明日も耕す 農業問題の今 〝競争力強化〟叫ぶ安倍 農家つぶす「骨太方針」

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週刊『三里塚』02頁(1019号02面04)(2019/07/08)


明日も耕す 農業問題の今
 〝競争力強化〟叫ぶ安倍
 農家つぶす「骨太方針」


 安倍政権は6月21日、「未来投資戦略2019」(新成長戦略)と「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太の方針)を決定した。「聞こえのよい政策」とマスコミも酷評する代物だが農業ではどうだろうか。

 今回の骨太の方針は、「就職氷河期世代の支援」「最低賃金引き上げ」と大きく報じられたことが記憶に新しい。
 なるほど聞こえのいい話だ。農業はどうか。「農林水産業の活性化」と題して、次のような一文から記述が始まる。
 「農林水産業全般にわたる改革を力強く進め、農林水産業を成長産業にしつつ、美しく伝統ある農山漁村を次世代に継承し、食料安全保障の確立を図る」

輸出が柱の農政

 なんと総花的で無内容なことか。だが、林業、水産業の叙述に続き、段落をあらためて記された次の文言が核心であり、看過できない。
 「農林水産業の輸出力強化に向け、輸出先国の輸入規制に対して政府一体となって戦略的に取り組むための『「輸出促進本部(仮称)』を農林水産省に創設する」
 促進本部をつくって、輸出先国との協議を戦略的に進める基本方針を定めたり、生産者等への必要な情報の提供、グローバル産地の形成などに取り組むという。要は、輸出を第一の柱にして農林水産業の政策を行うと明言しているのだ。
 ロボット技術や情報通信技術を活用するスマート農業についても、「スマート農業の実現等により競争力強化を更に加速させる」と記されている。スマート農業は「人手不足を解消するため」とか「労力を軽減するため」といったうたい文句もあるが、なにより技術の開発競争に勝ち抜き、種や肥料のようにグローバルに生産現場を抑えていくことが命題なのだ。
 日米貿易交渉における政府方針がある意味わかりやすい。

市場開放を求め

 日米貿易交渉で、政府は日本産牛肉の輸出拡大に向けて、アメリカに市場開放を求めるという(6月9日付 日本農業新聞)。アメリカの日本産牛肉の輸入枠は200トンだが、それを超えると高関税が課される。今年は、3カ月弱でアメリカへの輸出量がすでに枠を超えたというから実際に増えているのだろうが、アメリカからの牛肉輸入は2016年のデータで4万7千トン。桁が違う。
 他方、安倍政権は日米貿易交渉で、米国に対する牛肉や豚肉などの農産物関税を、TPPに合わせて一気に引き下げる案を提示し、見返りに自動車分野などで譲歩を求める方針(6月13日付 東京新聞)だという。
 トヨタが自動車を売るために、国内農家がつぶれてでも低関税で牛肉を輸入する一方で、競争に勝ち抜いて金になる牛肉は外国に売る。一握りの「成功者」や企業のための農業、こういう農業にしようというのが今の安倍農政だ。骨太の方針を許すな!

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