請求異議控訴審始まる 市東さんが陳述「農地守る」

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週刊『三里塚』02頁(1025号01面03)(2019/10/14)


請求異議控訴審始まる
 市東さんが陳述「農地守る」

(写真 東京高裁を包囲するデモを貫徹した【9月24日】)

(写真 反対同盟は全国から寄せられた1336通の要望書を東京高裁第4民事部に提出した)


(写真 菅野雅之裁判長)


 9月24日、東京高等裁判所第4民事部(菅野雅之裁判長)で、天神峰・市東孝雄さんの請求異議裁判控訴審の第1回が開かれた。
 反対同盟と顧問弁護団は、全国から160人の仲間が駆けつけ、ともに闘いぬいた。
 開廷に先立つデモの打ち合わせを、日比谷公園霞門で太郎良陽一さんの司会で行った。
 最初に伊藤信晴さんが、空港機能強化策に加担してきた芝山町当局の台風被害・大停電に対する無為無策・無責任を強く糾弾した。動労千葉の中村仁さん、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の連帯発言が続いた。さらに全国農民会議事務局長の秋山和雄さんが、農業切り捨てを進める安倍政権のもとで苦しむ農民自身の課題として、市東さんの農地を守りぬくことを訴えた。
 高らかにシュプレヒコールを上げて、デモ行進に出発。反対同盟旗を先頭に色とりどりの旗・のぼりが霞が関一帯を席巻し、「農地を守れ」の叫びがとどろいた。
 午前中の産直野菜の出荷作業を終えて到着した市東さん、萩原富夫さんが合流し、全国から寄せられた1336通の要望書提出行動を行った。
 午後2時30分、100席近い102号法廷を満席にして開廷した。
 市東さんが意見陳述に立った。冒頭に、「一審判決は、私の生計と生きる希望を断ち切り、『農業をやめろ』と言うものです。農民としての私に対する死刑判決そのものです」と怒りをたたきつけた。そして、自分の農地が有機農業のためにかけがえのないものであること、NAAが違法な手段を重ねながら強制執行で農地を強奪するなど絶対に認められないことを訴えた。さらに、「金を受け取って出て行け」と促す一審の高瀬判決を徹底批判し、天神峰で農業を続けていく不動の意志を表し、傍聴席からの大きな拍手に包まれた。
 続いて顧問弁護団が、控訴理由書の要点を読み上げた。
 最も重要な焦点は、国と空港公団(NAAの前身)が1994年に、「平行滑走路用地取得のためにあらゆる意味における強制的手段を用いない」と確約したことだ。「確定判決」をたてに強制執行で農地を取り上げることは、「強制的手段」そのものだ。ところが一審判決は勝手な解釈で、「話し合いの努力をした上で合意に至らなければ、強制執行もかまわない」とお墨付きを与えた。こんなデタラメがあるか。
 執行が行われれば、かつて1971年強制代執行で取香の小泉よねさんに対し機動隊が凄惨な暴行を振るい、家屋を破壊し、やがて死に至らしめた事態の再現となる。著しく道義に反する権利濫用の過酷執行である。
 国連総会は18年12月に「小農と農村で働く人々の権利に関する国連宣言」を採択したが、その直後に下された一審判決は、世界の流れに逆行し、高い公共性を有する市東さんの有機農業をつぶそうとしている。
 市東さんの身体の延長とも言うべき農地を奪うことは許されない。高裁は原判決を取り消し、強制執行を不許可とせよ!
 2時間を超える弁護団の陳述をたたえて、大きな拍手が湧いた。
 被控訴人NAAの代理人は、自分たちの主張・立証に何の責任も取らず、一審判決をただなぞっただけのお粗末な答弁書を提出した。
 次回は弁護団が主張の補充や証人の追加申請などを行うことを確認し、期日を来年1月16日として閉廷した。
 衆議院第二議員会館で報告集会が伊藤さんの司会で開かれた。最初に市東さんがあいさつした。「台風の被害に対し多くの心尽くしをいただきました。控訴審が始まり、裁判長は物分りがよさそうな態度を演じていたがこれが曲者です。気を引き締めて闘っていきましょう」
 続いて葉山岳夫弁護士をはじめ弁護団が発言。この日の闘いの前進と次回への展望を語った。市東さんの農地を守る沖縄の会の連帯発言を受け、最後に東峰の萩原さんが、台風被害救援へのお礼と目前に迫る10・13全国集会、そして次回1月16日の第2回への大結集を呼びかけた。

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