの通常国会を「働き方改革国会」と位置づけ、「誰もが能力を発揮できる、柔軟な労働制度へ抜本的に改革する。労働基準法施行70年ぶりの大改革だ」と言い放った。
 「働き方改革」を推進する安倍を根本から突き動かしているのは、「労働力人口の減少にともなう国力の低下、国家の崩壊的危機」だ。
 その中でも、農業の人手不足は深刻だ。企業化・法人化の中で、農業の有効求人倍率は、2016年度で養畜作業員は2・34倍、農耕作業員は1・63倍で、全産業平均(1・39倍)を上回るという。
 農水省は「国内の人口が減り続ける中で、他産業との働き手の奪い合いは、さらに激化することが避けられない」として、昨年12月19日、農業の人材確保のために「農業の『働き方改革』検討会」を立ち上げた。人材を受け入れる経営者の意識改革や省力的な技術を活用できる人材育成などを議論し、2月28日に提言の骨子をまとめた。

生産性向上とは

 安倍の「働き方改革」は、労働力人口の減少に対し、「女性、高齢者、外国人労働者などを総動員し、1億総活躍社会をつくらねば日本は終わる」という衝動から来ている。すなわち、すべての労働者に過労死寸前まで強労働を強いることなしには、この危機は突破できないと、「生産性向上」と称して、徹底的に労働者を搾取するために国家総力で出されたのが「働き方改革」だ。
 まさに農業の現場でも、同じことが進められている。
 2月20日の経済財政諮問会議で安倍晋三首相は、人手不足が深刻化する業種で外国人労働者の受け入れ拡大策の検討に着手することを表明したが、農業では、国家戦略特区内に限り認める外国人労働者の就労解禁を全国展開しようとしている。
 国内の外国人労働者数は2012年から17年で60万人増えた。農業に従事する外国人は同年10月末で2万7139人。このうち、約9割を技能実習生が占めているが、技能実習生では従事できる作業範囲が限られたり、繁忙期だけ従事するのが不可能だったりといった制限がある。こうした中で、制約なしに外国人労働者を確保しようというのだ。
 また、安倍政権は「女性の活用推進」の一環として2013年秋に「農業女子プロジェクト」なるものを開始した。これは、農水省が女性農業者と農業に関心を持つ企業などを結び付け、新たな商品やサービスなどを生み出すというものだ。
 さらに農水省は、農林水産業の活性化に挑戦する女性を応援するとして、2018年度予算概算要求で、前年度より約140億円多い553億円を計上し、「女性が変える未来の農業推進事業」など9事業を据えた。地域のリーダー候補となる人材育成や、職場・労働環境の改善などを進め、「女性農業者の力を生かした農林水産業の成長産業化を目指す」としている。
 生産性向上のもう一つのポイントは、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの活用だ。労働力の減少をロボットで置き換えるというものだ。

農業を奪還せよ

 農水省は農業での人工知能(AI)活用を進めるとして2018年、「人工知能未来農業創造プロジェクト」を本格的にスタートさせた。生産性向上や省力化、技術習得などに役立つAI開発を加速させる。18年から市場投入が始まるロボット農機にも取り入れ、精度を高める研究も進めるという。
 たとえば、空撮画像を分析して牧草と雑草の量を見積もったり、放牧牛の体温や活動量のデータから発情を検知したりするAI開発も進める。あるいは、畑のタマネギの状態から掘り取りの深さを自動調整する無人収穫機や、作物だけを認識してピンポイント防除するドローン(小型無人飛行機)を開発し、省力生産を後押しするというのだ。
 いずれの施策も、一見、魅力ある農業のように見えながら、一層収奪を強め、農業を合理化して、より儲けようというものだ。農業における「働き方改革」も、決して農民のためのものではない。
 森友学園の文書改ざん問題で「安倍やめろ!」「安倍を監獄へ!」の怒りが一気に噴出している。安倍政権そのものを吹き飛ばすチャンスだ。危機に立つ安倍政権を打倒して、農業を農民の手に奪い返そう。
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